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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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ソフィアの提案

「先の戦では、ファニキアが勝利を収めましたが、我々はヘルセに何ら要求を突きつけるつもりはございません。むしろ、和平と共存の道を模索したいと願っておりますわ」


 ガイウス王の眉がわずかに動き、興味を引かれた様子を見せる。


「ほう、それは興味深い。では、ファニキアの提案とは何か?」


 ソフィアは一呼吸置き、言葉を丁寧に選んだ。


「我々は、捕虜としているティターノ軍団の軍団長、マーセラス将軍とピエトロ将軍を解放いたします。その代わり、ゴドアとの交易路としてヘルセを通過する許可をいただきたいです。また、通行税の一切を免除。さらに、交易路の安全を保障していただければ、両国にとって有益な関係が築けるかと存じます」


 ガイウス王の表情に、ほんの一瞬、安堵の色が浮かんだ。捕虜の解放は、ファニキアにとって大きな譲歩である。だが、すぐに彼の顔は曇った。


「交易路の解放と通行税の免除には同意しよう。だが、安全の保障については・・・・・・国民感情が、ファニキアに対して好ましくない状況にある。そなたも、ペルミエールでその片鱗を見たであろう?」


 ソフィアの脳裏に、ペルミエールの裏通りで見たビラの文言がよぎる。ルンデルとヘルセを争わせたのはファニキアだという、荒唐無稽な陰謀論。あのビラをばらまいたのは、三大ギルドの仕業に違いないなかった。彼女は内心で舌打ちしつつ、冷静に言葉を返す。


「国民感情の悪化は、承知しております。ですが、交易路の安全は、両国にとって利益をもたらすもの。陛下のご懸念は理解いたしますが、解決策を共に模索できればと存じますわ」


 ガイウス王は、玉座の上で身を乗り出し、渋い顔で答えた。


「そなたの言うことは分かる。だが、交易路の安全をヘルセが保障するとなれば、国民の不満がさらに高まるだろう。特に、マーセラス将軍は我が国の三傑の一人だ。彼を解放する代わりに、ファニキアの商人たちの護衛を務めろと命じれば、国民はどう感じると思う?」


 ソフィアは、ガイウス王の言葉に内心でため息をついた。この王は、国民感情に振り回されすぎている。決断力に欠け、戦の目的も曖昧なまま突き進んだ結果、ルンデルの南の街ラウナ・シュッツの住民は皆殺しにされ、ペルミエールの住民はかろうじて無事だったものの、国全体が疲弊している。このチグハグな方針の裏には、三大ギルドが国民感情を煽り、王を操っている可能性が高い。彼女は、その点を逆手に取る策を思いついた。


「陛下、では、こうしては如何でしょう?」


 ソフィアの声は、柔らかだが力強い響きを帯びていた。


「ファニキアの兵を交易路に常駐させ、その費用をヘルセにご負担いただくというのはどうでしょう?」


 ガイウス王の顔が一瞬、強張る。他国の兵が自国に駐留するなど、到底受け入れられる提案ではない。彼はゆっくりと首を振った。


「それはできぬ。ヘルセの民が、ファニキアの兵を受け入れるはずがない」


 ソフィアは、内心で微笑む。王の反応は予想通りだった。ここで、彼女は切り札を出す。


「では、別の提案を。捕虜としているマーセラス将軍とピエトロ将軍は、ヘルセの民から厚い信頼を得ております。どちらか、おひとりに、交易路の安全を保障する証人となっていただくのは如何でしょう? 彼らが名を連ねれば、国民の不信も和らぐはずです」


 ガイウス王の目が、わずかに見開かれた。


「ふむ・・・・・・それは、確かに一考に値する提案だ。だが、マーセラスやピエトロがそのような役割を請け負うかどうかは分からぬ」


 ソフィアは、穏やかな笑みを浮かべ、自信に満ちた声で答えた。


「大丈夫ですわ、陛下。必ずや、彼らはその役割を果たしてくれると信じております」


 ガイウス王は、しばし沈黙した後、ゆっくりと頷く。謁見の間には、静かな緊張感が漂い、ソフィアの言葉がその場を支配していた。彼女は、ガイウス王の曖昧な意志と三大ギルドの暗躍を見抜き、交易路を確保するための第一歩を踏み出したのだ。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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