第2話 最強戦隊カラーナイツ3
『個々人の兵装については、この地方で定期的に流れていた電波情報を元にして作成した』
「・・・それでカラーナイツ」
恵味の呟きをジョージは聞き逃さなかった。
「大城さん、どういう事?説明してくれないか」
「詳しく知っている訳じゃないけど、息子達の付き合いで見ているニチアサのヒーローにそっくりなのよね、デザインが」
「ふうん。子供の頃見ていたけど、今も続いているのか。それで今の番組名は何て言うの?」
「・・・確か『最強戦隊カラーナイツ』よ」
「ふうん。じゃあ俺達は最強戦隊カラーナイツという訳か」
「悪くないんじゃないの、カラーナイツ」
「・・・そうだな」
「・・・だけどねロック、あたしはあなたの意志で変身したいわけじゃない」
『今回は非常事態だったので、君達の意志を確認後、強制的に兵装を着用してもらった。次回からは君達の意志で着用して欲しい』
「それは、どうやって?」
『先程のアイテムを5回タップしたまえ。兵装を着用出来る』
5人はそれぞれに5回タップして、兵装を着用する。
あれ?何かおかしいぞ。5人に生じる軽い違和感。
『兵装の色に関しては、現在の精神状態を反映している。精神が高まっている時はより鮮やかな色になると思って欲しい』
「色については、どんな意味があるんだ?」
『君達の戦いにおける概念・主要因といったもののイメージカラーだと思って欲しい。白は正義、黒は公正、赤は勇気、ピンクは希望、青は慈愛を象徴している』
「・・・武器は?なんで皆、銃だったりステッキ持ってるのに、あたしは素手なの?」
『武器については、君達が普段使っているアイテムを基本として作成した。君については残念ながら武器を使うイメージが無かった。強いてあげれば・・・』
「強いてあげれば?」
『牙だ。牙なら強化して武器化することは可能だが・・・』
一同爆笑。
「・・・いらない。そんなんならいらない。もういいよ。あたしは、あたしなりの方法で戦うよ」
「ねえ、そろそろいいかしら。私、子供を迎えに行かなきゃいけないんで・・・」
「俺達も駐屯地に戻らないとな」
「私も家に帰らないと・・・」
「ロック、あたしには寝る場所が無いんだ。迷惑でなければ、ここに泊めてくれないかな?」
それなら私の家に、と恵味は言いかけたが、言えなかった。この娘と同居すると、幼い二人の息子は磨意に魅了されるだろう。思春期になった息子達の理想の女性像が巽磨意では、いつまでたっても彼女は出来ないだろう。うむ、彼女の存在は幼児教育の面では問題だ。
『それは構わない。ただし、私は見ての通り動く事は出来ない。従って、この状態を維持するには君の努力が必要だ』
「わかった。雨風をしのげるなら、掃除でも何でもするよ」
「・・・それじゃあ、今日のところは解散しようか。皆お疲れ様でした」
ジョージの言葉で一同解散した。
渋谷での大惨事から1週間後、新宿にあるシネコンで事件は起きた。
モンスターが暴れる映画を見ていた観客38名全員が行方不明になるというものである。終焉後、清掃する為に入った職員が不信に思い、上司に連絡した。当初は職員の見落としかと思われたが、家族達からの捜索願で事件化した。
同様の事件が日比谷、浅草でも発生し、被害者は100名を超えた。
ロック及び5人がそれぞれ時間の都合をつけて、捜索したが手がかり一つ掴めなかった。
「畜生、今日も無駄足だったか」
「今までの事件の共通点はあるのか?」
「一応あるわ。事件発生しているのは、23区内の映画館、発生時刻は朝初回の上映中、映画の内容としては怪物というか異形の者が出現して活躍するものよ」
「それだけ共通しているのなら、次の発生場所が予測出来ないかな」
「じゃあ、明日の朝、あたしが池袋の映画館に行ってみるよ」
「磨意、どうだった?」
「ああ、そこそこ面白かったよ」
「そうじゃないだろ。事件は起きなかったのか?」
「エンディングまで何も起こらなかった。・・・今日は上野で発生したらしい」
