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【17】 黒弾の狙撃手②

〈カケル視点〉


 魔力付与エンチャント召喚生物クリーチャーを用いた、マナ加速。


 コストに対して骨格が大きい、巨大生物ファッティたち。


 瞬間的な骨格強化パンプアップ


 戦場に存在する、クリーチャー以外の盤面札パーマネントに触れることができる、幅広い対応力……などなど。


 基本的には『生物を育む』という、役割イメージを。


 色特性カラーパイとして割り振られた『緑』であるが。


 一方で。


 先ほど、キララちゃんに説明した。


 カード裏の属性相関図からも、読み取れるように。


 MTGにおける『黒』は、その正反対。


 優秀なクリーチャー除去。


 墓地を第二の山札とする墓地操作リアニメイト


 生贄サクリファイス起点トリガーとした誘発能力。


 効果が強力な反面で、代償も大きな自傷呪文スーサイドの数々……などといった。


 何かを『破壊すること』に、特化した。


 非常に偏った属性である。


 その一点に、関しては。


 他の属性の追随を許さない、黒という色特性カラーパイであるが。


 尖った性能の代償として、白のように戦場の魔力付与エンチャント神秘機構アーティファクトを気軽に破壊でき(触れられ)ず、青のように否認呪文カウンターを構えられず、赤のような効率的な火力呪文バーンを持たずに、緑のようなパワフルな生物規格クリーチャーパワーを、与えられてはいない。


 そんな、長所と欠点が両極端な色を。


 それでも、デッキに採用する理由のひとつに。


 たった今、ヒカルくんがプレイしてきた【恫喝】のような。


 他の属性には存在しない『手札破壊ハンデス』呪文の存在が挙げられる。


 効果は、以下のようなもの。


【恫喝 〈黒〉

 レアリティ……コモン

 カードタイプ……詠唱呪文

 対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは自分の手札を公開する。あなたはその中のクリーチャーでも土地でもないカードを1枚選ぶ。そのプレイヤーは、そのカードを捨てる】


 素人が、ただなんとなく組んだような。


 主題テーマがとっ散らかった、デッキでもない限り。


 むしろ玄人が明確な『目的』を据えて構築した、完成度の高いデッキほど。


 連携シナジーの中核を成す、切り札(キーカード)たちが、明確に。


 勝利のための役割を、確立しているものだ。


 だからこそ。


 それを、使用プレイする前に。


 手札から直接、墓地に叩き落とすという不条理が。


 悪辣なる手札破壊ハンデスの、所業である。

 

 しかもこの【恫喝】は、たった1マナで打てるため。


 使用したプレイヤーは、対戦相手のキーカードを序盤で叩き落としたうえに、手札を確認チェックすることで、デッキそのものの情報すら、抜き取ってしまうのである。


 あるいは、ゲームの後半においても。


 勝負を詰める動きを、始める前に。


 相手の手札を、確認して。


 否認カウンター火力バーンといった脅威を、排除することだってできる。


 効果範囲も『土地とクリーチャー以外』と幅広いため、相手がクリーチャー特化のデッキだとか、そもそも手札が無くなっている状況でもない限り、適切に使用すれば何かしらの優位アドを、簡単に獲得できてしまうのだ。


 まさしく、黒を代表する強カードである。


 これをデッキに組み込みたいがために、わざわざ黒を、主力色メイン補助色タッチとして採用することだって、普通にあり得るくらいだ。


対応スタックありません。通ります、どうぞ」


 そして今は、ゲーム第1ターン目の、後手番。


 先手番でマナを消費した僕に、抗える選択肢はない。


 大人しく手札を公開をする。


「……」


 そして、ヒカルくんの眼前に晒された。


 現時点における、僕の手札とは。


 土地が1枚に、クリーチャーが2枚。


 それ以外のカードが2枚という、内訳であり。


 その中から、【恫喝】で選択できるカードとは。


 このデッキの、名前にもなっている……


【対立 〈青〉〈青〉②

 レアリティ……レア

 カードタイプ……魔力付与『戦場』

 あなたがコントロールするクリーチャー1体を〈→〉する;パーマネント1つを対象する。それを〈→〉する】


 ……という。


 戦場フィールドを対象とした魔力付与エンチャントと。


 それを補助するための……


【魔力漏洩 〈青〉①

 レアリティ……コモン

 カードタイプ……瞬間呪文

 呪文1つを対象とする。そのコントローラーが③マナを支払わない限り、それを打ち消す】


 ……という。


 確定ではないが、そのぶん多色デッキでも使い易く設計デザインされた、否認呪文カウンターだった。


「……では、【魔力漏洩】を捨ててください」


 二択から。


 ヒカルくんが、選んだのは。


 このデッキの(キー)である【対立】ではなく。


 相手の動きに制限をかける、否認呪文カウンター


(う〜ん、この辺の選別眼は、さすがに、ゲーム慣れしているねえ)


