悪鬼隊 VS 鬼人族
刹那、オーラの斬撃の裏に同速度でジュリが飛び込みながら剣で打ち込んで来た。ドルフは予期しない速さに驚きながらもジュリの打ち込みをかろうじて弾く。が、衝撃で後方に弾き飛ばされた。
「くっそ、衝撃波は囮で、本人が打ち込んで来るのが真打ちの二段構えってやつか」
「ふふ」
こりゃまずいな。余裕かましてる場合じゃねぇ、後先考えずに最初から全力で飛ばさないとこっちが死ぬ。ドルフが集中すると、オーラで大気がぱちぱちと鳴り始めた。そして、一気に身体強化に力を注ぐとジュリに向かって連撃を繰り出していく。ドルフが身体を捻って一回転しながらの剣撃を繰り出した瞬間から剣圧が一気に増していく。
「天衝!」
ジュリが冷静に衝撃を受け流しながら弾く。
ズドォォォォォン!!!
受け流したエネルギーが地面を大きく抉り、深い穴が出来た。なるほど、身体強化を限界まで上げた回転による力を乗せて、刃に込めたオーラを衝撃波としてぶつけて来たか。面白い戦い方をする。
ジュリがそう思っているとドルフはさらに、攻撃のスピードを増した。下段の構えから身体を沈み込ませる。そこから前に出した足が地面を抉るほどの力で踏み込むとドルフの姿が消え、一気にジュリの目の前に移動していた。
「連衝六連刃!」
打ち上げ、袈裟斬り、斬り上げ、薙ぐ、突き上げ、回転斬り、一撃一撃が先ほどの技と同じように重い連撃が六連。ジュリは今度は受け流したりせず真正面から全て受けていく。一撃受けるたびに爆発音のような音がするのは硬質オーラによる衝撃だ。
「チッ!これも全て受けきるか、マジでバケモンだなあんた」
「バケモンとは酷い言いぐさだな。どうだ?私が勝ったら私の配下にならないか?」
「バカバカしい。俺は旦那の部下だ」
「そうか、仕方がないな」
ジュリのオーラが急に膨れ上がるのを感じたドルフは咄嗟に距離を取る。自分で判断したのではない、直感的に危険だと、動物の本能のようなもので距離を取ったことにドルフ自身が驚いた。そして、そのことを自分で認識したときゾクッとする感覚と共に冷汗が流れる。
俺も旦那もオーラ量は常人より遥かに多い、だがこいつのは・・・・・・こいつのは違う。俺の知ってる次元を遥かに超えてやがる。
「おまえの技を見せてもらったが、真っすぐ過ぎて狙いがバレバレだ。私が手本を見せてやる」
「くっ・・・・・・」
ドルフはありったけのオーラを硬質化し前面に展開する。刹那、ジュリの姿が消えたかと思うと、ドンッ!という音がした。ドルフに見えたのはジュリの右足。それがジュリの踏み込みの足だった。ジュリは身体強化でドルフを遥かに上回る速さで突進をしながら踏み込んだ足で身体を捻りながらの回転斬りをドルフに浴びせる。
「なっ、俺と同じ技・・・・・・!?」
ギャリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!!!!
ジュリの刃とドルフの刃が接触した瞬間、金属と金属が摩擦する耳をつんざくような音が辺りに響いた。
おおおお、重いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!
接触したジュリの剣撃が青白い炎を伴いながらドルフの刃を摩擦熱で溶かしていく。ジュリの攻撃を硬質化したオーラと剣でドルフが耐えられたのは極僅かな時間だけだった。
ズッドォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!
ドルフはジュリの放った技の衝撃波により吹き飛ばされ、身体が吹っ飛んでいく衝撃で枝を何本もへし折りながら、遥か遠くの木に叩きつけらてしまった。
ふと気配を感じてジュリが振り返ると、パトスがアジルの首根っこを掴んでいる。既に気を失っているようで、手足がだらんと伸びきっている。既に向こうは決着がついているようだ。
「パトスさま、さっきの人間を回収してきます」
「はい、行ってらっしゃい」
バルトはドルフとアジルがあっという間にやられるのを見た途端、一目散に逃げだしていた。奥のほうに逃げ込んでいくと先ほどローレンツ軍から奪った糧食の手押し車が集めてあるところで、腰をかがめて身を隠す。
「なんだあいつら!人間じゃねぇ!化け物だ!」
ドルフ、アジル・・・・・・あいつらだってむちゃくちゃ強いはずだ。どうなってる!?あいつらが手も足も出ないなんてあるか?あり得ねぇだろ!さして暑くもないのに、汗が止まらない。なんだ、冷汗か、これ?
手押し車の陰に息を潜めて隠れていたバルトであったが、それがアダとなった。 糧食庫を焼かれ、兵糧の尽きた元野盗たちは目の前のエサに見事に食いつく。そして、わざわざ火薬の入った手押し車を自分たちの陣地まで運んでいったのだ。そこへ突然大量の火矢が飛んで来た。
「い、いったい何が?」
飛んで来た無数の火矢が手押し車に刺さると、しばらくして次々に大爆発を起こし始める。アルスは表面だけを糧食に見せかけ、手押し車の中に大量の火薬を仕掛けていた。糧食を守っていた兵諸共、バルトは炎と爆風のなかに消える。
そして、この立て続けに起きた爆発音によってルンデル軍は甚大な被害を出し、大混乱に陥った。
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