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覚醒したマリア 死闘再び

 アルスがしきりに川岸を気にしているのを見たマリアが声を掛けた。


「後軍はもう少しかかりそうですね」


「うん。僕らだけじゃこの数を相手にするには時間が掛かり過ぎるな」


「アルスさま!ここは我々が引き受けます!リヒャルト中将を救いに行ってください!」


「そうです!ここは俺たちで十分です」


「エルンスト、ヴェルナー・・・・・・すまない、ここは任せた!」


 アルスはそう言うと、その場の指揮をフランツに任せ、騎馬隊二百を引き連れ一気に中央軍に向かって走り出した。ふと気が付くと、いつの間にかアルスの隣にはマリアが並走していた。


「マリア!?」


「来ちゃいました!」


「ハハハ、ありがとう」


「お礼なんか。私だってアルスさまの護衛ぐらいは出来ますよ?」


「頼りにしてるよ」


 アルスが飛び出た直後、じっと様子を窺っていた男が動き出した。言わずと知れたゲルハルトである。


「見~つけた。おい、おまえらついてこい。楽しい楽しい王子狩りだ♪」


 ゲルハルトはコーネリアスより借り入れた騎馬隊百騎を引き連れアルスの背後から迫る。


「殿下!後方から新たな敵です!」兵士の叫びにアルスが振り向くと百騎ほどの敵が肉薄して来ていた。


「くそっ、こんな時に」


「アルスさま、私が行きます!」


「マリア・・・・・・頼む!」


「五十騎借りますね!」


「気を付けて!」


 アルスが声を掛けると、マリアは反転して隊の一部を引き連れゲルハルトに向かって行った。


「おいおいおい、なんとまぁ可愛い嬢ちゃんが隊長やってるじゃねぇか、世の中どうなってるんだろうねぇ」ゲルハルトは槍を握りしめるとマリアに向かって突進する。

 

 マリアがオーラを剣に集束させて斬撃を飛ばすとゲルハルトは瞬時に馬の速度を落としながら、斬撃を槍に集中させたオーラで相殺した。


「ヒュー、おっかねぇなぁ。とんだ手練れだわこりゃ。おい、嬢ちゃん、先日うちの左翼部隊を襲ったってのは嬢ちゃんとこの部隊かい?」


 ゲルハルトの問いには答えずに、マリアは連撃を繰り出す。


「チッ、だんまりかい。まぁいい、こっちも今は忙しいんでね。殺すにゃ惜しいが、そんなこと言ってられる場合じゃなさそうだな」


 ゲルハルトは表面上は軽口を叩いていたが、実際にはそれほどの余裕はなかった。それだけマリアの攻めは的確に相手の急所を突く攻撃ばかりだったからだ。一手でもミスれば確実に命を落とす、そう思わせるだけの速さだった。


 以前、ベルタスという傭兵隊長と戦ったときに死線を潜って学んだ実戦経験とカイカランガで得た膨大な魔素量による身体強化が、マリアの実力を爆発的に上げていた。


 ゲルハルトはオーラを身体強化に注ぎ込むと、槍の速度と威力は加速度的に上がっていく。ゲルハルトの使う特注の槍はハルバートに近い形状のため、突く、斬り倒す、引っ掛けるなど千変万化の攻め手が繰り出せる。


 ゲルハルトが薙ぐとマリアはそれに合わせて受け流す、突けば穂先を弾いて軌道を逸らす。


 この俺の槍を弾き返す奴がいるとは!ゲルハルトはマリアが軽々と自身の槍を弾き返すことに驚いた。


 ゲルハルトの槍は重い。ゲルハルト自身の膂力に加え魔素による身体強化を乗せた一撃は大概の相手なら一撃で鎧ごと粉砕してきた。彼の槍を受け止めようものなら相手の身体ごと吹き飛ばしてきたのだ。それをこの女騎士は受け流すだけでなく、弾き返す。


 一方でマリアの攻撃もゲルハルトは瞬時に反応し冷静に弾き返していく。攻防が瞬時に切り替わる中で、一瞬でも集中が切れれば互いに致命傷になる攻撃を繰り出す。

 

 ゲルハルトにとって槍は剣に対してリーチの点で優位であるはずだったが、マリアは膨大な魔素を体内で練り込み、通常攻撃に加え連続で斬撃をオーラに乗せて飛ばしてくる。彼女が魔素切れでも起こさない限り、この時点でリーチの優位性は既に無いに等しかった。


 こいつ、かわいい顔して化け物か!?いったいどんだけ体内に魔素を持ってやがる!?じわりじわりとゲルハルトの顔に焦りが生じて来ていた。


 ならばっ!ゲルハルトはマリア本人を狙う振りをして馬に向かって衝撃波を飛ばした。


 馬をっ!!!


 マリアの対応が一瞬遅れ、馬の脚が斬られた。その瞬間、マリアは馬の背から跳躍した。


「空中じゃ、逃げ場はねぇぜ?」


 ゲルハルトはマリアが跳躍した瞬間に全オーラを乗せた衝撃波をマリアに向かって放った。逃れたマリアにその衝撃派が直撃する刹那、マリアは剣にオーラを込める。柄にはめ込まれた結晶石が強烈な青白い輝きを放つと、剣で衝撃波を受け止める。そして、その勢いを利用して回転しながらさらに高く跳んだ。


「なっ!?」


 マリアは空中でオーラを解放した。マリアの放つオーラによって周囲の温度が急速に冷えていき、雪が花のように舞い散る中に円錐状の氷柱つららが次から次へと無数に出現する。


 空中に氷!?なんだこりゃあ!?驚くゲルハルトを前にマリアは叫ぶ。


雪花氷結槍せっかひょうけつそう!」


 無数に現れた氷柱つららをオーラを込めた刃で突く、突く、突く!突かれた無数の氷柱つららはその衝撃で弾丸のように撃ち出され雨が降り注ぐようにゲルハルトを襲った。


「うっ、うおおおおおおおおおおおおおおーーーーーっ!!!!!!」


 ゲルハルトは全オーラを解放する。魔素が枯渇するほどの限界を超えた身体強化で、マリアの放つ氷の弾丸を弾き飛ばしていく。氷の弾丸のいくつかはゲルハルトの身体を貫通したが、それでも致命傷を避け最後の弾丸を弾き返しゲルハルトは防ぎ切った。


「ハ、ハハハ。俺の勝ちだ、空中じゃもう避けきれん・・・・・・!?う、や、槍が?動かん」


「フロストバインド」


「槍が凍ってやがる・・・・・・くそ、腕まで」


 マリアはそのまま凍り付いたゲルハルトの槍の穂先に着地すると、一言呟いた。


終わり(エンデ)


 そのまま凍り付いた槍の上を滑るようにしてゲルハルトに近づき首を刎ね飛ばした。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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