 おそらく、ゲームへの理解度が浅いプレイヤーであれば。


 カードのレアリティが『レア』であり。


 デッキの代名詞にもなっている【対立】を。


 目にした瞬間、ほとんど思考停止で。


 落としているところだろう。


 その選択も、間違いではない。


 だけど否認呪文というのは、ただ相手がそれを握っているという『情報』だけで、対戦相手の動きを阻害する異物ノイズなのだ。


 だから、そこからまず丁寧に。


 脅威を除去していく、プレイングは。


 自分のデッキ構成をしっかりと把握したうえで、対立デッキのレシピや動かし方などを、キチンと理解していなければ。


 ああも簡単そうに、迷いなく。


 辿り着ける解答ではない。


 これだけで、ヒカルくんが積み重ねてきた。


 練度の高さが、伺える。


(でもやっぱり、今回もヒカルくんが使っているのは、黒をメインにしたデッキっぽいね)


 とはいえ、僕のほうも。


 やや推測が多めではあるが、ヒカルくんの使っているデッキに、検討をつけることができていた。


 というのも。


 先ほどヒカルくんは、僕のことを。


 密かに好敵手ライバル視していて、常日頃から観察することで、対策を練ってきたのだ……という旨の発言を。


 漏らしていたのだけれど。


 当然ながら、僕の方は。


 何十人もいる、常連客たちの。


 顔や名前までは、覚えていても。


 流石に、その全員が回しているデッキまでは、把握しきれていない。


 さすがに、週末大会フライデーで強敵となり得る常連客には、目をつけて。


 しっかりと情報収集リサーチを、しているが。


 それは精々、十名に満たない程度のもので。


 脅威度が低い常連客に対しては、その限りではなかった。


 しかし、それでも……


 ヒカルくんの使用していたデッキは、よく覚えている。


 というか、これまでに。


 僕は、ヒカルくんが『黒』以外のデッキを回しているところを、見たことがない。


 もっとはっきり言ってしまえば。


 この子が使っていたのは、他の色を、ただの一滴すら混ぜていない。


 ゴリゴリの『黒単』ばかりだった。


(まあ、それは、ある意味仕方ないんだろうけど……)


 MTGにおける、共通認識。


 多色デッキとは、各色特性(カラーパイ)に割り振られた、優れた部分を。


 効率的ピンポイントに、採用できる代償として。


 土台となる土地の配分に、色事故リスクを背負うために。


 それを回避するため、高額な多色土地カードを。


 複数枚、入手が求めらてしまう。


 よって、もし仮に。


 大会品質トーナメントレベルの多色デッキを、本気ガチで、組もうとするならば。


 かかる費用は、土地代だけでも……


 否、下手をすれば、土地こそが。


 もっとも金を食うわけで。


 総額は、ちゃんと働いている社会人であっても、気軽に手を出せないような金額になってきてしまうのだ。


 その前提条件が、収入源が乏しい中学生であれば、尚更に。


 高難易度シビアとなってくることは、間違いない。


 よって、無理をした多色デッキを組んで。


 無惨な色事故を、引き起こすくらいなら。


 いっそ、単色にまとめてしまえばいい。


 そうして浮いた土地代を、その他のカード購入に回すというのは。


 とても理に適った、合理性である。


(……それでも、ヒカルくんの偏執ぶりは、ちょっと普通じゃないけどね)


 黒以外の、他の4色に。

 

 一欠片の興味すら、示すことなく。


 ただただ、単色だけを使い続ける、プレイスタイルは。


 異常で。


 異端で。


 異質だった。


 だから僕も、その印象を強く覚えている。


(でもね、ヒカルくん。キミが黒という属性を気に入っていて、それに拘り続けるのは、自由だけど……でも本当に黒単のままなら、僕の【対立】デッキの方が、圧倒的に対応力が上だからね?)


