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龍の翡翠玉   作者: 遊兎
25/38

本に隠された秘密



ルゥが青白く光る指先で、

深みどり色の背表紙を指差した。

「ラシュテルゲンの歴史〜創設期〜」と、

おしゃれな銀色の糸で刺繍がしてある。


ん…?その文字の下、

違う色の糸の刺繍がある…。なんだろう。


三重の曲線…円の一部のような気が

しなくもないな。もしかしてこれ…。


「ナルミ、この刺繍、

全部の本にあるみたいだぜ」


「ああわかってるよ、

俺だって気づいたよ」


「ちぇー。おれ観察眼だけは

ナルミに勝てると思ってたのにな」


たしかに、アシュメルは

スマッシュヒットを放つみたいに

すごいことに気づいてくれることが

よくある。それがどんなことを

意味しているのかとかを考えるのは

結局俺の仕事なんだけど。


だけどそれって実は

すごくいいコンビなんじゃないかなーと

おれは思っている。


「たぶん、この刺繍を

繋ぎ合わせていくんだ…パズルみたいに」


よく見ると棚にも細い線が刻まれてる。

たぶん、この線にこれらをあわせれば…。

例えば、創設期の円の一部のような線は、

続きが下の段の淵と、

さらにその下の「スタン校長期」の

背表紙に描かれている刺繍と一致する!


「だーいせーいかーい」


ルゥの声は明るく、嬉しそうだ。

彼は、やっぱり頭いいねー、

学年トップナルミくんは

やっぱりすごいねーと、

空中で一回転した。


「でもこれ、どんな絵柄が

完成するんだよ?」


「さぁ…。それっぽいの、

作ればいいんじゃないかな。

線と線を繋ぎ合わせさえすれば絵柄、

できるはずなんだけど」


なんだよ、思ったより適当だな。


「わかった、やってみる」


アシュメルは、とりあえず全ての本を

棚から取り出して背表紙を調べ始めた。


「上の方に線があるのと、

真ん中当たりにあるのと、

下の方にあるのに分かれるみたいだぜ」


「1番したの段は、棚の淵に印みたいな

線がない。ってことは、

本の背表紙だけで模様が作れるってことだ」


…しかも、下の段だけ縦の幅が広いから、

大きめの本がはいってたはず。

本の特定は簡単だ。


「オーケー、じゃあオレは

大きめの本を選んで並べてみるな」


「任せた。おれは他の段をやる。

1番上も下に同じ、だ。

ただ、本の大きさが特定できないから

ちょっと難しいかも…とりあえず、

やってみるよ」


深みどり色に銀の刺繍か。

どこかで似たようなの、

見たことあるような気がするんだよな…。


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