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cace34

「ここか」

「いい店ですね」

「そう言っていただけると助かります」


ピナカに連れられ件の店に辿り着くとそこには落ち着いた雰囲気と共に良い匂いが漂う店があった。

中に入ってからは店員に促され席に着くとメニューを渡され、何を注文するか思案する。


「俺は今日のおすすめで」

「私もそれで」

「じゃあ今日のおすすめ3つですね。すみませーん」


直ぐに駆け寄ってくる店員に注文を伝えると置いてある水を口に運ぶ。


「所でマスター」

「なんだ?今日はもう仕事したくないぞ」

「りんさんさすがにそれは…」


呆れ顔のイリアと何時ものやり取りをする神原。

だが、ピナカは目線で神原の後ろを示し

神原はピナカの目を鏡の代わりとして後ろを見る。

その様子はお互いの瞳を見つめあっているかの様な様子はピナカの視線の先に居る者を更に焦燥感に駆らせる。


「やばそうか?」

「マスターが面倒臭いと思う程度には」

「はぁ…」


そんな話を小声でしながらも料理が来るのを待つ神原一行。

暫くすると立ち上る湯気を引きながら料理が運ばれる。

今日のおすすめメニューは主菜によく煮込まれ味が染みた肉のシチューと脂の乗った今が旬の焼魚に葉物野菜のオルジガンソースを合えたサラダ、そして外はパリッと中は柔らかく焼かれたパンにリーベルクランのジュースが付いた物になる。


「ふむ…よく煮込まれて味が染みたいい肉だな」

「お魚も美味しいですよマスター」

「パンがこんなに柔らかく焼けるなんて凄いです!」


各々感想を述べ、食事を堪能すると神原のみが席をたつ。


「すまない、少し席を外す」

「お早くお願いいたしますねマスター」

「支払いは任せてください」

「すまないな、後で請求してくれ」


そして立ち際にピナカにこう耳打ちする。


「奴が此方に来そうなら席をたってグロッティかせめてギルド前まで逃げろ」

「かしこまりました」


そうして席をたってから戻るとそこにはピナカとイリアの姿は無く、此方の様子を見ていた人物も姿を消していた。


「ふむ…とりあえずギルドのが近いからギルドから行くか」



「どっちに向かいますかピナカ?」

「ここからならギルドの方が近いですし、マスターもそう考えるでしょう」

「ではお互い離れないように腕でも組んで人通りの多い道をいきましょうか」

「ですね」


そしてその後を付ける妖しい影があった。


「あのうつくしさならば私の正妻に相応しい…」



ギルド前に神原が着く頃そこに人だかりが出来ていた為、何が起きてるか知るために近場の野次馬に事情を聞く。


「なにが起きてるんだ?」

「ん?あぁ、なんか貴族様と美人さん二人が争ってるみたいでな」

「なるほど、助かった」


そう言い残し人だかりの中を中心に向かい歩いて行く。


「ですから何度も申し上げている通り私には心に決めた方が居ますので、お断り致します」

「私は今はそういうのはお断りしております」

「その相手なんかよりも僕の方がずっといいさ。家柄、資金力、そして顔。何処をとってもその相手よりも上さ」


金色の髪をかきあげつつそうのたまう貴族様。

それを冷たい目で見るピナカとイリア。

そしてそこにオルジガンジュース片手に現れる神原。


「二人共ここにいたのか、帰るぞ。」

「わかりましたマスター」

「りんさんそれ私にも下さい」


神原からオルジガンジュースを受けとり回し飲みするピナカとイリア。

その様子をやれやれといった様相で見ながらも帰りを促す神原。

しかし、それを黙って帰すほど彼はアホではなかった。


「待ちたまえ!」


神原達の前に護衛と思わしき者を引き連れ、道を塞ぐ貴族。


「名を名乗る必要はない。そこを通して頂こう」

「いいや、名乗らせて貰おう。僕の名はコルフィドトル。ドトル家の跡取り兼そこのお嬢様達の夫になる人物さ」


それを黙って聞くほど神原の心は広くなく、オルジガンジュースをもうひとつ買うかピナカ達と相談していた。


「き、君!人の話はききたまえ!」

「ならお前は人の道塞ぐな。邪魔だ」

「僕はこの街を救いに来たんだ!」

「じゃあお前はこの街を救えたのか?」

「もちろんだ!僕が率いてきた軍がこの街を救ったのさ」


と得意気にいい放つコルフィドトルに対し周囲の野次馬達は困惑していた。


「どうやら、お前は街を救えていないようだな」

「何をいってるんだ!そんなはずない!」

「何故ならばこの街を救ったのは別人ってのを知ってるからな」

「どうせ死んだとしてもどうでもいい奴等がこの街からセラリアの奴等を追い出しただけだろう。ならば本当の意味で救ったのは僕の方さ」


神原の発言を鼻で笑い自信満々に言い放ったが次の瞬間その顔が凍り付く。


「戦死者4名、重軽傷者87名、そして親を失った子供6名。これについて何か言うことはあるか?」

「どうでもいい奴が死んだとしても誰も悲しまないさ。子供だって生きようと思えば生きられる」

「その通りだ。こんなこと今この瞬間も何処かで起きている。」

「だったら…」

「だが、彼等の意志を継ぐものがいる」

「何をいってるんだ?君はおかしいのかい」


そう言われて苦笑する神原。

しかし、次の瞬間にはどこか緊迫した空気を醸し出していた。


「ルドルフマーキー。3歳と6歳になる娘を持つ2児の父親であり、その最後は敵兵から放たれた矢から幼子を護るために壁になった」

「シニフェリア。8歳になる息子の手土産に真剣に悩む奴だった。彼は民間人避難の際に民間人を逃がすため自ら殿となり民間人の命を救った」

「ユニティアス。15歳の娘相手に距離感が分からないと嘆きつつ娘思いのいい奴だった。セラリア軍に凌辱されようとしていた民間人を逃がすために自ら囮となった」

「アキシィラ。来月子供が産まれ父親になるはずだった。彼はユニティアスと共に民間人を逃がすために囮となった」


その間コルフィドトルは神原が醸し出す謎の威圧感にその場に釘着けになっていた。


「以上4名は自らの命と引き換えになんの関係もない民間人を救った。お前にそれができるのか?」

「ぼ、僕は…」


言葉に詰まるコルフィドトルから視線を外し、ピナカとイリアに帰るぞと声をかけその場を去る。

後にはコルフィドトルとその取り巻きが残されていた。



「こんなんじゃ終わらせない…絶体にだ…っ」



次回更新は来月か再来月になります

詳しくはまた活動報告で

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