デューク
「わたしは」
声を上げたのはレビィだった。全員の視線が彼女に集まった。それらを受けて、レビィは大きく息を吸って切り出した。
「わたしは、挑戦したい。どうせ死ぬなら、何か行動を起こしてから死にたい。…みんなそうでしょ?待っているのは死しかない。なら、何をしたって怖くないわよ!」
レビィの明るく言い放った声とともに、ぱあっとあたりが明るくなった。あたたかいオレンジ色の光が、洞窟を照らし出したのだ。
今までひっそりと、小石程度に灯していた光とは打って変わって、堂々とした燃えるような明かりだった。その光は洞窟の壁を伝って、暗闇のずうっと先までを照らし出した。
全員が息を飲んだ。
「そうでしょ?だから、進もう。デューク、わたしたちはあなたの指示に従うわ。みんな、あなたを信じてる。だからあなたが正しいと思う方へ進めばいい」
そうはっきりというレビィの姿は聖母にも似ていた。彼女自身の魔法の光に包まれて、短いが、豊かで艶やかな髪は、洞窟に閉じ込められている辛さなど感じさせないほどに明るくきらめいていた。
ルゥはただただびっくりして、レビィを見つめた。こんなに小さな身体にこんなにたくさんのエネルギーを持っているなんて。彼女のたくましい生命力にルゥは夢中になって、
「うん」と彼女の言葉に同調した。
「ついていくよ、デューク」
それをはじめに、その場の全員が同意した。
「そうだよな、どうせ死ぬなら」
「こわくないよ、みんながいる」
「ユカのためにも」
「そうだ!進もう、みんなで」
「デュークは頼りにできる魔法使いだよ」
「死んだってあなたのせいじゃない」
「死の迎えを待つな、こちらから迎えに行ってやろうぞ」
革命軍さながらにみんなは声を上げた。光と熱気に包まれた、素晴らしい瞬間だった。希望は差し込むことを待つだけでなく、作り出すこともできるのだ。
デュークは、久しぶりに光に照らし出された全員の顔を見渡すことができて安心した。そのどの顔も、強い意志を持っていた。笑っているものすらいた。
デュークはこのクラスの学級委員であったから、余計にこの件に関しては責任を感じていた。
(あのとき、自分がもっと早く避難の指示を出していれば…)
そんな思いが付きまとって離れなかったのだ。どんなに冷静に落ち着いて話しているように見えても、心はやはり黒く罪悪感に染まっていく。
いつか隠しきれず、八つ当たりしてしまうかもしれない。自分一人だけで逃げ出そうとしてしまうかもしれない。裏切ってしまうかもしれない。そんな不安も抱えて、何をどうしていいかわからず、自分だけでどうにかしなくてはいけないと感じていた。
だが今こうして、自分に「正しいよ」と言ってくれるみんながいる。信頼を宣言し、ついてくる決意をしてくれるみんながいるのだ。それがどんなに尊くて、大切なことなのか。
デュークこの現象に深く感動して、しばらく口を聞けずにいた。少ししてから、ようやく震える声で言った。
「わかったよ、とてもよくわかった。レビィ、お願い、魔法をといて」
デュークは泣き笑いで言った。
「こんなに明るいのだめだよ。僕が泣きそうなのが、ばれてしまう」
レビィはくすっと笑って、ゆっくりと明るさを下げた。沸き立っていた17人も次第に静まり、たった今忠誠を誓ったわがリーダーの次の言葉をじっと待った。