嘘だよ。
これ以上アシュメルが喋ると、
ドラゴンを倒しに行く話が全部
笑い話で終わりそうな気がしてきた。
もうこいつをしゃべらせては
いけないとおれの直感が言っている。
…切り上げるしかないか…。
「…わかりました。
じゃあ、授業行きます」
おれは、諦めた風を装って言った。
「えーーーっ?!なんで?!」
お前のせいだよ、と言いたいのを
ぐっと堪えおれは笑ってうなずいた。
「うん、がんばって。
今回の定期テスト、
実技もたくさんあるらしいし」
「じゃあ、また」
スティラは右側の扉から、
(校長室に直結している扉だから)
おれは「なんでだよ?!!
ナルミの裏切り者ッッ」などなどと
わめくアシュメルをひっぱって
左側の扉から出た。
「あーもう見損なった!
見損なったぜナルミのバカ!」
「しーっ。バカはお前だろ!
なんであんな調子のったこと
言ったんだよ!」
おれは気息音で怒鳴った。
この校舎は煉瓦造りで天井が高いから、
声が反響しやすいんだ。
「でも、こんな簡単に引き下がること
なかったじゃん!」
「だからっ、静かにしろよっ」
授業中だぞ。
アシュメルは、ウーとうなって
唇を尖らせた。
「あーもういい、オレ超ガリ勉の
優秀魔法使いになる。もうナルミとも
口きかないくらい勉強してやる
…って、ナルミどこ行くの?
教室こっちじゃないの?」
「ばーか、おれがこのまま
諦めるわけないだろ。図書室行くんだよ。
ドラゴンの住処とか、
ドラゴンに効く魔法とかさ…」
薄暗い廊下でも、アシュメルが
満面の笑みを浮かべるのがわかった。
それでこそオレの知ってるナルミだぜ、
なんてうきうきした声で言いながら
どんっと後ろからどついてくる。
…全く、なんて調子いい奴なんだ。




