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case35

1分前までは4月ですよ(にっこり

5/18

34部の次なのに33部だった為訂正

火の手が辺りに広がると共に視界は赤く染まり、辺りは人々の呻き声と助けを求める声のみが響く。


「貴方に人を救う気持ちがあるなら!今行動しなさい!救える力があるなら!目の前の助けを求める人々を救いなさい!」


目の前の女が何を言っているかわからなかった。

だが身体は理解する前に動き、喉は声を出すために震える。


「全員誇りを持って民の盾となれ!誰一人死なせるな!!」


あらんかぎりのその声は今尚燃え盛る火の中で掻き消されることなく空高く響き渡る。




「やべぇぞこのままじゃあ……」


グロッティ内カウンターの最奥、その定位置で神原は頭を抱えていた。


「何やってるんですかりんさん?」


カウンターの奥から両手に何やら水色の液体入りコップを持って現れたピナカ。


「ギルドからポーションの追加発注依頼がタリタニア経由で来てる……あとなんだそれ?鑑定不可って……」

「アイリスから貰った果物を混ぜてジュースにした物です。ちなみに数はいかほどですか?」


コップを置きながら神原の向かいに腰かけるピナカとそれに対し無言で片手を開いて見せる神原。


「500本なら楽でしょう何を……まさか……」

「そう500本ならこんな頭を抱えたりしねぇ……」

「まさか……5000ですか?」

「うんにゃ」


首を振る神原と顔を青くするピナカ。


「50000だ。後3週間で」


ピナカは目の前が暗くなるのを感じたが、そのわりに神原の顔が深刻味を帯びていない事に違和感を感じる。

確かに頭を抱えていたが本当に不味いなら手を貸すように言うだろうがそれもない。

水泡のように沸き上がる疑問点を整理し、結論を口にする。


「在庫はあるがまた貯めるのがめんどくさいって所ですか?」

「正解。後は値崩れで市場が混乱しないか不安って所だな」


珍しくまともな事を言う神原だが、膨大な数を用意できる方に半ば諦めに似た感情を抱くピナカ。


「しかし、マスター。いきなりそんな数の納品なんて出来るんですか?」

「タリタニアん所から来たのはギルドに1日に何回かに分けて馬車で運ぶらしい。」

「中々に骨が折れますね…」

「だからこの後も回収に来るから適当にサインしといて」

「かしこまりました」


それから3週間1日5回ギルドから回収に来る馬車を見るのも今日が最終日になる。


「では、納品書にサインを貰いに行ってきます」

「おう、よろしく頼むわ」


きぃつけろよ~と背にかけられる言葉に左手を挙げて返答する。



ギルドには無事に着き、納品確認後市場の方へと向かうピナカ。

しかし、その途中路地裏で幼児が誘拐される現場を見て助けに入ったピナカだったが、幼子を人質にされ捕まってしまう。


「貴殿方は何者ですか?」

「…」


問い掛けても答えが帰ってくる事はなく、ただ黙って歩くだけに徹する事にした。

誘拐現場からそれほど離れていない場所から船に乗り川を下る。

船に揺られること体感で30分程、目的の場所に着いたのか接岸し、船を降りると接岸した場所から程なく歩いた所にある家屋に入るとそこには見覚えのある人物がいた。


「コルフィドトル……貴方は何の目的で誘拐を?」

「目的は誘拐じゃないさ」

「では何故私をここに?」

「ただ話たかっただけ……では納得出来ないかな?」

「……いいでしょう」

「ではいくつか質問を……っとその前に」


そう言って席を立ち、傍らに置いてあった水差しからコップ2つに水を注ぐ。


「まぁ飲みなよ。心配しなくても毒はないさ」

「…」


片方をピナカの前に差し出し、受けとるのを見てから口をつける。


「さてと…それじゃ質問して行くよ」

「私が素直に答えるとでも?」

「話たくなるさ。君は幼い子供の命を見捨てることは出来ないだろうからね」

「…クズが」

「貴族として誇りを捨てた時からそれは誉め言葉になったよ」


