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1.企画会議1

「それでは定刻となりましたので、次年度の戦隊シリーズの企画会議を始めます」

司会役の女性が宣言し、その後出席者の紹介を行った。

「今回の総設定・脚本を担当される山田さん、宜しくお願いします」

俺は印刷されたレジュメに従って説明する事になる。立ち上がり、パワポをスクリーンに投影しながら説明を始める。

「え〜、仮称ですがタイトルを『最強戦隊カラーナイツ』と致します」

ざわざわ。

いきなりかよ。わかってるって、何が言いたいのか。

「静粛にお願いします。皆さん、違和感を持たれたと思います。それではタイトルにこめられた意味を説明させていただきます」

ざわつきが収まったので、俺は説明を続ける。

「近年のシリーズでは『◯◯戦隊✕✕ジャー』というタイトルが多くありました。更に◯◯と✕✕は同義でモチーフを強調するものです。わかりやすいのは確かなのですが、タイトルからもやっつけ感、マンネリ感の漂うものになるリスクがあります」

更に説明。

「シリーズ開始当初は必ずしも◯◯と✕✕はニアリーイコールではありませんでした。今回のタイトルは言わば原点回帰です。◯◯には戦隊が示すテーマを、✕✕にはモチーフを入れて、タイトルが表す情報量を倍増させます。本作品は最強を目指す戦隊であり、モチーフは『騎士』です」

お偉いさんの好みそうなキーワードを入れながら、説明した。

「最強の戦隊にしては、少々力強さに欠けるタイトルではないかね」

はーい、引っかかった♪俺はほくそ笑んだ。

「最強の戦隊ではありません。最強を目指す戦隊です。タイトル末尾の『ジャー』を採らない事でマンネリ感を排する事が出来ます。騎士には騎士道があり、見た目や名前だけの強さを求めるものではありません。だから敢えてタイトル名から力強さを感じさせる濁音を外して命名しております。・・・もっともあくまでこれは仮称ですので、正式名称は要検討です」

「わかった。タイトルについては最後に決める事にしよう」

「・・・ありがとうございます。それでは次に番組の目標・狙い・テーマについて説明致します」

「今回の制作方針としましては、『シリーズ初の試みの連打で、次世代のスタンダード構築の端緒となる』です。視聴者にとって、『何が起こるかわからない予測不能の新戦隊』を目指します」

ざわざわざわ。またも動揺が走る。

「ご安心下さい。抑えるところはきちんと抑えておりますので。・・・話を戻します。戦隊シリーズとしては一作目より基本フレー厶は踏襲され、以降ロボットの登場、女性戦士の増員、追加戦士の登場等が定着化しております。しかしながら、近年の試みは定着化までは至っておりません。これもマンネリ感の一因と言えるでしょう。ですから、今作において、新しい試みを連打し、何がうけているかを分析し、次年度以降の礎としたい、言わば戦隊シリーズ百年の中興の祖となる作品にするつもりです」

間合いを設けたが質問はなかったので、説明を続ける。

「次にタイミングの良い強化策を実施します。番組開始が2月であった時代の名残である3クール目冒頭での追加戦士の登場を2クール冒頭に変更します。これにより追加戦士のロボットの登場は7月になり、夏休み商戦の目玉になります。同様に最強ロボットの登場は3クールの半ばにします。他にも玩具展開に関して要望がありましたら、遠慮なくおっしゃって下さい。また、定期的な会合の頻度を増やしたい、と思います」

「勿論、玩具を売る為の無理矢理な展開だと、視聴者に思われてはなりません。本作品はテーマに沿って全三部で構成されます。作品全体のテーマは『相互理解』です。子供の世界では『いじめ』は深刻な問題です。どうして相手の立場に立って考えられないのか?この番組を通じて、考えてもらうきっかけになればいいと思っております。第一部は『5人の仲間の相互理解』です。同じ様なコスチューム、ロボットを用いて戦う、たった5人の戦隊です。どうして仲違いしてしまうのか、真の仲間にはなれないのか、この問題を描きます。第二部は『追加戦士との相互理解』です。今回は追加戦士を2名から3名、投入したいと考えております。確立された組織・集団に新たに加入する困難さを描きます。特に言語によるコミュニケーションが困難な場合、相手をどう理解するのか、その課題を丁寧に描きます。第三部は『敵との相互理解』です。どうして敵は地球を征服しようとするのか。平和的な解決策はないのか。また地球も第三の道はないのか。その事を模索する展開となります」