 MTGにおいて。


 黒という色特性カラーパイは。


 ある特定の資源リソースについては、極めて強力な干渉を成す、一方で。


 そうでない分野に対しては、ほとんど干渉できないという。


 非常に偏った(ピーキーな)、属性である。


 対する、僕の対立デッキは。


 デッキに組み込まれたコンボが発動すれば、擬似的な停滞ロックがかかるために、どんなデッキが相手であっても、安定した勝利を掴むことができる設計デザインだ。


 特に、互いに初見となるデッキに対しての。


 対策札サイドが組み込まれていない、第一試合においては。


 この優位性アドは、かなり大きい。


漏洩カウンターが落とされたのは痛かったけど、カード交換的には1対1で、互角イーブンだし、僕も相手の情報を、得ることができた。勝負はまだわからないぞ)


 失ったものと、得たもの。


 優位性アドの割合に、思考を巡らせながら。


 使用していた土地を、使用可能状態アンタップにして。


 アップキープ。


 ドロー。


 と。


(……おっ。【ガラクト】が来てくれた)


 ここにきて、良いカードを引いた。


 戦場に揺蕩っている機運の、流れを感じる。


「じゃあ、僕のメインフェイズ。まずは【ラノエ】の〈緑〉マナと、【沿岸】の①マナで、【ラノエルドの僧侶】を召喚するよ」


 ざわつく心を、仮面ポーカーフェイスで覆い隠して。


 勝利への布石を、積み重ねる僕が。


 召喚したのは、以下のカード。


【ラノエルドの僧侶 〈緑〉①

 レアリティ……コモン

 カードタイプ……召喚生物『エルフ』

 1/1

〈→〉;あなたは、あなたがコントールしているエルフの数に等しい〈緑〉のマナを獲得する】


 エルフをマナ加速として用いる、デッキにおいては。


 これ以上ないほどに、優秀な。


 マナ加速生物だ。


 さらに。


「【ガイア揺籃の大地】をセットランド。2マナで【ラノエルドの幻想家】を召喚するよ】


 戦場に、同名カードを複数枚同時に設置できないという、伝説設定レジェンドルールなるデメリットを持つものの。


 僕がコントールする、クリーチャーの数だけ。


〈緑〉マナを生み出してくれる【ガイア揺籃の大地】から。


 獲得した2マナで、召喚したのは……


【ラノエルドの幻想家 〈緑〉①

 レアリティ……コモン

 カードタイプ……召喚生物『エルフ』

 1/1

 ラノエルドの幻想家が戦場に出たとき、カードを1枚引く】


 ……という。


 こちらは、マナ加速ではなく。


 ドロー補助サポートの、カードである。


 とはいえ、生物種族クリーチャータイプが【ラノエルドのエルフ】と同じ『エルフ』であるために、次のターンになれば召喚酔いが解けて能力を起動できる【ラノエルドの僧侶】の対象となるし、当然ながら、戦場のクリーチャー数を参照とする【ガイア揺籃の大地】にも貢献してくれる。


 つまり現状だけでも、次のターンに。


 僕が獲得できるマナは、合計で8マナにも及ぶのだ。


 まだ、ゲーム2ターン目なのに。


 この暴力的なまでの、マナ加速は。


 色特性カラーパイを割り振られた、緑ならではの、特権である。


 しかも、このドローで引いてきたのが……


(……【島】っ!)


 いいね。


 いいよ。


 いいじゃない。


 次々と、デッキのキーカードが集まってくる。


 勝利への細筋が、大河へと、繋がろうとしている。


 勝利の足音が聴こえてしまう。


「ターンエンド」


「……では、僕のターンですね」


 押し殺した、僕の高揚に。


 気付いた様子もなく。


 ヒカルくんは淡々と、手番を進めていく。


「……メインフェイズ。【腐敗した産卵池】を、セットランド」


 高速展開された、エルフ軍団を前にして。


 ヒカルくんが戦場に、配置したのは……


【腐敗した産卵池

 レアリティ……アンコモン

 カードタイプ……特殊地形

 腐敗した産卵池は、タップ状態で戦場に出る。

〈→〉;あなたは〈黒〉を獲得する。

〈黒〉①;腐敗した産卵池は、ターン終了時まで「〈黒〉;このカードはターン終了時まで〈不壊〉を獲得する」を持つ1/1のクリーテャーとなる。同時にこれは、土地としても扱う】


 ……という。


 マナを注ぎ込むことで、一時的に〈不壊〉という『破壊効果では破壊されない』能力を持った、擬似生物へと変身して。


 戦闘では主に、不死身の盾役(ブロッカー)として。


 活躍してくれる、良カードなんだけど。


(ここでそれは、ちょっと、痛すぎやしないかい?)


