王立魔法学校 ラシュテルゲン
「ほら、ナルミ!!起きろ!!」
きぃんと高い声が、
おれを夢の中から引っ張りあげた。
ったくなんだよと文句をいいながら
身体を起こそうとすると、
抱きしめていたまくらを
思い切り引っ張られ、
上半身がベッドからずり落ちた。
部屋の木枠の小窓から太陽の光が
もれだしていて、石造りの部屋の中は
なかなか明るい。深い赤の掛け布団は
ぐちゃぐちゃに乱れていた。
昨日読んでいた呪文集の山は
枕元の低い棚の上にだらしなく崩れている。
「ほらほら起きて!寝癖が芸術的だよ!
美しい白い髪台無しだ!
それにねえ、あとちょっとで
食堂が閉まるよ!」
おれを金切り声で起こしたのは
ルームメイトのアシュメルだ。
栗毛色のふんわりした癖っ毛は
おれのことなんか言えないだろうと
思うほど、芸術的な感じだった。
「起こし方雑だろ〜」
浮かんでくるあくびと一緒に
アシュメルに文句をいうと、
アシュメルはローブを羽織りながら笑った。
「おいおい、朝食抜きになるのを覚悟して
待ってくれるルームメイトなんて
オレくらいのもんだぜ?」
「そりゃあどうも!」
龍の絵柄が彫られた手鏡を覗いてみると
なるほど芸術的。鳥の巣のようだ。
髪が細くて絡まりやすい上に
肩くらいまで長さがあるからなあ。
うわ、後ろ側やばいやばい。
結ぶしかないか。
「ラシュテルゲンの王子様ねえ〜、
これがねえ〜」
「うるさいなあ。
さ、いくぞアシュメル!」