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龍の翡翠玉   作者: 遊兎
20/38

図書室の番人。





ラシュテルゲンの図書館は例の

だだっ広い食堂の上にある。

おれとアシュメルはでかい声で

騒ぎたい気持ちを抑えながら

図書館へ急いだ。

司書のラトゥシア先生は

いつも居眠りで忙しいから

忍び込むのは簡単なことのはずだ。

先生のプロフィールを知っておくだけで、

だいぶ学校内をうろつきやすく

なるもんだな。


おれとアシュメルはらせん状の

階段を早足でのぼった。

らせんを三周ほどまわって

二階の廊下に出ると、

両側の壁に図書室の入り口がある。


そこまで来ておれははたと気がついた。

扉はいつも開け放ってあるが、

扉の両サイドには甲冑模型が

置かれていて、それぞれ図書室の

番をしているんだった。

ああ、うっかり忘れてた!

なにせ、いつも図書室なんて

使わないんだもの!


「どうしよう」


アシュメルを見ると、

訝しげな顔をしていた。


「あいつらほんとうに動くの?

ていうか、生きてるの?」


ただの置物…ではないはずだ。

だってここは魔法学校

ラシュテルゲンなんだもの。


「とりあえず、行ってみようぜ」


後ろからぐいぐいアシュメルに

押されながら、開けっ放しの

図書室に足を踏み入れ…ようとした。


「だれかな、ご主人様の居眠りを

邪魔する者は」


頭に赤い羽根を付けた甲冑模型が

がちゃがちゃいう。

音が廊下中に響き渡る。


「許さん、許さんぞ」


今度は緑の羽を付けた甲冑模型が

身体をがちゃつかせた。

二体の甲冑模型は、

持っていた銛のような

長い武器を十字に重ねて、

図書館の入り口を塞ぎ、

声を揃えて言い放った。


「荒らすな図書室、知の聖地!」


「あ、あの。おれたち

そういうつもりはないんですけど」


「そういうつもりがあっても

なくてもここは通さない!

しかも今は授業中!」


赤羽甲冑模型はきびきびといった。

緑羽甲冑模型が、そうだそうだと

合いの手を入れる。


うげー、こいつら学校の

スケジュール把握してやがるのか、

甲冑模型のくせに!


アシュメルがぱっとおれの前に出た。


「先生から資料を持ってくるように

頼まれたんです。星占いの本を…」


「…ほんとうか?どう思う、ガルバ」

どうやら緑羽甲冑模型の名前は

ガルバというらしい。


「あやしい、いかにもあやしい!

これは、嘘つきの目!」


アシュメルがむっとした顔をしたので、

おれはアシュメルが変なことを

口走るんじゃないかとやきもきしていた。


しかしアシュメルはぎゅっと

拳を握りしめただけであくまで

冷静に聞こえるように言った。


「まだ星占術初めて一年も

経ってないんですもん。

だからどうか、ホロスコープの

作成方に関する資料を貸してください」


赤羽甲冑模型がふーむとうなった。

納得はしていないらしい。

横からガルバが口を出す。


「騙されるなオルダ!

嘘つきはラシュテルゲンの図書室に

入るのにふさわしくない!」


赤羽甲冑模型は、オルダというのか。

ガルバはがちゃがちゃと続ける。


「嘘つきは図書室をめちゃくちゃに

荒らすから絶対に入れてはいけない!

嘘つきは頭が悪いんだ」


…ひどいことをいうもんだな。

入るのにふさわしくないだって?

めちゃくちゃに荒らすだと?


頭が悪いのはお前の方なんじゃないかと

甲冑模型をばらばらに

壊したいのをぐっと堪えた。


何か言い返そうとしたときだった。

おれとアシュメルは息を呑んだ。

二つの甲冑模型の頭部が

くるくると回り始めたのだ!


「お、おいナルミ!いくらなんでも

これはやり過ぎだぜ!

首がもげちまうだろ、キブツソンガイだ!」



アシュメルがわたわた慌て始める。


「違う、おれはなにもしていない…」

じゃあどうして、とアシュメルが

言いかけた。

甲冑模型からぽしゅんと音がして

煙が上がった。ぎょっとして、

おれとアシュメルは

甲冑模型をじっと見つめた。


煙がきらめいている。これは魔法の跡…?




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