小学生のわたし
私はいたるところで彼の幼馴染を名乗り、彼もまた渋々ながらそれを受容しているようだが、私と彼との出会いの沿革は、はっきりいってそれに値するものではない。
彼と出会ったのは小学五年の春を少しすぎた頃、今思えば不思議な時期だったのだけれど、彼は私のいる学校に転校してきた。
彼は昔から弱々しくて、女性のような可憐さを持ち合わせていた。
そのときから、私は彼に心惹かれていた。
小学生故にその気持ちがなんなのか、当時の私は理解できなかったのだが、
彼の姿が脳裏や視界をちらと横切るだけで、私の心は氷柱を入れられたような、ハッとした高揚感を浮かべていた。
だから、彼がクラスで自己紹介をしたその日からしばらくして、彼が私の家の隣に越した若い夫婦の子だと知ったときの私の高鳴る鼓動なんてものは、今でも私の身体の記憶にしかと焼きついている。
だが、彼は程なくして嫌がらせにあった。
彼の類稀なる美貌--なんだかおかしいけれど--は、幼い小学男子にとって非常に魅力的で、官能的で、それでいて羨ましいものだったのだろう。
まあ、不満ではあるが、彼は既にあの頃から女や特定の男に好意的に思われていた。つまりモテていた為に、嫌がらせの範囲が小さいものだったことは幸いだった。
誰もが経験したことがあるであろう「気になるあの子にかまってほしい」の心理である。
誰もが通り、人によっては取り返しのつかない男女の不仲を人生に刻んでしまった人も少なくはないアレだ。
そう幼いながらに静観していた私だったが、私もまた例外ではなかったかなとここ最近思い出し始めた。
彼に気安く話しかける周囲の人間が憎かったんだ。
私の彼に対するこの高揚した気持ちを、彼は知らずに生きていることが憎かった。
そして、そんな彼を心の奥底で貪欲に欲し、独占しようとする私の醜い姿が憎かった。
今もそう。