交渉。
「身の安全を第一に!
ドラゴンに挑もうなど、
間違っても考えるな!」
拡声魔法のボリュームを一気に
最大に引き上げながら、
スティラは目をぎらりと光らせた。
ほとばしるような怒りが、
スティラの声からにじみ出るように見える。
スティラって、こんなに感情を露わに
するような魔法使いだったっけ…?
生徒たちはざわめきながら
それぞれの教室に戻っていく。
おれはしばらくそこに座っていた。
スティラの様子がおかしいから
なんとしても話を聞かなくてはならない。
アシュメルもそれを察しているのか、
黙っておれの隣に座っていた。
が、耐えられなくなったようで
とうとう口を開いた。
「ナルミ、どうするつもりだよ。
本気でドラゴン、倒しにいく?」
「そう言っただろ。…行くよ」
…それに、その目。
お前だって行く気満々じゃんか。
スティラは、生徒たちが
食堂から出ていくのを見届けてから
ふうっと肩の力を抜いた。
そして、いまだにそこに残っている
おれたちに「そこにいることは
承知している」とでも言うような
視線を向け、微笑んだ。
「ナルミ…アシュメル。お前たちの
考えていることはだいたい
予想がついてるよ。
魔法を使わなくたってお見通しだ」
「さすがです、校長先生」
こら、ちゃかすなよアシュメル。
これから大事な交渉をするんだぞ。