今日は、主従逆転遊びをしましょう。
「……ねえ。グレン。予定が何もなくて、暇よね。この辺境は本当に出来ることが少ないわ」
紅茶の入ったカップを机においた私は、窓の外をぼんやりと眺めて言った。
そこにあるのは、貴族の社交シーズンの終わりを告げる、紅葉した葉が茂る落葉樹。それに、私たちはお父様の都合で、王都からそうそうに領地たる辺境へと戻って来ていた。
ああ……暇だわ。とても暇。ここは時間が流れるのが、遅過ぎるのよ。大して刺激がないせいかしら。
この辺境には、私と同じ年頃の貴族令嬢は居ない。気心の知れた友人は、皆王都に住んでいるのだ。
同じ年頃の女の子は居るけれど、身分が違えば話題も違う。なんなら向こうから色々と遠慮されてしまうので、出来れば同じ身分の貴族令嬢と遊びたい。
次の社交シーズンは冬の終わり、春が来てから。今はもう見えないほどに、遠い未来のように思えてしまう。
こうした田舎に住むことに不満があるわけではないけれど、私は家に篭もっているよりも、誰かと話すことに喜びを見出す社交的な性質なのだ。
「アデライザお嬢様は……確かに、そうかもしれませんね」
この自分はまったく暇ではないと言いたげに、つい数日前から我がジョプリング家に仕えることになった若き執事グレンは答えた。
彼はかなり背が高く前職は軍人で、鍛えられた大きな身体を持っていた。きらめく青い目には丸眼鏡を掛けていて、黒い髪はきっちりと後ろへ撫で付けている。
鋭さがある整った容貌に、ほがらかな笑みを浮かべるところなんて、ここ数日を共にしている居るけれど未だ見たことはない。
あまり……笑わない人なのかもしれない。
「……ねえ。今日はグレン、忙しいの?」
「今日は、そうでもございませんよ。このように、お嬢様のお傍に居る程度には暇にしております」
グレンは私の質問を聞いて、意図が不可解に思ったのか、首を傾げつつ答えた。
彼がこの邸に来てすぐの五日前ほど、お父様は広い領地の見回りをしに出て行った。つまり、新入り執事グレンは、残された私のお目付役をさせられているのだ。
我が家には既に二人の執事が居て、一番若い執事となったグレン。もしかしたら、最年長のベンジャミンが引退するため、彼が代わりにと雇われたのかもしれない。この前も腰を痛めたと数日休んでいたし。
お姉様たちは婚約者の元へと遊びに行っているし、まだ社交界デビューもしていない三人姉妹の一番下のお目付役にされてしまうなんて、なんだか可哀想。
だけど、それもこれも新入り執事たるグレンへ与えられた仕事なのだから、仕方ないわ。
「ねえ。グレン。今日は、私と遊びましょうよ」
良い暇つぶしを思いつき私が微笑みそう言った時、グレンは目に見えて嫌な表情をした。
「遊び……ですか?」
何歩か後ろへと後ずさりたいと、いわんばかりの仕草。私と彼の関係性を考えて、かろうじて、その場所に踏みとどまったということかしら?
