表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/182

リヒャルト騎馬隊 突撃!

次の日、ローレンツ軍は動いた。リヒャルトの提案が通り、オルターは騎馬隊を三隊に分ける。左翼千騎、右翼はアルス隊八百騎に加えフーゴ隊から二百騎、中央に千騎である。


 ほぼ壊滅状態であった左翼のナルーガ部隊には中央軍本隊から騎馬兵が補充された。渡河出来る両翼には騎馬兵の後ろに歩兵が続く。

 

 ローレンツが動くとルンデル側もそれに対応した。両翼にはそれぞれほぼ同数の騎兵が移動を開始する。その後に続いて歩兵が移動を開始したのだが、リヒャルトが驚いたのは相手左翼軍の対応である。相手のほぼ半数の軍勢がローレンツ軍右翼に対して動き始めたのだ。ルンデル軍の中央に残ったのは僅か三千である。


 これほど過剰に反応するとは・・・・・・!殿下の部隊の強さに気付いたのか!?いずれにしても今をおいてこれほどのチャンスはない。そう考えたリヒャルトは中央騎馬隊の前に馬を進め、演説を始めた。


「諸君っ!今この瞬間がこの戦において最大の好機である!」


 リヒャルトは騎士ひとりひとりの顔を見渡す。騎士たちはリヒャルトの次の言葉を待っていた。


「我々は偉大な王を亡くし、弱っていると思われてるだろう。先日、我々は相手の奇策に敗れた。しかしどうだ?敵はまともに我々と戦ったか!?我々は弱いのか!?違う!!!敵は奇策に頼ってるだけで、我々強兵とまともに戦うのが怖いのだ!今こそローレンツの精強さを存分に思い知らせてやろう!今、この瞬間!!この戦いの勝敗のカギを握るのは我々である!!!妻や幼い子供たちの顔を思い浮かべろ。我々は勝って彼らの元に帰るんだ、いいか、今日ここで勝つんだ!!!」


 リヒャルトは兵たちを鼓舞すると、最後に拳を突き上げ一言叫んだ。


「我が手に勝利を!!」


「「「「我が手に勝利を!!!!」」」」


 このリヒャルトの演説によってリヒャルト騎士部隊の士気は爆発的に上がった。そして、リヒャルトは右手で槍を掲げて叫ぶ。


「全軍、突撃ぃぃぃぃ!!!」


「おおおおおおおおおお!!!」という戦の咆哮と共に中央の騎馬兵たちは川に向かって決死の突撃を始めた。



 同時刻、両翼に展開したローレンツ軍も渡河した先でルンデル軍の騎馬兵とぶつかった。ここでアルス隊は無類の強さを発揮する。


 同数以上にいた相手騎馬兵は僅か二十分で潰走状態になった。アルスは挟撃するべく相手中央軍に向かって軍を進めようとしたが、ここで後ろに控えていた歩兵部隊に阻まれた。

 

「おいおい、なんだありゃ?」フランツが素っ頓狂な声を上げる。

 見ると、通常の歩兵部隊に混じって、三列もの盾兵で円陣を組み、その中央に射手を何重にも配置してある部隊が無数にある。


「コーネリアス将軍の策だろうね」


「妙な配置だな、どうする?」


「このまま黙って見てるわけにもいかないね。やってみよう」


「了解だ」フランツはニヤッと笑った。


 アルス隊はそのまま突撃をかけると歩兵部隊を蹴散らし始めた。フランツとガルダが先行し、盾兵による円陣部隊へ斬り込もうとすると無数の矢が飛んでくる。魔素を体内で練り上げ、衝撃波として飛ばすためには一旦防御に回すオーラを解除しないといけない。その隙を大量の矢で狙われるとさすがにフランツやガルダでも厳しかった。


「ちっ、ダメだ、オーラを練る暇を与えねぇつもりだな、こいつら!」


「ダメですな。衝撃波を飛ばす距離まで近づけませんな」


 ふたりの戦いを眺めていたパトスは、「ふむ」と一言漏らすと、馬に乗ったまま全力で円陣に向かって駆けて行く。


「なんだ、あの爺さん?俺らの戦いを見てなかったのか?」フランツが怪訝な顔で見ていると、パトスはフランツを見てニヤッと笑って、全力で馬を走らせたまま馬の背に立つと身体強化した力で跳躍した。


「は?」フランツとガルダの声が重なる。


 パトスに向かって大量の矢が射られるも全てパトスの硬化したオーラに弾き返されていく。そのままパトスは大きく弧を描いて円陣のど真ん中に着地すると、内側から一気に円陣を破壊した。


「はははっ!やるなぁ爺さん!」


「なるほどですな、我々も続きますか!」


「そうだなっ!」



※※※※※



 アルス隊が騎馬隊を蹴散らしている頃、リヒャルト率いる中央軍は敵兵の弓による苛烈な攻撃を盾で防ぎきり渡河に成功した。先行部隊が渡河に成功すると、橋頭保を築き次々と渡河をしていく。


 こうしてリヒャルトは中央の川を強行突破するとその勢いでルンデル軍本隊に向かって突撃した。リヒャルトによって士気の上がった中央軍は強かった。本隊に残っているのは歩兵部隊が中心であり、リヒャルトの騎馬部隊の勢いに陣形が崩され押されに押されていった。こうしてコーネリアス本隊は被害を出しつつ後退に後退を重ねていくことになる。

  

 そんななかコーネリアス本人は馬に跨りながら考え込んでいた。


「それにしても、儂の予測を超えてきおったわい。まさかあのタイミングで中央を強行突破してくるとは思わんかったのお。敵にも相当な知恵者がいるとみえるわい・・・・・・」


「くそっ、思った以上に敵の攻勢が強い!コーネリアス将軍!」


「ふぉっふぉ。わかっておるわい。勢いが強いというても敵も激流を渡河してきておる、そのうち疲れるわい。ほれ、もうちょいじゃ。中央の陣形を厚くしながら後退を続けるぞ」


「了解です!」


 ヘルムートはコーネリアス将軍の盾となり、両翼から中央にかけて陣形を厚くし、リヒャルト騎馬軍団の猛攻に耐えながらひたすら後退を続けた。



※※※※※※



 目の前の奇妙な部隊を攻略しているアルスの視界に入った時には、既に中央軍が遥かに押し込んでいた。その先には森が広がっており、ちょうど窪地のような形になっている。そこに向けてひたすらコーネリアス軍は後退しているのだ。


 あの場所はまずいっ!アルスがそう思った直後である。コーネリアス本隊の両脇から戦の咆哮が上がったかと思うと、森の中から敵軍が中央の騎馬隊を挟み込むようにして突撃したのだ。


 まさかと思ったけど、あんなところにまで伏兵を仕掛けているとは!コーネリアス将軍、恐ろしいほどの戦巧者だ。



挿絵(By みてみん)


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