大魔女。
「なんでドラゴンがそんなことを」
子供をさらったって、
なんにもおもしろいこと、ないじゃない。
子育てがしたいわけじゃあるまいし…。
「…ドラゴンは、最強にして最恐、
そして最凶の魔女の使い魔だよ。
奴は、大魔女の命令で動いてる。
魔法使いの子どもを狩るのは、
大魔女の命令だったんじゃないかな」
大魔女?
「大魔女は、なんでそんなことを?」
「もちろん、全て自分の体に
魔力を蓄えるためだよ。
大魔女は、自分こそが魔法を司る
最強の魔女だと考えているからね」
大魔女か…。
まさか、実在するなんて。
ただの伝説だと思ってた。
でも、伝説だと…。
おれの隣で、アシュメルが「えーっ」と
すっとんきょうな声をあげた。
どうやら彼もおれと同じことを
考えていたらしい。
「大魔女って、
封印されんじゃないんですか?
魔法古代史の授業でそう習ったのに!」
「君から「授業で習った」なんて言葉を
聞けるなんてうれしいよ」
スティラがくすくすと笑う。
いいぞ、場が和んできた。
「僕も、大魔女はとっくに大昔の
人物だと思ってる。
でも、大魔女の子孫や末裔、
弟子なんかは、まだひっそりと
生きている…かもしれない」
なるほどな。
種子は散乱しているということか。
「大魔女の子孫やら弟子やらの
存在については全く知られてないし、
僕ら魔法使いも全然気づいていない。
僕も、さっきのドラゴンを見て
初めて大魔女かもしれないと思った」
っていうか、使い魔がドラゴンって
とても目立つような気がするんだけど。
「大魔女は使い魔をたくさん持ってる。
戦闘用がドラゴンってだけで、
他にはコウモリやら猫やら、
ときには紙一枚なんてこともあるよ」