転移してきた候補!
王都エンヴィレアの中央広場には、今日も多くの人が集まっていた。
年に一度の神託式――それは、女神様がこの世界の者たちに「職業」を授ける、運命の祭典。
「次の者、前へ!」
「はっ!」
列に並ぶ若者たちの緊張感と、広場を取り囲む市民たちの期待が入り混じる中、神殿の壇上に立つのはこの世界を統べる女神・アステリナ。
ただし――
「ふにゅ……えーっと、次は……『にんじん栽培士』? あれ? 『忍者』だったかしら?」
この女神、視力が絶望的に悪い。
目を細め、巻物を上下逆に見ながら職業を宣言する姿に、神殿の神官たちは何度も顔をしかめていた。
「神託がザルすぎる……」
「もはや運命じゃなくて、ギャンブルだな……」
そんな中、突如として、空が割れた。
「うわっ!? 何これ、空がッ――うおおお!?」
主人公――神崎陸、17歳。普通の高校生だった彼は、突如現れた魔法陣に吸い込まれ、異世界の地に立っていた。
「……あれ、俺……死んだのか?」
違う。これは「召喚」だった。
女神アステリナが、巻物に手をかざしながら言った。
「おお……ついに来たのね、異界の者よ……この世界の未来を変える存在が……!」
(なんか壮大なこと言ってる!?)
陸が唖然としている中、周囲の視線が注がれる。
「では、職業の神託を……」
「女神様、眼鏡をおつけください」
「あらっ、そうだったわね。最近、ちょっと視界がボヤけると思ったのよ〜」
キラッと光るフレーム。女神が眼鏡をかけた、その瞬間――
「見える! 世界が、ハッキリ見えるわ!!」
空気が変わった。
会場の誰もが、神聖な気配に息をのむ。
女神アステリナは高らかに宣言した。
「異界の者よ――お前に与える職業は……『魔王のペット』!!」
「……は?」
ざわっ
ざわざわっ
「魔王の……ペット……?」
「な、なんでそんなふざけた……!?」
――運命は、眼鏡をかけた瞬間から狂い始めたのだった。
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