 変身能力の、代償として。


 この手の特殊地形は、戦場に、使用不可状態タップイン配置セットされることが多い。


 すなわち、配置してすぐに〈→〉能力を、使用できない。


 土地からマナを、生み出せない。

 

 ゲームの展開が、1ターンぶん。


 遅れてしまうのだ。


 状況によってはそれが、さほど気にならない場合もあるけれど。


 少なくとも今のような、最序盤。


 しかも相手がクリーテャーを高速展開している場面においては、なかなかキツい重荷ハンデであることは、明白だった。


「……ターンエンドです」


 しかも、そのまま。


 他に何をすることもなく、ターンを終えてしまう。


 ここから導かれる推論とは。


(なるほど。つまりヒカルくんは、このターンを犠牲にしてでも、次のターンに3マナを確保しておきたいんだね?)


 裏を返せば。


 ヒカルくんに『それをさせなければ』。


 僕は、このゲームに勝てるということ。


 そしてその可能性は、決して。


 低くない。


「僕のターン。アンタップ、アップキープ、ドローカード」


 何故なら、そのための道筋は。


(……ッ! ここで【隠遁者】が、来るのかよ!)


 今の、ドローによって。


 完璧な形で、仕上がったからだ。


 あとはただ、手順を間違えないように。


 慎重に詰めて(プレイして)いくだけの、作業となる。


「まずは、【島】をセットランド。それから土地を全部タップして、【島】から〈青〉マナと、【沿岸】から無色を1マナ、【揺籃の大地】から3マナぶんの〈緑〉を獲得するよ?」


「どうぞ」


「じゃあ、その中から〈緑〉3マナと無色1マナを使用して、【野生語りのガラクト】を召喚するね?」


「オーケイです」


 こちらを見つめる、漆黒と薄白の虹彩異色オッドアイに。


 動揺は、見られないものの。


 内心、穏やかでは。


 いられないはずだ。


 なにせ、僕が召喚したのは……


【原野英霊ガラクト 〈緑〉〈緑〉②

 レアリティ……神話レア

 カードタイプ……英霊召喚

 アクティブカウンター〈3〉

〈+1〉;あなたのコントロールする土地2つを対象とする。それをアンタップする。

〈ー1〉;あなたは3/3のビースト・トークンを獲得する。

〈ー4〉;あなたのコントロールするクリーチャーは、ターン終了時まで+3/+3の修正を受けるとともに『貫通』を獲得する】


 ……というもの。


 もう、この『神話レア』なる特殊なレアリティからも、察せられるように。


 MTG本編で展開される物語ストーリーにおいては、主役級や、それに準じる重要なキャラクターたちが、カードとして再現されたこの『英霊召喚ウォーカー』たちは、その他のカードたちと、少しばかり毛色が違っている。


 イメージとしては。


 召喚して、使役して、戦わせる配下クリーチャーではなく。


 協力をして、ともに戦う仲間フレンドといった、立ち位置なのだ。


 そのため、彼らは生物であるにも関わらず。


 クリーチャーたちのような、パワーやタフネスを、持っていない。


 代わりに、ガラクにおいては〈3〉と表記されているような『アクティブカウンター』を、与えられている。


 これは、プレイヤーにおける生命力ライフのようなもので。


 クリーチャーから攻撃を受けたり。


 火力呪文の直撃を受けると。


 同じ点数だけ、カウンターが減って。


 アクティブカウンターが『0』になると、英霊ウォーカーは、破壊されてしまう。


 そしてウォーカーは、クリーチャーのように攻撃アタック防御ブロックには、参加できない。


 その代わりにウォーカーは、1ターンに1度だけ。


 自分のアクティブカウンターを消費、あるいは増加させることで、様々な能力を発揮できるのだ。


 例えば。


「除去はあるかい?」


「ないです」


「だったらすぐに、【ガラクト】の〈+1〉能力を起動。アクティブカウンターを〈4〉に増やして、【島】と【揺籃の大地】を、アンタップさせてもらうよ」


「どうぞ」


 と、このように。


 初期のアクティブカウンター保有値の下に表記された、おおよそ3つ前後のアクティブスキルを用いて、自身のアクティブカウンターを増減させながら、戦場に影響を与えていくのだ。


 そして、ほとんどのウォーカーたちは。


 そうしたアクティブスキルの、一番下に。


 召喚した最初のターンには、アクティブカウンターが足りなくて、使用できないものの。


 発動すれば、ゲームに多大な影響を与える。


 通称『奥義』なるものを、抱えており。


 ガラクトの場合、それは『+3/+3』という、なかなかにゴッツいクリーチャーの骨格修正パンプアップに加えて。


 相手のクリーチャーにブロックされても、自分のパワー値から、相手のタフネス値を差し引いて、その余剰値を相手プレイヤーに直接叩きつける〈貫通〉能力まで、付与してくれるのだ。


 つまり、クリーチャーがある程度並んだ状態で。

 