気乗りしない彼を不満に思い、私は口を尖らせた。
「そうよ。良いでしょう? だって、時間が全く進まないもの!」
そうなの……だって、とっても暇なのだ。
異常に暇なのから、こうして、執事と遊ぶくらいしか時間潰しを思いつかない。
「アデライザお嬢様……あの」
目に見えて困った表情になったグレンに、私は微笑みを浮かべて言った。
「あら。グレン。別に良いのよ? ……貴方がどうしても離れねばならない時には、私はどこにだって行けるんだから」
暗に言うことを聞かないなら脱走を企てるぞと脅せば、グレンは額を押さえてはーっと大きく息をついた。
だって、ここに居るグレンの主な役割は、私の世話と監視だ。
他の家族だって居ないのに、社交デビューもまだの私がどこかへ脱走してしまったとなれば、執事の彼はたちまち仕事を失ってしまうことだろう。
我がジョプリング辺境伯家は、古い貴族で広い領地を持ち裕福なことでも知られている。我こそがと手を挙げる使用人候補もたくさん居るのだ。
そこに運良く雇われたのだから、仕事を失いたくないはずよ。
「……アデライザお嬢様。出来るだけご希望を叶えたく思いますが、僕の年齢を考慮に入れて、遊び方の選択をしていただけますか」
「ふふふ。良いわよ」
渋々頷いたグレン。もしかしたら、幼い子どものようにかくれんぼやおにごっこでもさせられると思ったのかしら? そんなわけないでしょう。
私はソファからサッと立ち上がり両手を腰に当てると、死んだ魚のような目になったグレンと向かい合った。
「あの……何をされます? アデライザお嬢様」
しばらく無言のままじっと見つめ合っていると、グレンは根負けしたのか私へ尋ねた。
私は彼がこれから、どういう役割をするべきかと考えていたのだ。
「あらあら。ちゃんと、遊び方は既に考えては居るのよ。貴方だって楽しめると思うわ」
私は自信満々に大きく頷いた。これは、幼い子ども同士のするような遊びでは決してないもの。
ここでもまだ胡乱げな眼差しを私に送るグレンは、渋々ながらも遊びに付き合ってくれるようだ。
「かしこまりました。どのように、遊ばれますか?」
「ええ。今日するのは、主従逆転ごっこよ!」
彼を指を差して言い放った私。思いもよらぬ言葉に呆気に取られたグレンは、驚き過ぎて動きが固まってしまったようだ。
ふふふ……グレンのこういう反応も、無理もないわ。
私もこんなことをしようなんて、普通であれば、決して思いつかなかったはずよ。
今日、王都に住む友人から作家の新刊でこういう遊びをしていて、楽しそうだったと書いてあったのだ。
けれど、両親の居る前で使用人と関係性交換など、決して許されるわけもないから残念だ……とも。
……そこで、私は気が付いた。
今ならば、私ならば、この遊び方を楽しむことが出来るわ……と。
お父様は領地の見回り。お母様は社交の事情で未だ王都。お姉様たちは婚約者の元。私はこの館に一人。
グレンはまだ若い執事で、三つほど年上なだけ。見たところ真面目で融通は利かず頭は固いけれど、他の二人よりも、こういう遊びに乗って来てくれそうだ。
ええ。鉄は熱いうちに打つべきだわ。やりたいことは、すぐにやるべきだもの。
「……あの、お嬢様。具体的に遊び方を説明してくださいますか? 僕には初耳の遊び方でして」
戸惑っているグレンはそう言い、私はそれもそうねと大きく頷いた。
「少しだけ、待ってくれる?」
私は机の上に置いていた友人キャサリンの手紙を開き、それを読み上げることにした。
「私たちの関係性を、交換するの。そうね。私が執事だとおかしいから、私はメイド……グレンは貴族のお坊ちゃまということにしましょう」
「アデライザお嬢様が、メイド……僕が貴族……?」
驚き過ぎて、目を白黒させたグレン。私はそんな彼を見て、楽しくなって頷いた。
これまでに慌てた様子なんて見せなかったから、なんだか新鮮だわ。
新入り執事だけれど、うちの邸で雇われたということは、これからも一緒に居るのよ! 仲良くなっていた方が、きっと良いと思うもの。
「はあ……僕はお坊ちゃまというより、成人した貴公子ということにしていただけません?」
とんでもない遊びに呆れているグレンから抗議が入り、私は彼の年齢的なものを考えて納得して頷いた。
確かに彼の年齢で『お坊ちゃま』と呼ばれるなんて、あまり考えられないもの。呼ぶとしたら母代わりに育ててくれた乳母くらいだわ。きっと。