「スタッフ・キャスティング等については、あらゆるファンを掬い上げ、推し活を支援します。最近は趣味が多様化され、ヒーローファン、特撮ファンだけをターゲットにした作品作りでは視聴者の獲得は困難です。また万人向けの作品を作っていては、誰にも刺さらない作品となる可能性があります。そこで従来のヒーロー・特撮といった領域だけでなく、アイドル、2.5次元、アニメ、ゲーム、ボカロ等隣接領域のファンを積極的に取りに行きたい、と思います」

「そんな事が出来るのかね?番組としての一体感なくなるのではないか?」

「大丈夫です。これは50年の歴史のある戦隊シリーズだからこそ出来るのです。戦隊シリーズのフォーマットは既に日本人のDNAとして定着しております。だから、何も言わなくても、それこそ阿吽の呼吸で我等の求めるものが作られるでしょう」

「ふうん、そんなものかね?」

「ええ、そんなものなのです。それから長年戦隊シリーズを支えてくれたヒーローファン・特撮ファンへ、プレゼントを贈ろうと思っております。皆さんもお聞きになられた事があるでしょう。いわゆる『特撮のお約束』『ヒーローあるある』です。具体例で説明しますと、『ヒーローが名乗っているとき、どうして敵は攻撃しないのか』という点について、『歌舞伎の舞台上で名乗りを上げる』展開を考えております。これは『歌舞伎における見栄』と同じ様式美であることの暗喩となります。他にも色々ありますので、それらを取り上げていきます」

「これらを基本方針として、スタッフ一同、4クール一年間を走り抜けたいと思います」

さあ、ここからが正念場。俺はパワポを次のシートに変える。

そこには主人公の5人の名前が書かれている。

ざわめきが起こる。

当然だろう。俺も予測していた。

そこには男性2名、女性3名の名前が書かれているのだから。


主人公

1.ホワイトナイト ジョージ上原

2.ブラックナイト 矢島健次郎

3.レッドナイト 巽磨意

4.ピンクナイト 道脇小百合

5.ブルーナイト 大城恵味


「皆さん、落ち着いて下さい。今からきちんと説明致します。戦隊の構成が男性2名、女性3名になっている意味に関して」

俺はペットボトルの水を一口飲んで、説明を続ける。

「この人員構成は少子高齢化社会に対応した変更であります。皆さん、小学校低学年だった頃の事を思い出して下さい。放課後、何人の友達と遊んでいましたか? 五人とか六人の友達と遊ぶ事も多かったのではないですか? それくらいの人数ならTVのヒーロー番組の『ごっこ遊び』も可能でしょう。翻って現代ではどうでしょうか? 放課後何人の子供が屋外で『ごっこ遊び』に興じる事が出来るでしょうか。二人、三人がせいぜいではないでしょうか。ごっこ遊びで男性戦士に欠員がいるのも、子供達にとっても面白いものではないでしょう。 -それに、戦隊シリーズのごっこ遊びには複数の男の子が、適役の一人の男の子をよってたかって、という構図になりがちです。これは、いじめにつながりかねません。ですから男性戦士は少ない方がいいのです。- おっと、話が脱線しましたね。以上により男性戦士減員の理由についてはわかっていただけたと思います。戦隊チームの人員5名につきましては、シリーズの根幹に関わる設定ですし、テーマである『相互理解』を表現するのに減員はふさわしくありません。よって女性戦士の増員となる訳です。それに、男の子は誰にも言いませんが、女の子の事が大好きなのです。魅力的な女性が3人もいれば、タイプの子はいるでしょう。また、女性戦士3名は思春期や大人になった特撮ファンへのサービスでありますし、自立した戦う女性の姿は女の子にとってロールモデルとなるでしょう。ですから、女性戦士の増員はマイナスにはなりません。寧ろプラスになることでしょう。と、私は確信しております」

俺は一気に言った。やれやれ男女比を3:2から2:3に変更するだけで、これだけの労力がかかるのか。

聞いて驚け。主人公のプロフィールを。ぶっ飛ぶぞ。



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