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cace31

ギリギリ間に合った(安堵)

セラリア軍をバリムの街から排除した日の翌日。

時刻は既に昼に差し掛かり、グロッティ内で神原とピナカは束の間の休息を満喫していた。


「マスター。これで終わりな訳無いですよね? 珈琲が入りましたよ」

「サンキューピナカ。当たり前だ。何だったら賭けでもするか?」


珈琲に砂糖と牛乳を入れつつ、ピナカにそう提案する。


「その賭け乗りましょう。あ、砂糖と牛乳此方にも下さい」

「ほい。賭けの内容は簡単だ。どれぐらいで面倒事が来るか」

「いいでしょう。私は今日を入れて3日。負けたら…そうですね。何か1つ新作料理を作りましょう」

「なら、俺はこの珈琲が無くなるまでだ。そうだな…今日の晩飯に1品追加しよう」

「今日の晩御飯は豪華になりますね。あ、ついでにマスターの言う事何でも1つだけ聞くのも追加します」

「言ったな。なら俺は一日好きにしていいぞ」

「ふぇっ!?」


ガタッと音をたて赤面するピナカと静かに珈琲を飲む神原。

賭けはどちらが勝つのか…。



遡る事神原達が賭けをする2時間程前。

王都からの援軍から先行し、先にバリムの街に到着した先行部隊は街の様子に違和感を感じていた。

先行部隊の予想では、街は既にセラリアの手に落ちていると考えていたが、見たところ街の領主の私兵が街道前に陣取り門番をしている。

交易商も馬車を率い、隊列を組んで街に入っていくのを確認すると、隊列を組み警戒を解かずにゆっくりと街に近づく。

ある程度近づき、先行部隊に気がついた門番は部隊に止まる事を求める。


「王国騎士団の者とお見受けいたす。相違ないであろうか?」

「いかにも。トライス王国騎士団先行部隊である。街に入っても構わんか?」

「承った。領主への連絡は此方でいたす故お気になさらず」


それだけ言うと門番交代とタリタニアへの連絡をするため陣地へと戻る門番担当だった私兵。

先行部隊は再び隊列を組み、街へと入ると彼等は言葉を失う。

その多くは街にいる住人達がみな、今まで彼等が見てきたそれとは全く違う様子だからだった。

彼等が見てきた襲撃された街の住人は皆生気が感じられず、生きる事にすら億劫になっていた。

しかし、今目の前にいる住人達はどうだろうか。

皆何処かしら影を感じさせつつも、少なくとも明日を見据えているように感じる。

なにより目を引くのはその格好である。

今までの経験から薄汚れた襤褸を纏い薄汚れていると考えていたが、彼等は皆こざっぱりとした様子で、襤褸ではなくきちんとした服を着ている。

この事態に戸惑った先行部隊は領主の元へといち早く向かい、そこでにわかには信じがたい話を耳にする。


「領主殿。我々にそれを信じろと言うのか?」

「事実です故他に言いようがありません」

「だとしても! 空を駆け、地上を火の海にする兵器なぞ信じられる訳がない!」

「ならば信じなければいいのです。しかし、現に領民は皆畏敬の念をもって接している」


思わず声を荒げる先行部隊隊長と冷静に応対するタリタニア。

彼としてもそのままを報告する訳にはいかず、質問を変えることにする。


「ここに来るまでに異様な連中を見ましたが彼等は?」

「彼等こそが、この街の救世主です。街の復興には彼等も手を貸してくれています」

「彼等が街を壊したのでは? ならば捕らえてその兵器のありかを吐かせればいい」

「止めておいた方が身のためです。彼等は善意には善意をもって返します。ですが、悪意にはそれ相応の対応をします」

「ならば、善意と敬意をもって対話したいものですな」

「貴方ならば大丈夫でしょう。此方から話を通しておきます」

「感謝致します。今日の所はこれで」

「わかりました。なにかありましたら可能な限り対応させてもらいます」


そう言って席を立ち、門の前まで見送るとタリタニアは一人静かに、この後の事について頭の中に対応策を練っていく。



「マスター。もう後二口分だけですよ。早く飲みきってください」

「珈琲ぐらい自分のペースで飲ませてくれ」


そう言いつつもさらに一口分口に含む。


「ささっマスター。最後ぐいっと。お早く」


最早神原に最後の一口を飲んで貰う事に全力になるピナカ。

そしてついに神原が最後の一口を飲むためにカップを口に運んだ瞬間。


「り!りんさん!緊急事態です!今すぐ来てください!」

「落ち着けイリア。まず何が起きたか説明してもわらなきゃわからん」


グロッティのドアを蹴破らんばかりに開け、息を切らすイリア。

それを感情のうつっていない瞳で見るピナカ。


「残念だったなピナカ。で? 緊急事態ってのは?」

「正々堂々とした覗き魔です!」

「今すぐ現場を案内しろ!」

「未婚、既婚問わず乙女の柔肌を他人が見る為の見物料はその魂です。フフフフ…」


先程までの感情のうつっていない瞳から一転、冷酷な色を瞳にうかべるピナカと訳がわかっていない神原。

イリアに促されるまま、目的地にたどり着くとそこでは…。



ミドガルズの兵と先行部隊の兵が睨みあっていた。


「何がどうなってんだよ」


神原はそう呟かずにはいられなかった。



次の更新はネタが上がったらあげます(なげやり)

気長に待っていただければ幸いです

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