パズル
それにしても、この本たち
ほこりっぽいな。
長い間出されてなかったみたいだ。
しばらくして、アシュメルが
できたと声をあげた。
「どうやら、円っぽいのが
できるみたいだぜ。
幅三センチくらいの二重の円なんだけど
その線と線の間にちょっと複雑な
模様があるんだ。
草のツタが絡まったみたいな…」
「ほんとだ。…ちょっと、
待てよ…この模様…」
「オレ、このツタ、
ガンガラツタだと思う。
葉っぱがちょっととがってるし、
ツタの分かれ方がガンガラツタだもん。
…ちょっと、模様っぽく
カッコよくしてあるとこもあるけど」
「…ガンガラツタ、か。
それ、あれだろ。校舎裏に
自生してるやつ…」
と、同時にラシュテルゲンを
象徴する植物でもある…。
「ああ、わかった」
そうか、ああ、なんだ、
思ったより単純な絵柄だ。
「それだよ」
おれはアシュメルの
ローブの胸元をさした。
深みどり色の、直径5センチくらいの
ちいさなワッペン。
「ラシュテルゲンの校章だよ。
今まで気に留めたことなかったけど、
このまわり、ガンガラツタだったんだな…」
深みどりに銀の刺繍をどっかで
見たことある気がしたのは、
それが「校章」だったせいだ。
中央の校舎棟のてっぺんに
はためいてるのを毎日のように
見てるんだもの。
そしてついさっき、今朝。
それはドラゴンによって
燃やされちまったんだけどな。
「そうとわかれば話は早いぜ!
これをモチーフにパズルをすれば
いーんだろっ」
アシュメルの声がうきうきしだした。
よし、じゃあこれで本格的に
開始できるな。
ガンガラツタの縁取りの中に、
ペガサスが翼を広げたのを
横から見たようなシルエット。
ペガサスの中身には、
たくさんの星座たちが絡まるように
ぎっちりとつまっていて…
足元には古代文字の
月と太陽のシンボルが書かれている。
初代校長が星占術精通していたっていう
噂があるけど、だからペガサスの中身が
星座なのかもな。
「それはこっちの棚だろ、
適当なことすんなよ」
「いや、これはどう考えても、
乙女座の一部だね。だから、ここだ」
こういうときのアシュメルは
なかなか譲らない。
ちょっといらつくけど、
まあ楽しそうだし、いいか。
「言っとくけど、ペガサスに
ツノはないからな」
「ええーっ?!まじで?!」
「ツノがあるのは一角獣だろ、混同するなって去年習ったはず!」
っつーか校章だぜ。
ちゃんと覚えとけよ。
そんなくだらない会話を楽しみつつ、
作業は着々と進んで行った。
要領がわかってしまえば単純で、
ただのパズルだった。




