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過去の話の続き。
深紅の絨毯、幻獣の彫刻が
施された椅子、机。
壁という壁に張り付くように
並んでいる本たち、
高い天井から吊るされている
星の集まりのような蝋燭のシャンデリア。
その部屋の雰囲気にうっとりしていたら、
ロフトに繋がる階段から
校長先生が降りてきた。
肩に乗っている鮮やかな赤い鳥と
忙しく話しながら、
両手いっぱい本を抱えていた。
そして、俺を見て
「ラシュテルゲンへようこそ」と言って
かぶっていた帽子を俺にかぶせてくれた。
あとから知ったことだけど、
それが彼なりの子どもに対する
挨拶らしい。
彼は俺と会ってすぐに、
おれに魔法使いの素質があることに
気づいたそうだ。
おれは自分が王子であることだけ
省いて身の上を話して、
(王子であることはそれだけで
敵の攻撃の対象になるので、
城から出るときは黙秘しろと
しつけられていた。)
ラシュテルゲンに仮入学した。
そうしてスティラ校長の部屋で
12歳になるまで過ごした。
入学してからも校長直伝の
魔法なわけだからもちろん
成績はトップ。いい友達もできた。
ここでの日々が楽しすぎて
おれはもう半分以上
ここへくる前のことを
わすれている気もする。




