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習作短編集  作者: redrum
1/4

花の時計

三題話。

お題は懐中時計、歌、植物、お参り?

かなり無理矢理でしたー。

 ――神のもとへ召されるのです。何も恐れることなどありません。


 神殿に神官様の声が響く。

 神官様の後ろには白い女神像が立っている。柔らかそうな布と艶やかな花を纏っている女神様は、硬く白い大理石で出来ている。

 私は白い大理石が無駄に白すぎるのを、ただ眺めていた。

 玲瓏とした神官様の声は私の鼓膜を震わせるのに、その言葉が持つ意味は私の頭を素通りしていく。

 国中から集められた数十名の娘達。私と同じくらいの年頃の……。

 その中に居ることで少しだけ不安が薄れている自分がおかしくて、私は唇を歪めた。

 五十年前の大戦のおりに隣国がまいた毒のせいで、この国では植物が育たなくなった。人々は飢え、薄くなっていく大気に喉をかきむしった。

 なんとかならないかと研究が進められ、思ってもみない方向に解決した。

 まだ若い娘達に“種”を埋めるのだ。

 そうして私達は植物の苗床として生きる。私達は、もちろん親達も嘆き悲しんだが、結局尊い犠牲という事でかたはついた。

 その罪悪感や、恐怖から逃れるためには宗教にすがるしかなかったのだろうか。

 フロールシータ――娘達は植物化しその命を散らすのではなく、花の女神のもとへ召されるのだと。

 私から言わせればそれは詭弁でしかない。

 もう何も見る事も、聞く事も、触れる事もない世界へいくのに、そうやって自らに言い聞かせるしかないだけ。

 決して忌むべきことではなく、これは喜ぶべきことなのだと。

 もちろん苗床に適合しない娘もいる。彼女達はこれから恋をして、結婚して、子供を産んで……皆に看取られて死ぬ事が出来るのだ。

 そういう人の方が私は羨ましい。

 見習い神官の少年が私の前に座る娘に懐中時計を配っている。

 私も彼から受け取り、小さく「……ありがとう」と呟く。彼はもう小さな芽が出てきている私の指先を見てから、そっと目を伏せた。

 同じ村の、いつも一緒に遊んでいた少年。

 彼は私が最期の時を神殿で迎えると決まると、自ら神官になりたいと志願した。

 それを知って、ほんの少し、本当に少しだけ、私は気持ちが軽くなった。

 そしてまた逆に彼に植物化していく自分を見られるのを嫌だとも感じていた。

 

 神官様のどうでもよい話が続く中、私は少年が配ってくれた懐中時計を指でなぞる。

 美しい花の蕾を象った私の懐中時計はもうほころびかけていた。

 すすり泣く声の方を見ると、一人の少女の懐中時計は大輪の花を咲かせている。

 私達の残り時間を教えてくれる懐中時計。

 花弁の一枚、一枚が散る時に金属が触れあう高く澄んだ音を出す。

 それは美しい歌のようだという。

 最後の花弁が散った時、私は植物になり、もう話す事も笑う事もないだろう。

 少年がこちらを見つめている事に気づき、私は彼に微笑んだ。

 せめてあなたが思いだす私は――根がはり、蔦に絡まり、その皮膚を破って芽吹く最期の姿ではありませんように、と。

 プロット(?)を公開するという事でやったのですが、短編のためたいして書きませんでした。

 一応メモを公開。



〆切 23:40

   23:10までに書きあげ、最悪でも23:30、見直しに残り10分


衣替え 植物 交通事故 懐中時計 季節外れ 引越し すべった 裏表 お参り 歌 転校生 夜空 意外な一面


歌、懐中時計、植物、お参り……全部使う?


◆種書き

お参り?……神殿、懐中時計もらう、人生の時を刻む歌う時計

歌うのは花弁が落ちる時(ハナビラと書くか?)

フロールシータ=小さな花

植物とのハーフ、または植物化していく人類、女だけの奇病?

ぐるりと取り巻く花弁が落ちて行くごとに近づく植物化

神のもとへ行くのです、恐れる事はない

なぜ、恐れないのか。私は自分が植物になってしまうのが怖い。

何も考えず、動かず、何も見ず……そんな存在になってしまうのが恐ろしい。


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