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cace28

グロッティが制圧されているとアイリスから聞いていた神原は、まずグロッティを奪い返す事を第一とした。

しかし、気がかりな事としてイリアやスリアの事が上げられる。

あの二人なら心配ないとは思うが…急いで損はないと気持ちを切り替える。

そのまま速度を落とす事無く緊急脱出口にたどり着くと、少し持ち上げ周囲を確認する。


「…イリア、スリア」


地下倉庫の床を持ち上げ横に音をたてないように置くと、静かに身を倉庫の扉まで運ぶ。

扉からグロッティの地上出入り口ではなく、隠し階段により上から制圧して行く。

2階に招かれざる客人はおらず1階へと移行するが、途中招かれざる客人達の会話を盗み聞きすると


「なぁ、あの女どうなるんだ?」

「さぁな、たぶん指揮官様の相手にされた後殺されるんだろ」

「なんと言うか、可愛そうになぁ。俺も相手して貰いてぇ」

「無理だろうな。だってごふっ」


そこで唐突に相方が倒れるのを見て、硬直してしまった彼の首にナイフを突き付けられていた。


「武器を下ろしてこれからの質問に答えろ」


地の底から響くような冷気を帯びた声が彼にまとわりつく。


「お前らがここから連れ出した人数と連れ出してからどれぐらいたった?」

「お、女だ! 女が一人だ。他は知らねぇ!!」

「時間は?」

「まだ連れ出してから5分ぐらいだ! なぁ頼むよ、助けてくれ!」

「指揮官様の場所は?」

「ここを出て右の道を真っ直ぐ行った場所だ! 答えただろ! 助けてくれよ!!」

「…」


無言のままナイフを滑らせると、首をおさえたまま地に落ちる侵入者。

その様子を見届けること無く、踵を返しカウンターに近づくと置いてある樽の1つをノックする。


「スリア。もう大丈夫だぞ」

「イリアお姉ちゃんが…」

「大丈夫だ。今ピナカが迎えに来るからな。少し待っていてくれ」

「わかった…」


ピナカを呼んで5分後にはスリアを回収に現れた。


「ピナカ、ミドガルズに第1種戦闘準備の発令を、それとなるべく早くこっちに緊急展開出来るように通信を」

「畏まりました」


スリアを回収し、ダーインスレイブへと向かうピナカ。

イリアを回収に向かう神原。

両者の心はセラリアの軍を壊滅させることで一致している。

もはやそこに慈悲はなく、徹底的に叩き潰す。


「イリアに手出したら覚えとけよ、セラリア」

「私の友人に手を出して無事でいられると思うなよ」


この時セラリア側では…。



「いい女だな。うむ」

「…」


将校用にあてがわれた一軒家でイリアは拘束されていた。

イリアに話し掛ける中年の将校はイリアの身体を舐め回すように見ては何を想像したか、時折下品な笑い声をあげる。


「で、何か言うことはないのか?」

「…」

「だんまりもいいが、余り無口なのも詰まらないな。まぁベッドの上でどんな声で啼くかが楽しみになるがな」

「…」

「あぁ、それともう1つあってな。これの事だが…しゃべってもらえるか?」


そこには緑色の液体が入ったビンがあった。

その事に微かに眉が反応したのを見逃さずにさらに続ける。


「やはりな…。まぁいい。これについてもじっくりと身体に聞けばいい。くっくっくっ」

「…」


そうして1枚づつゆっくりと、まるで幼子が水を張った器を運ぶが如くゆっくりと、イリアの衣服を剥いていく。

そしてついに、下着まで後1枚といった所でイリアが口を開く。


「……た…………な…」

「ん?何か言いたいことでもあるのか?」

「……た…の………な…………が…」

「もう少しはっきり言って貰わないと分からないな…全く。わかった。少し下がるから全部話せ。まずはこの秘薬からだ」

「うちの者が作りました…」

「うつむいてては聞こえづらいが…まぁいい。それで?その者は?」

「今はいません…」

「お前が呼んだら来るか?」

「来ません…」

「ならば用済みだな。さて、お楽しみの時間だ」


思わず口元を拭いつつイリアに近づく指揮官。しかし、イリアの目は未だ希望を失っておらず、首元には神原から贈られたペンダントが輝いていた。

指揮官としてはまずはどちらが上なのかを分からせてからたっぷりと楽しむつもりであるが続くイリアの言葉に違和感を感じる。


「さっきの質問…覚えてますか?」

「…呼んだら来るか…か?」

「確かに私ごときが呼んでもあの人は来ませんよ。」

「ならばなぜ…」

「だって…」


そこでイリアは指揮官を睨みながらこう続ける。


「あの人から来てくれますから」


室内に響き渡るドアの破壊される音、そして指揮官の首にナイフが突き付けられるのはほぼ同時であった。


「言ったでしょう。私の肌に触れるなと」

「うちのメイドが世話になったな。代金をやろう」

「りんさん待って下さい。生かして捕縛して置いてください。まだ情報が引き出せてません」

「…良かったな。まだ頭と胴は別れないぞ。だがな…」


骨の折れる音と共に崩れ落ちる指揮官。その右足は本来ならばあり得ない方向に曲がっていた。


「うちのメイドに手出して、ガキにまで危害加えそうになった分は清算してもらおうか。とりあえずそれは利子分だ」

「りんさん。一先ず安全な所へ行きましょう」


未だにほぼ下着だったイリアに自らの蒼いコートを渡し、捕縛した捕虜を引き摺ってグロッティに帰還する。

既にピナカにはグロッティの内部で待機してもらっており、イリアと捕虜を収容しだい一旦町を離れる。


「ピナカ。俺らは表舞台にでる」

「貴方のたどり着く先が例え地獄の果てだろうがついていきますよ。マイマスター」


巨大な鉄鯨は海の中でその時をまつ。今はまだ…

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