「明日は土曜日だし、五人バラバラに映画館に潜り込もう。それで何かが起きたら、そこに全員集合だ」
ジョージの言葉に、健次郎、磨意、小百合は頷いた。
「ごめんなさい。明日はチビスケと一緒にいさせて欲しいのよ。ここのところ、公私共に忙しくて相手してなかったし・・・」
「それなら、しょうがないんじゃない」
「東京じゅうのスクリーンから事件の発生する場所に出くわすなんて奇蹟みたいなものだからな。分子が5から4に減ったところで大差ないだろ。・・・日曜日は参加出来るんだろうな」
「日曜はなんとかするわ」
「子供さんと何かされるんですか?」と小百合が尋ねると、恵味はバッグからチケットを取り出して言った。
「うちのチビにはまだ早いかもしれないけど、いい経験になるでしょ」
チケットには『スーパー歌舞伎 最強戦隊カラーナイツ 開演時刻11:00』と印字されていた。
まさかな・・・。
土曜日、恵味を除く四人はそれぞれ担当の映画館に赴き、監視作業を行った。
幸か不幸か彼等のいたスクリーンでは事故は起こらず、それぞれロックの待つベースに戻って来る。
「恵味さん、大丈夫かな?」
「今まで舞台劇では発生していないから大丈夫じゃないの」
「単に今まで舞台劇では条件が揃わなかっただけではないのか?午前中に開演する舞台劇は稀だし、異形が登場することもほぽない。だから条件が揃う事が映画館でしかなかったのではないか?」
ここでショージが三人に対して言った。
「恵味さんが行った劇場で事件が起きる可能性がある。全員変身した状態で待機。恵味さんから連絡が入り次第、現場に行くぞ」
四人は変身した格好で、恵味の無事を、何もない事を祈る。
午前10時、恵味は二人の子供を連れて劇場に到着した。
既に入場が始まっている。恵味達と同様に子供連れが殆どだ。
歌舞伎とは言え、題材が子供番組なのだから予想通りだし、主催者側も新たなファンの掘り起こしを目指したものだから、当然であろう。
二人を連れて、入場列に並ぶ。恵味は二人が勝手にどこかへ行かないか注意しながら、入場後の段取りを考える。チビへの飲み物を買って、グッズショップを何とかスルーして、トイレに行かせてから座席に座る。そんなところか。
何とかして座席に座る。2歳の次男は恵味の膝の上だ。こいつも結構重くなってきたな。
定刻となり、白塗りの俳優が口上を述べて、いよいよ始まる。
まずは、敵の秘密基地から始まった。化粧と着ぐるみで悪人・怪人を歌舞伎風に表現している。そして幹部の一人が首領に向かって、今回の作戦を説明していた。
暗転して背景が変わり、今度は戦隊側の秘密基地である。五人が和気藹々とした状態である。勿論、歌舞伎なので女性役の二人も男性が務めている。
さらに暗転して、いかにも街中といった背景に変わる。そこに怪人と戦闘員達が現れる。
その場面に恵味は違和感を覚えた。冒頭に出て来た怪人とあまりにも容姿が違う。しかも、怪人は普通の人間よりも遥かに大きく、戦闘員達は子供が入って演じるのも困難なサイズだ。質感は全体にぬめぬめとしており、いかにもといった体の着ぐるみとは明らかに異なる。
「ロック、それにみんな、ここに現れたわ。間違いない『星間連合』よ」
『わかった。30秒で駆けつける』
「ロック、今から私が舞台に上がって観客を守るから、あいつ等が下に降りられないようにしてちょうだい」
『わかった。劇場の舞台にバリアを展開する。但し、君だけはバリア無効化の権能を付与する』
「ありがと。それから変身を見られる訳にはいかないので、舞台上は1分でいい、煙幕で舞台の様子を見えなくして」
『了解』
「じゃあ、みんな、舞台上で集合よ」
恵味は膝の上の心を、長男の凛に預け、彼の目を見ながら言った。
「凛、心を連れて、皆が避難し始めたら、一緒に避難するのよ」
「ママは?」
不安そうに尋ねる息子に、母親は力強く宣言した。
「ママは、あの怪人を倒してくるわ!」