「そうね。良いわ。確かに私もグレンのことをお坊ちゃまというのは、なんだか抵抗あるわ。グレン様にしましょう」
「僕の希望を聞き届けていただいて恐縮です。お嬢様」
恭しくグレンは胸に手をあてて、軽く礼をした。
まったく、大袈裟だわ。そんなことをしなくて良いのに。
「……遊びの期限はここから、三時間にしましょう。時間を決めておかないとね……夕食は流石に関係性交換は、出来ないもの」
そこで私は、壁掛け時計を見た。今は午後のお茶をしたばかりなので、二時少し前だ。だから、三時間後の夕方五時に終わろうと彼に持ちかけた。
誰かの目があるところで、主従交換なんてしてしまえば、お父様に大目玉を食らうことは間違いないもの。
私が期待して彼を見つめると、ふうっと息をついてグレンは頷いた。
「……かしこまりました」
「ね。これは、部屋の中だけよ。他の人に変に思われてもいけないでしょう……? だから、この遊びをしたことは、内緒にしてね。グレン」
「はい。かしこまりました。アデライザお嬢様」
私が唇に人差し指を当てると、グレンは苦笑いで頷いた。
「ねえ。グレン。私用のメイド服を、借りて来てちょうだい」
「お嬢様。今、なんと?」
グレンは驚いた表情で動きを止めて、私は早く早くと彼の体を扉の方向へと向けた。
「聞いていたでしょう? 私はメイドになるのよ! そうね。グレンはお父様の服を着れば良いのだわ。貴族らしくしてね」
「あの……二人の服も着替えてしまうのですか? 振りだけではなく」
グレンは微妙な表情になり、自分の腕を持っている私を見た。
「それはそうよ。形が大事だもの。だって、服もないのなら諦めるけれど、メイド服は新しい使用人用に余っているはずだし、お父様は今居ないし帰宅予定は先だから、服を拝借してもバレないと思うわ」
「……かしこまりました」
グレンは足早に出て行き、私は後頭部にリボンを付けていただけで流していた金髪を、ひとつにまとめることにした。
だって、慌ただしく仕事しているメイドが長い髪を流しているなんて、おかしいもの!
◇◆◇
「まあ……素敵よ。グレン。まるで、生粋の貴公子のようね」
「お褒め頂き光栄です。アデライザお嬢様も……良く似合われていますよ」
私は髪をまとめてメイド服、彼はきっちりとした濃紺のスーツを着ていた。
本当に素敵。良く似合っている。あまり立ち入ったことを聞くのも無粋だけど、元軍人のはずなのに立ち振る舞いも気品を感じるし、彼はどこかの跡継ぎではない貴族令息なのかもしれない。
あら……最近、お腹の出て来たお父様の服にしては、グレンの体に合っているようだけれど、もしかしたら、誰かの服を借りたのかもしれない。若い時のものかしら?
「これから、どうなさいます……?」
「敬語は禁止よ! あ……禁止でございます。グレン様」
私は時計を指さして、グレンへこの遊びが始まったことを伝えた。
グレンはそこでほっと息をつき、ソファへと腰掛け長い足を組んでいた。
私は慌てて先んじて彼が持って来てくれた手押し車に置かれた茶器に熱湯を淹れ、見様見真似でお茶を出す。
カチャンと茶器が鳴ってしまって、しまったと思ったけれど、グレンは無言で私の目を見るだけだった。
ほっと安心して息をつき、私は使用人がそうするように壁際へと戻った。
……そして、グレンはカップに口を寄せお茶を飲むと、何度か咳き込むと息をついた。
しまったわ。もしかしたら、味が濃かったのかもしれない。けれど、メイドに扮した私がグレンに話しかけることは許されない。
使用人の役目は雇い主である貴族からの問いかけや命令に答えるだけなのだ。
やがて、グレンは本棚に置かれていた本を手に取り、足を組んで読み始めた。
あら。なんだか、とっても絵になるわ……だって、グレンは少し見ただけでも美形だもの。融通の利かなそうな面がなければ、私だって好きになってしまうかもしれないわ……。
いえいえ。何を言っているの。いけないわ。
私は貴族なのだから、使用人と恋に落ちるなんて、あり得ないもの。
貴族と平民が恋をすれば、大体不幸になる。それは、歴史的に何度も何度も飽きるほどに繰り返された事実なのよ。
「アデライザ……」
「はい!」
壁際に控えていた私は名前を呼ばれたので、本を開いたままのグレンへと近寄った。
「何でございましょう。グレン様」