ありがとうと軽く言うコルフィに苛立つ事なく現状から脱出する策を練るピナカ。

その後もいくつか問答を繰り返し、体感で約2時間が経った頃その時は来た。


「私から質問しても?」

「構わないよ。なんだい?」

「貴方はまだ、人を救いたいという心は残ってますか?」

「……元々この街には民を救うために来たはずだった。だけど、その役目は既に終わっていた。後は王都から本隊が来るまで待つだけさ」

「なるほど」


再びコルフィが質問を始めようとした時辺りを爆音と地震のような震動が襲い掛かる。


「っ!何事だ!」


扉が荒々しく開かれ一人の男が息を切らせながら入ってくる。


「坊っちゃん!セラリアの奴等グリフォンに乗った魔導騎兵を使いやがりました!」

「なんだと!」

「街は火の海です!奴等旋回してまた来まs」


再び爆音が鳴ると同時に爆風がピナカ達を襲う。



「ミドガルズ全部隊に告ぐ。第1種戦闘配置並びに特一型災害救助活動開始」


トレードマークの蒼いコートを纏いフードを目深に被るとグロッティを後にする。



「全員…無事…か?」

「俺らは何とか無事でさぁ坊っちゃん」

「私も無事です」


辺りは火に包まれ、倒れた家屋にさらに火が回り見回す限り火の海になりつつある。

そこかしこから助けを求める声が上がり、空からは魔導騎兵が追撃の為に来るのが見える。

否、見聞きしてしまった。

幼子が自分を庇った母を揺するのを、燃え盛る炎の中に未だ出てこない家族の名を叫びながら入るのを止められている男の叫びを、動く事の無い両親を前に立ち竦む幼子を。

彼が今まで直視せず目を背け続けていた光景がそこにはあった。


「貴方がマスターの前で言った事を覚えていますか?」

「え…?」


呆然と立ち竦むコルフィにピナカが話しかける。

その姿は煤け左の頬には破片で切ったのか切り傷があり、左腕は骨折しているのか右腕で左腕を抑えていた。


「この街は自分が救ったと言いはなったならばやってみなさい」

「…」

「誇りを捨てたならば今すぐ拾いなさい」


一歩近づいたピナカに対し無意識の内に一歩後ずさるコルフィ。


「君に何が分かると言うんだ!」

「分かりませんか?貴方が持っている力が出来ることを」

「何を言っているんだ!」

「目を背けるなコルフィドトル!何の為にここにいる!目の前の光景を受け入れろ!」


気迫の籠った声で怒鳴るピナカの迫力に後ずさるコルフィにさらに追撃をかける。


「 貴方に人を救う気持ちがあるなら!今行動しなさい!救える力があるなら!目の前の助けを求める人々を救いなさい! 」


仲間を助けるために動いていたコルフィの護衛達はその言葉を聞き、コルフィの回りに集まる。


「坊っちゃんご命令を。あっしらはそれに従いますぜ」


ピナカ達にセラリア襲撃の報せを報告した者がコルフィに向かいそう言うと、彼は一度目を閉じたが、再び開いた時には覚悟した者の目になっていた。


「全員誇りを持って民の盾となれ!誰一人死なせるな!!」


辺りに散っていく護衛達を尻目にピナカに頭を下げるコルフィ。


「ありがとうございました。お陰で捨てたはずの誇りをちゃんと取り戻す事が出来ました」

「礼を言うならば行動で表してください」


笑いながらそう言うと、自らも助けに向かうピナカ。


だが、そこに1つの影が落ちてくる。


「危ない!」


叫ぶと共に走り出すが間に合わない。

このままでは魔導騎兵にピナカが殺される。

それだけは阻止しなくてはならない。

だが、彼の足は魔導騎兵の駆るグリフォンと比べあまりにも遅かった。


「やめろぉぉぉぉぉ!!!!」


グリフォンの強靭な前足がピナカに襲い掛かり、その爪が肉を引き裂くその瞬間グリフォンの頭が爆発した。


「え…?」


遅れて聞こえてくるターンという音と共に瓦礫を踏む音が近づいてくる。


「市民の保護は任せた。後は俺達に任せな」


次回更新はいつまどおり活動報告で

5/2誤字修正

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