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鬼人族のちから

「確かに輸送隊だな。だけどこのタイミングはさすがにおかしくないか?」

ドルフは躊躇った。


「何言ってんだ?もう俺たち三日もほとんど何も食ってないんだぞ?」


「それはそうだが・・・・・・」


「俺たちだけならまだしも、兵士たちから不満が出てるんだぞ!」


「わかった。それならバートラムの旦那に報告をして・・・・・・」


「バートラム将軍に報告してたら逃しちまうだろうが!ローレンツ軍の近くまで来たら手は出せねぇぞ」


 バルトは女にしても食にしても、おおよそ欲に対して忠実な男である。マリアを見かけたときは殴られて制止させられた。今度は、目の前に輸送隊が通っているにも関わらずまた制止させられるわけにはいかない。


「そうは言っても、俺たちだけで勝手に動くわけには・・・・・・」


「そりゃ違うぞ?むしろここで俺たちが指を咥えて何もせずに見てたら、そっちのほうがマズイだろ!それに兵士たちは納得しねぇぞ?ただでさえ散々やられっぱなしなんだからよ」


 バルトの気迫に押されて抑え気味であったドルフも遂に折れた。


「・・・・・・まぁ、確かにな。んじゃ、いっちょやってみるか!」


「そうこなくちゃ!」


 ドルフとアジルは部隊を組み、森の中から密かに西に移動する。やがて、向こうからやって来る輸送隊に一斉に襲いかかると、輸送隊を警備していた兵士たちはあっという間に逃げ散った。


「よっしゃ!これで当面の糧食は確保出来たな!」


 ルンデル兵たちは奪った手押し車を急いで森の中に運んでいく。



※※※※※


 

「アルスさま、輸送隊を護衛していた兵たちから報告があって、先ほど糧食が奪われたみたいです」


「マリア、報告ありがとう。さすがは元野盗だね、こちらの思惑通り動いてくれた。さて、それじゃあそろそろ動くとしようか」


「アルスさま、いいでしょうか?」パトスとジュリが揃って進言したのはドルフとアジルのことだった。


「彼らは我々に任せてもらってもいいでしょうか?」


「任せる・・・・・・というと?」


「若いのになかなか見どころがあります。敵としておくには惜しいかと思いましてな」


 どうやら、彼らはふたりを捉えて仲間として加えたいとのことだった。パトスとジュリが彼らと相対したときに何か思う部分があったのだろう。アルスはそのまま任せることにした。


「よし、それじゃあ僕らも動くぞ。標的は奪われた糧食だ!」


 アルスは各隊に指示を出す。奪われた糧食はドルフ、アジルが陣取っている西側の陣であることが推測されるため、そこにパトス、ジュリを中心にギュンターとベルも参加させる。中央は、アルスを中心にフランツとマリアという布陣である。東側のリース将軍は出すぎないように牽制だけをかけてもらうことにした。


 作戦が決まるとアルスは西側から一気に攻め始めた。同時に、中央にはフランツとマリアを中心にアルス自身も出撃してルンデル軍に揺さぶりをかけていく。


 パトスとジュリ、ギュンターとベルは、森に潜むルンデル軍からの矢を集中させないために、ほぼ同時にそれぞれ違うルートから森に侵入していく。何度か戦うことによって相手の特徴を掴んだアルスの指示によるものだったが、射手は四つのルートから同時に入ってきた敵に対して狙いを定めることが出来ず分散してしまった。


 また、この四人が率いる隊は当初からいるアルス直属部隊のため魔素水に耐えられる部隊であったことも大きい。並みの兵と違い、身体強化を魔素水によって底上げされた部隊の突撃速度は速かった。あっという間に弓の包囲網を潜り抜け、ドルフとアジルの陣取る西側の陣まで迫った。


 先頭を走るパトスが叫んだ。


「いたぞ!」そこに合流してきたジュリが呼応する。


「パトスさま、私から仕掛けます!」


「任せた」


 ジュリは敵部隊の最前線にいる兵たちを全て一太刀で斬り倒していく。


「兄貴!ローレンツ軍がもうここまで攻めて来やがった!さっきの糧食を取り返しに来たに違いない!」


「来たか、バルト!おまえも来い」


「おうよ、返り討ちにしてやらぁ!」


 三人は兵を率いてアルス隊を迎え撃つ。目の前からはジュリが兵を斬り倒しながらジグザグに物凄い速度で迫って来ていた。


「あの女か!!!」ドルフが叫ぶ。


「兄貴!あれ!」アジルが指を差した方向を見ると叫び声を上げながらルンデル兵たちが吹き飛ばされているところだった。パトスが後方から衝撃波を飛ばしたのである。衝撃を受けたのは彼らだけではなかった。アルス隊と戦っているルンデル兵たちも同様である。元々野盗であった彼らには、魔素水を飲んで強化されているアルス直属部隊との戦いは地獄であった。


 彼らの身体強化もさることながら、一向に魔素が切れる様子もない。延々と苛烈な攻撃が続くのである。


 ルンデル兵たちがアルス直属部隊に苦戦している間にジュリとパトスはあっという間にドルフたちの目の前に斬り込んで来た。


「俺があの女を止める!おまえらは下がってろ!」ドルフが兵に向かって叫ぶとジュリが笑った。


「私を止めるって?面白いこと言うね。んじゃ、試させてもらうとするよ」


 ジュリが剣を構えるとオーラの色が濃くなっていく。


「ちっ、どうなってんだこの部隊!」


 ジュリが放ったオーラによる斬撃をドルフは剣で相殺した。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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