「アデライザはこのことについて、どう思う?」
グレンの手にある本のページには、穀物栽培に関して、ここ数年の研究資料が書かれていた。
「はい。穀物は温度の低い場所の方が、良く育ちます。気候に合わせた作物を育てることによって、収穫量は増えますし、領民たちは飢える可能性が少なくなります。領民が増えれば税収は増え、おのずと国王陛下は喜ばれるでしょう」
「この領地での具体的な対策としては、何をどうすれば良いと思う?」
「ジョプリング家の領地には、複雑な地形を持ち領地内でも寒暖差が大きく育ちやすい作物をこちらが指定することで、それぞれの土地に住む領民たちにも良い効果をもたらすと考えられます」
私は手を前に組んでそう言い、グレンはどう思うかと自分が聞いた癖に、驚いた表情を浮かべていた。
「……いや、良く勉強をしているな」
「グレン様はここに来て短いから私のお父様が、どれだけ教育熱心なのかを知らないですものね。貴族たるもの、国のために尽くせる人間になれが口癖ですもの」
私はグレンの言葉に肩を竦めた。
もっとも、本来ならば貴族令嬢にはこのような知識は、あまり必要ないのだ。
お父様は二人の兄二人の姉にも私と同じように厳しい教育を施し、彼らは王城で文官として若くして大出世したり、高位貴族に嫁いだりしているので、結果的に間違いではなかった。
「……それは、素晴らしい。なるほど。ジョプリング辺境伯は、聞きしに優るほど、まことに有能な人物だな」
グレンは納得したように、何度か頷いた。お父様は彼を雇ってすぐにこの邸を出たから、色々と知らなくても無理はない。
それにしても、雇い主のはずのお父様を、こんな風に評するなんて……グレンはとても演技が上手いわね。
「まあ……ありがとうございます。お父様も喜びますわ」
私は微笑みメイド服のスカートを持ち、カーテシーをした。
「ところで、アデライザ。君はこの国の王族について、何処まで知っている?」
貴族令息に扮したグレンは、私の貴族としての知識について、ここでテストをすることにでもしたらしい。
……別に構わないけれど、王族のことなんて、この国の人であれば誰でも知っているというのに。
「……はい。現国王陛下には、王子が三人、そして、姫が三人いらっしゃいます」
我が国は跡継ぎ問題も問題なく、今後も安泰だと思われる。だって、第三王子まで息子が居るのなら、兄二人に何かがあるということは、あまり考えられないもの。
「そうだな。王子の名前は知っているか?」
「はい。もちろんです……サミュエル様、リース様、グレン様です」
そういえば、グレンも第三王子と同じ名前だわ。王族が生まれた年に生まれた子は、彼らにあやかって同じ名前を付けることが多いから、グレンもきっとそういう流れで付けられたのだろう。
「……ああ。第三王子グレンなんだが、辺境伯などはとても務まらず、城で文官として働きたい息子二人がいる家と、縁談が持ち上がっているらしいな」
「あら……そうなのですか?」
私は驚いた。実は我がジョプリング辺境伯家も、頭脳派な兄二人は文官としてかなり出世していて、どちらかというと敵国を相手に国を守らねばならない軍人としての辺境伯には向いていない。
だから、兄たちの息子がある程度成長するまで父が辺境伯として頑張るしかないのかもしれないと、私は思っていたのだ。
「娘二人は既に婚約し、残るはデビュー前の三番目の末娘だが……辺境伯もおてんばで手を焼いているらしく、顔合わせ予定のお茶会にも、どこかへ遊びに行って出て来なかったとか……」
……その辺りから、私は『何かおかしい』と思い始めた。
待って……これって、我がジョプリング辺境伯家のことではない? グレンのこれまでの話を思い出せば、そうよ。
同じ名前の、二人のグレン……二人の兄、二人の姉。そして、おてんばな末娘。
それって、もしかしたら、この私のことかもしれない。
確かに王都に居る時に……王子様が出て来るような、改まった席なんて行きたくない……友だちと話していた方が楽しいと、馬車の行き先を勝手に変更して、父母の言いつけを破ったことがあったわ。
そして、グレンの、余裕ある態度……人を使い慣れた雰囲気。
もしかして、この人……。
「……あの、グレン……殿下? ですよね」
私は呼びかけに声が震えてしまった。
だって、王族との顔合わせに行かず、縁談があったグレン王子の顔をつぶしたことにならないかしら?
