4.企画会議4
さすがに疲れて来た。敵なんて余程の人気作にならない限り、商品展開なんてありえないのだから、さくっと終わらせよう。
「皆さん、お疲れ様です。ここからは最後のパート、敵組織についての説明となります。
まず、戦隊メンバーの敵は『星間連合』です。言葉の通り、異なる複数の天体による国家間で組織された組織です。星間連合の目的は、組織内の天体が危機に陥った際に、連合が一致協力して解決しうる新たな天体を提供することです。地球への侵略も、地球側から見れば理不尽なものですが、連合内の論理では至極普通の対応という事になります。
また、複数の天体の生物種が登場しますので、敵のデザインのバリエーションを高めることが出来ます。
『星間連合』での決定方法は、論議の上の多数決による決定で、決定後は反対意見であったとしても決定内容に従う、という民主的なもので、構成メンバー上での『相互理解』は為されております。
今回の地球侵略は、連合所属内の一惑星国家における人口爆発問題に関する解決の依頼が持ち込まれたからです。星間連合としては大気組成・重力・気温・風土病の有無・知的生命体の有無等を調査の上、移住先として地球を選定し、テラフォーミングを開始した、という背景になります」
「我々は知的生命体ではないという事かね」
「敵の論理ではそうなります。生態系の最上位にいながら他種への尊重もなく、同種で殺し合いを繰り返す生命体は『知的』ではないでしょう」
「という訳で星間連合は地球人を殺戮し、代わりに問題の異星人を送る事で問題解決を図ろうとします。問題解決の為の物理的行動に当事者は参加しないルールがある為、我々は人間とは全く異なるフォルムの敵と戦う事になります」
「この『星間連合』と『ロック』は関係あるのかね?」
「それについては、最終盤で明らかになります。ただ、星間連合は連合内では民主的な組織ですが、連合外の天体には苛烈な対応を取る組織です。恨みを持つ者がいても不思議ではないです。・・・今回地球には39の種族から選抜メンバーが艦隊を率いて襲来して来ました。地球侵攻については、1隻の宇宙船が強行着陸し、戦闘メンバーが船外活動をします。彼等は人類の入れ替えを目論んでいるので、他の動植物を傷付ける意図はありません。彼等の多くは地球上の重力・大気組成等では適応できない為にスーツを着用しております。これが従来の番組での戦闘員に該当します。さらに、メンバーのリーダーは特殊な兵装を加味したスーツを着用しており、従来の番組の怪人に該当します。リーダーも他のメンバーと同じくスーツの破壊により絶命しますが、スーツに内蔵された機能により、地球上の環境に適合する様に急速変態・巨大化致します。この展開で戦隊のロボットとの戦闘に移行します」
「敵の宇宙船についてはどうするんだ?」
「番組スタートからある時点まで5台の戦闘機で撃墜していました。宇宙船内に、直接戦闘に従事しない者も搭乗している事に気付き躊躇する様になります。少なくともレッドには攻撃出来ないでしょう・・・言い忘れておりましたが、星間連合の宇宙人・スーツ・巨大化形態については特撮ファンで漫画家の◎◎氏に依頼します。宇宙船についてはイラストレーターの□□氏に依頼します」
いよいよ最後のパートに入る。
「最後に道脇小百合が戦っている敵『妖魔』について説明します。妖魔は、『星間連合』の侵略開始の1年前頃から出現し始めました。全高2~3m程度で、何体かの群れで出現します。出現の目的は人間の捕食で、必ずどこかの部位を食べ残します。妖魔は夜に、次元の歪みを作って現れます。魔法少女は次元の歪みを感知して、現場に急行します。
妖魔は腕力と鋭い爪・牙を用いた戦いを展開します。身体を循環している血液の様な体液は強酸性で、ある時点より自分の体液が人間・魔法少女に対し有効であることに気付き、自ら傷付けて体液を放射する戦い方を編み出します。
妖魔に対する攻撃に関しては、現状魔法少女のステッキから照射するビームを至近距離からピンポイントで命中させる事のみです」
「・・・ちょっと魔法少女が勝つには困難すぎる設定ではないか?」
「ええ。だから魔法少女は生傷がたえません。彼女の普段着が肌を見せないものなのもその為です」
「妖魔は星間連合に加盟している一種族なのか?」
「それは番組の最終盤に明らかになります」
そろそろ質問も尽きた様だな。
「以上が、番組の基本設定となります。皆さん、異存ありませんか。問題なければ、シノプシス、それからシナリオの執筆に入ります」
「この設定のままでいいか、修正が必要かは第1稿を読んでからだな。そうだな、至急3話分のシナリオを準備して欲しい」
一人の男が言うと、全員が頷いていた。
「わかりました。一週間後には提出させていただきます。・・・それでは最後に、会議冒頭に保留としていた番組名について審議いただけないでしょうか」
俺の言葉にしばらく無言で、重い雰囲気が広がった。
「仕方無いだろ。プレスリリースや商標登録の時期も迫っている。今年度はこれでいいじゃないか」
一人の男が言ったが、誰も後に続かない。責任を取りたくないからなのか、これは決める会議であるにも関わらず、だ。俺は強引に議題を締める事にした。
「ありがとうございます。それでは新番組『最強戦士カラーナイツ』として進めさせていただきます」
長い長い説明を終えて、ようやく俺は席に座った。
「山田さん、ありがとうございました。それでは、本日の企画会議を終了致します。次回は10日後の第1回脚本会議となります。時刻と会場については本日と同一です。欠席・遅刻の無い様お願いします。欠席される場合は、前日までに事務局に委任状の提出をお願いします。山田さん、一週間以内に事務局に三話までの脚本の提出をお願いします。脚本に関しましては会議前日までにメールで送信させていただきます。・・・皆さん、長い時間ありがとうございました」
司会の女性の言葉でようやく企画会議が終わった。俺は思わず机に突っ伏した。しばらく休みたい気分だった。
その後、俺はプロデューサー、メイン監督、特技監督の四人で打ち上げと称して、居酒屋に訪れた。
「かんぱーい」
「山田さん、お疲れ様でした」
「ありがとう。いや、ホントに緊張したよ。特撮番組の企画会議は初めてだったからね」
「でも、山田さん、アニメの企画会議にはよく参加されてるでしょ」
「ああ。でもアニメの場合は大半は、原作呼んで下さい、で終わるからね」
「・・・成程。それで大丈夫なんですか? 一週間で3話分のシナリオなんて・・・」
「ああ、大丈夫だと思うよ」
「まさか、もう書き進められているとか・・・」
「いいや、全然。これから書くんだよ」
「それで間に合いますか?」
「間に合うと思うよ。・・・いわゆる王道の展開というのがあって、今回はそれを踏襲するつもりだからね。1話で敵が出現し、5人の戦士が選ばれて勝利する。2話では初めて5人が名乗って団体戦を繰り広げる。3話で巨大化した敵と初対戦する。そういう流れになるんだ。パターン破りの番組にするつもりだけど、スタートはオーソドックスにね」
「それもそうですね。・・・じゃあ、じゃんじゃん飲みますか」
「そうだな。今日は諸々忘れて飲むとするか」
「そうしましょう」
その夜したたか飲んだ俺は、翌朝から二日酔いのままシナリオの執筆を開始した。
俺は事務局の指定した日時にシナリオを提出した。
第1回脚本会議は滞りなく終了し、考案した設定は承認された。
事務局は俺の設定した戦隊メンバーのプロフィールと共にメンバーオーディションの開催を、芸能事務所に通知した。