 この奥義を発動できれば、ほぼ勝ち確。


 他にも、アクティブカウンターを消費した擬似生物トークンの生成なども、できることから。


 マナ加速。


 トークン生成。


 ゲームを決める奥義、と、


 すべての面で活躍を見込める、多芸なカードなのである。


 さらに、【原野英霊のガラクト】で得た優位アドは。


 これで終わりじゃない。


「アンタップした【島】と【揺籃の大地】から、もう一度〈青〉1マナと〈緑〉3マナを獲得。さらに【僧侶】と【ラノエ】をタップして、合計4点の〈緑〉マナを獲得します。ここに、先ほど余らせた〈青〉マナを足して、いま僕の貯蔵魔力マナプールは〈青〉が2点と〈緑〉が7点になっているけど、ここまでオーケーかな?」


「オーケイです。対応スタック、ありません」


「だったら先に、【対立】を。その次に【ラノエルドの隠遁者】を召喚させてもらうよ」


 先ほどの【恫喝】によって。


 存在を把握されていた【対立】とは。


 クリーテャーやプレイヤーではなく、戦場フィールドそのものに加護を与えるタイプの、魔力付与エンチャントである。


 そして、真価を発揮するためには。


 タップしていない状態のクリーチャーが、大量に必要となるわけで。


 その条件を満たすのが、この……


【ラノエルドの隠遁者 〈緑〉〈緑〉③

 レアリティ……レア

 カードタイプ……召喚生物『エルフ』

 1/1

〈残響〉

 このカードが戦場に出たとき、あなたは緑の1/1のリス・クリーチャー・トークンを4体を、獲得する。

 あなたのコントロールするリスは+1/+1の修正を受ける】

 

 ……というカード。


 本体は1/1と貧弱で、召喚した次のアップキープに、もう一度召喚コストを支払わなければ生贄に捧げられてしまう〈残響デメリット〉があるものの、たとえそれを支払わずに墓地に送られたところで、生成されたリス・トークンたちは戦場に残ったままだし、ちゃんと残響コストを支払えば、強化されたリスたちとともに合計で9点もの打点を見込める、かなりの強カードである。


(悪いね、ヒカルくん。過剰戦力オーバーキルだけど、容赦しないよ!)


 ただでさえ、アクティブカウンターを蓄積チャージした【野生語りのガラクト】が、控えているうえに。


 ダメ押しとなる、追加の大量召喚だ。


 おかげで手札は、すっからかんになってしまったものの。


 このターンを終えて、次のターン。


 ヒカルくんのアップキープで。


 アンタップしたばかりの土地2枚を、リス・トークンを使用した【対立】の『盤面札パーマネントをタップする』対象に、指定することで。


 ヒカルくんは、メインフェイズに移行する前に。


 使用可能アンタップ状態の土地を、全て使用不可にされて(タップされて)しまうのだ。


 よってメインフェイズで、土地からマナを生み出せない。


 これが擬似的な、停滞ロック状態で。


 対立デッキの、勝ち筋である。


(一応はまだ、【対立】で使用不可タップにする前に、対応スタックで土地からマナを浮かせて、瞬間呪文インスタントを打ってくる可能性はあるけど……)


 MTGの、基本ルールにおいて。


 マナとは、各フェイズの切り替えごとに。


 どれだけ、保有プールしてしても。


 全て消失してしまう。


 よってアップキープ『フェイズ』で獲得したマナを、次のメイン『フェイズ』まで、持ち越すことはできない。


 この状況下で使用できる呪文は。


 盤面札パーマネントが有する、起動能力や。


 どのタイミングでも使用できる、瞬間呪文インスタントくらいのもの。


 そして、その後のメインフェイズで。


 土地を1枚、新たに追加セットしたところで。


 メインデッキから積まれているような、戦場を一掃できるタイプの除去呪文は、おおよそ4マナ域からとなるために。


 ヒカルくんが、それを使用プレイできるとは。


 到底思えなかった。


 そして手番ターンが僕へと戻ってくれば、そこで詰み(エンド)


 完璧な、試合展開ゲームメイキングである。


 う、美しい……っ!


「……」


 と。

 

 それなのに。


 そのはず、なのに。


「……はあ」


 圧倒的に、追い詰められているはずの、ヒカルくんは。


 いっそ、悲しそうに、見えるほど。


 深く、嘆息して。


「……やっぱり、夢尾さんって、前より『弱く』なってますよ」


 僕の心臓を、ギュッと。


 握り潰すような言葉を、吐き出したのだった。


 野生を飼い慣らせると思っている、愚か者どもめ。

 俺がその思い上がりを、正してやろう。


 ――原野英霊ガラクト――

 

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