父母が縁談相手である私本人にそういう意図を言わなかったのは、そこでグレン殿下に私が気に入られなければ、立ち消えで終わってしまうだろうからだ。
臣下の娘たる私になんて、選択権があるわけがない。
それに、軍属だった第三王子の臣籍降下先に、跡継ぎ不在の辺境伯家なんて、あまりにも丁度良いかもしれない。
……冷たいものが背中に走っていった。
私……これまで、グレンのことを新入り執事として扱って来たわ。嘘でしょう……!
「おい。アデライザ。俺には散々、手を焼かせてくれたな。ようやく捕まえたぞ」
一人称と話し方が荒っぽく変わったことなんて、まったく気にならなかった。
縁談相手の王子様が執事に扮してまで、私に会いに来るなんて、誰が考えつくというの!?
「もっ……申し訳ありません……」
ここでも声が震えてしまった。これは、夢であって欲しいけれど、夢ではないもの!
遊びで私たちの関係性を交換しましょう……だなんて、既に交換されてしまった後だから、これで関係性の上下は元に戻っていたんだわ!
今は王族の第三王子様と、臣下たる辺境伯家の令嬢。
そもそも、これまでの貴族令嬢と執事の関係性が、逆だったのよ!
「もし、縁談を断るのなら本人に会ってからだと父から強く言われ、俺が身分を明かさぬままなら、断る理由となるボロも出すだろうと、仕方なく執事を演じていれば……少々元気の良いだけの、おしとやかなお嬢様ではないか。お茶を淹れるのは下手だが、勉強もよくしているようだ」
「そっ……それは」
閉じた本を持ち上げ急に悪い表情になったグレンのいいように、私は言葉を失ってしまった。
だとするならば、グレン殿下は私と会いに王都から離れて、この遠い辺境にまでわざわざやって来ていた。
すべては、お茶会から逃げた私に会うためだけに。
「ちなみに領地に来てから俺が身分を明かして訪ねれば、アデライザの母は『絶対に逃げ出します』と断言していたが、その通りなのか?」
「え……ええ……そうなってしまうと思います」
完全に理解されている母の言葉に、私は苦笑いしてしまった。
だって、王子様と結婚するという重圧になんて耐えられそうもない。会わずに済むなら済ませたいと、全力で逃げ出してしまったかもしれない。
「さて、ジョプリング辺境伯令嬢アデライザ。ようやく縁談相手と会って、どう思う?」
「びっ……びっくりしました!」
本当にそう思って居たので、素直な気持ちを言った。
「良し。わかった。結婚しよう」
「え!?」
グレンはスッと立ち上がり、動きを止めた私の手を取って甲に口を付けた。
「アデライザは面白い。まさか、この俺に主従逆転を言い出すとはな……もう一度、逆転遊びをしてみるか?」
「ぜっ……絶対に、嫌です!」
さっきまでまったくそんな素振りもない執事グレンだったはずの人は、自信満々の王子様グレンとなり……私はメイド服のままで、そんな彼に求婚されることになってしまった。
Fin
どうも最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
もし良かったら最後に評価お願い致します。
待鳥