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龍の翡翠玉   作者: 遊兎
21/38

ルゥ・リリアミス


「ナルミ、これ…」


アシュメルも、甲冑模型が魔法に

かけられていたことに気づいたらしい。


「ああ、これは誰かの魔法…」


まさか先生の誰かじゃないかと

思ってひやりとしたときだった。


「くっくっく…あははぁ、

おっかしいなあ…!」


すぐ後ろで妙に子供っぽい声がした。

振り向いたが、誰もいない。


「ここだよー、っふふ」


声変わり前の子どもの声だ。


「どこだよ!」


ぐるっと見回したが見当たらない。

もう一度怒鳴ろうとしたとき

アシュメルがああっと声をあげた。


「ナルミ、上!」


「え…?うっ、うわっ」


おれの頭上にふわふわと浮かびながら

笑っている幽霊(ゴースト)…。

月明かりを人の形にかためたような

不思議な色をしていた。

そいつはあぐらをかいて逆さまに

浮かびながらにこにこと笑っている。


「ボクに会えるなんて、運がいいね!」


「おまっ、だ、だれだよ」


「見てわかるでしょ?幽霊だよ。

ていうか、お前だなんてひどいなぁ!

ボク、君たちよりうんと先輩なんだよ?」


そいつはくるりと宙で待って

着地した。ぴっと背筋を伸ばして

胸をそらしているが、それでも

頭がおれのみぞおちに届くくらいだ。


「名前は?」


「ルゥ。ルゥ・リリアミス」


「ルゥ・リリアミス。」


口に出してみるときらきらっと

輝くような語感だった。

彼によく、似合う。


ルゥは、星が棲んでいそうな目を

ぱしぱしと瞬かせた。


「君たちはボクのこと知らない

みたいだけど、ボクは知ってるよ?

ナルミとアシュメルでしょう?」


げっ、と思ったね。

幽霊に名前を知られているなんて

あまり気持ちいいことじゃないもの。


「そうだけど…」


「君たちのせいで校則の掲示板が

埋め尽くされそうだって

生徒指導の先生がいつも嘆いているし、

それに生徒たちだっていつも噂してる。

イケメンだとか王子様だとか」


そんなに有名になってたの?

…うかつに校内歩けないな…。


ルゥはけたけたと笑った。

廊下中が揺れた気がした。


「ボクね、ぴかぴかの一年生のときに

死んじゃったんだ。でも、

いいよねとしを取らないって」



あんまりにも気持ち良さそうに笑うので、

死んだのが嬉しいんじゃないかと

思ったが、ルゥはふっと

さびしい目になって遠くをみつめた。





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