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ヴェルナーとアイネ

アルスは陣形を超攻撃的な陣に組み替える。アルス自身は後方で指揮を執り、フランツを先頭に鉾矢(ほうし)の陣(↑)を組み、リヒャルトの右翼部隊と戦っているヘルムート軍の横から斜めに突っ込んで行った。


 フランツはオーラを剣に集束させる。フランツの持つ剣に埋め込まれた結晶石が青い輝きを放ち始めた。フランツのオーラが高まると大気が圧縮され始める。


「エアバースト!吹っ飛べや!」


 剣を振るった刹那、圧縮された大気が爆風となってルンデル兵たちを遥か後方まで吹き飛ばす。フランツが剣を振るうたびに派手にルンデル兵が吹き飛んでいく様子はリヒャルトからも見て取れた。


 アルス隊が向かう先の兵が吹き飛んでいくのである、その様子は当然ヘルムートの目にも飛び込んで来た。


「なんだあれは!?」ヘルムートが叫んだのも、当然の反応だった。


「わかりませんっ!」


「どこの隊かすぐに調べろっ!」


 兵にそう命令しつつもヘルムートの脳裏にはくっきりと答えが出ていた。あんな真似が出来るのはアルトゥース王子の部隊しかいない、と。


「報告します!どうやらアルトゥース王子の部隊です!まっすぐにこちらに向かって来ています!」


鉾矢(ほうし)の陣(↑)か・・・・・・切り裂くには強いが、横は弱いはず。隊を編成し敵の左右から同時に攻めるぞ!リッカールト、アイネ、おまえたちは反対側から回り込んで攻めよ!」


「はっ!」「はい」


 ヘルムートが隊を引き連れ、アルス隊の左側から突っ込むとベルが陣から一部を引き連れ飛び出して来た。鬼!?あれか、オイゲンを襲撃したというのは。そうであるなら相当の手練れと見るべきだ。


「させませんよっ!」ベルが剣を抜き放つと馬でヘルムートめがけて突進してくる。

 

 ヘルムートは油断せず、槍を脇に抱え最小限の動きで相手に対応出来るように態勢を整えると同じくベルめがけて突進した。ふたりが交差する刹那、ヘルムートの槍がベルの胸を貫いたかに見えたが、ベルはギリギリでヘルムートの槍をかわし剣を持ったまま相手に突撃してヘルムートを馬上から突き落とした。


 落ちた瞬間、ヘルムートは頭を強く打って目の前に火花が散ったように見えた。脳震盪を起こし動けなくなったヘルムートをベルは軽々と担ぎ上げる。ベルが引き連れた兵たちが、牽制している間に馬に飛び乗りヘルムートを連れて陣に戻ったのである。


 一方、リッカールトとアイネはそれぞれ隊を率いてヘルムートとは逆側からアルス隊の横腹を突く。ヴェルナーはアルス隊の横から矢のように突撃してくる2つの隊に目を凝らしていた。


 先頭を走るのはふたりの騎兵である。一人は男、もう一人は銀髪の少女。アイネだ!遠目からだったがヴェルナーは確信した。ギュンターが迎撃のために出て行こうとしたがヴェルナーが止めた。


「俺が行く!」ギュンターが驚いた顔でヴェルナーを見ていたがもう一度ヴェルナーが叫ぶ。


「頼む!俺に行かせてくれ」


「あ、ああ、わかった」


「すまん、ありがとう」


 それだけ言うと、ヴェルナーは単騎で飛び出す。慌ててギュンターが指示を出し、彼が引き連れるつもりだった隊をヴェルナーに付いて行かせた。ヴェルナーが近づいていくと銀髪の少女の顔がハッキリと見えた。


「アイネ!」ヴェルナーが大声で叫ぶと彼女も気づいたようだった。


「え、ヴェルナー!?」


「そうだ、話を聞いてくれ!」


 アイネは馬の速度を緩めた。その様子を見てリッカールトは激怒した。


「アイネ!何やってる!?敵だぞ!殺せ!」


「待って、彼は敵じゃないよ!」


 アイネがヴェルナーの近くまで来てさらに馬の速度を緩めた。


「アイネ、会いたかった。すまない、俺は・・・・・・」


「ヴェルナー・・・・・・?」


「アイネ、頼む、俺と来てくれないか?」


「え?」


「俺たちが戦ってる本当の敵はルンデルじゃない」


「でも、あなたは・・・・・・」


「素性を隠しててすまなかった。俺はアルス、アルトゥース殿下の兵士だ。だが、あの時言った気持ちは本当だ。俺は・・・・・・!?」


 ヴェルナーが話を続けようとした瞬間、アイネの様子を見てブチ切れたリッカールトが突っ込んで来た。


「アイネ、きっさまぁぁぁ!裏切ったなあ!」


 そう言いつつ、リッカールトは槍をアイネの背後から投げた。さすがはコーネリアス将軍の護衛をしていた男である。リッカールトが魔素によって高めた身体能力は常人を遥かに超えていた。ヴェルナーが気付いた時には、投擲された槍は唸りを上げながらアイネの背中に迫っていた。


「危ない!」ヴェルナーは馬上から飛び出しアイネを横に押し出した。


「ぐっ・・・・・・!」


 咄嗟にヴェルナー自身も身体を捻ったがアイネをかばった分、反応が遅れ、槍がヴェルナーの脇腹を抉る。そのまま槍はヴェルナーの脇を突き抜け、後方にいた馬の首を貫通し、馬ごと兵士の腹を貫いてしまった。兵士は何が起こったのかわからないといった表情をしながら、自分の腹に空いた穴を見つめ馬と共にその場に倒れた。


「え?」


 状況が理解出来ないアイネだったが、ヴェルナーの脇腹の傷で理解した。あたしを守るために・・・・・・?


「俺たちの敵は三大ギルドのはずだ。俺はおまえとは戦いたくないんだ。待ってろ」


 そう言うと、ヴェルナーは痛む脇腹を抱え、自分の馬に飛び乗った。


「アイネ、俺の後ろにいるんだ」


 そう言うとヴェルナーは迫りくるリッカールトの前に馬を進めた。


「アイネェェェェェ!!貴様もろともそいつと死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


 リッカールトは剣を抜くとヴェルナーに馬ごと体当たりをした瞬間にリッカールトはヴェルナーの乗馬を斬りつけた。バランスを崩した馬と馬がぶつかり合う。


 ヴェルナーの馬が負傷したのを見て乗馬が無理だと判断したヴェルナーは馬を飛び降りた。その瞬間を狙ってリッカールトは剣を打ち込む。着地した瞬間、痛みが襲いヴェルナーの脇腹から出血し血が滲んだ。


「なかなか良い判断だな」


「・・・・・・!?」


「味方ごと殺そうとする狂った奴のくせに、戦いの判断はなかなか良いと言ったんだ」


「貴様のせいだろうがぁぁぁぁ!」


 リッカールトはヴェルナーが着地して痛みに顔を歪めた瞬間に無数の鋭い斬撃を馬上からヴェルナーに向かって放った。


「ダメ!ヴェルナー、やめて!そいつには敵わないよ!」


「大丈夫だ、黙って見てろ」


 そう言うとヴェルナーはリッカールトの剣撃を受け流しつつ莫大な量のオーラを放出し始める。それを見てアイネの表情は驚きに変わった。


「え・・・・・・嘘でしょ?」


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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