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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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裏切り

「ダメだ、3隻が出て、1隻しか戻って来なかったそうだ」


「くそっ、軍は何やってんだ!」


「それにしたって、軍が弱すぎやしないか?」


 ディディが商人たちの輪に割って入り、「どうやら、ダメだったようだな?」と声をかけた。商人たちはディディの顔を見るや、深い溜め息をついた。


「ディディか。女連れとは良い身分だな」と、ひとりが嫌味を言う。


「嫌味はやめてくれ、俺だって当事者なんだ」とディディは軽く反論したが、商人たちの不満は収まらない。


「マハディに伝えてくれ。俺はしばらく船は出さん」


「俺もだ。爺さんによろしく言っとけ」


「こんな状況じゃ、当分無理だ。俺もしばらく休む」


 商人たちは暗い顔で口々にそう言い、肩を落として商会を後にした。ディディは振り返り、申し訳なさそうにニナに頭を下げた。


「残念な結果になってしまって、申し訳ないです」


「いえ、あなたのせいではありません」とニナは冷静に答えた。



 ディディは少し間を置き、声を潜めてニナに囁いた。


「ここだけの話ですが、もしよろしければ、ファニキア王国の石灰は私が輸出致しましょうか?」


「えっ!?」ニナの声が思わず上がる。


「シーッ、声を落としてください」


 ディディは唇に指を当て、周囲をそれとなく確認してから話を続けた。


「実はこう見えて、私はこの辺りの海流の流れに詳しいのです。海賊の動きも独自に調べたところ、時間帯によって出没する海域と、そうでない海域があることに気づきました。そこをうまく使えば、石灰を安全に運び出せると思うのです。どうですか?」


「それはありがたいのですが・・・・・・そのことをご存知なら、他の困っている商人にも知らせてあげないのですか?」


 ニナの声には、疑念が滲む。


「それを他の商人に知らせたら、瞬く間に情報が広まり、みんなが使い始めます。それでは意味がありませんよ」とディディは狡猾な笑みを浮かべた。


「確かに、そうですね・・・・・・」


「如何でしょう? ファニキア王国の必要としている石灰を、私にお任せいただけませんか? お返事はすぐでなくとも結構です。是非、考えておいてください」


 ディディは丁寧に一礼し、軽やかな足取りで来た道を戻っていった。


 マジェラン商会の入り口で、ディディの後ろ姿を見送った後、ニナとサシャは奥の部屋にいるナディムに再会した。ナディムはふたりの姿を見つけると、軽く手を挙げて挨拶した。


「もう聞いたかもしれんが、海賊を討伐するはずの軍が、あべこべにやられちまった」


「どんな感じでやられちゃったの?」


 サシャがストレートに尋ねる。 ナディムは目を細め、ゆっくりと話し始めた。


「軍は交易船を装って、偽装した木箱を積んで出航した。バリワンガ近海、サンゴ礁と岩礁の海域でラフマトを誘き出す計画だった。だが、突然、岩礁の影から海賊船5隻が飛び出してきたんだ。バリスタで軍船の帆を射抜かれ、投網で舵手を絡め取られた。そのうち軍船1隻が岩礁に座礁、残りは風で流されて混乱してる間に海賊船に接舷されちまった」


「岩礁の影から飛び出したってことは、海賊船は小さかったの?」


 サシャが首を傾げて尋ねた。


「ああ。ラフマトの指導かもしれんが、小さい船の方が小回りが利く。常に5~10隻で襲ってくるから、軍の中型船じゃ狙いもつけにくい。接舷された後は、やりたい放題さ。結果は軍船1隻座礁、2隻損傷で撤退。お粗末なもんだね」ナディムは渋い顔で吐き捨てるように言った。


「あの、すみません」とニナが口を挟んだ。サシャとナディムの会話を聞きながら、彼女の頭にある疑問が浮かんでいた。


「私は軍略や海のことには詳しくないんですが・・・・・・」彼女は少し躊躇いながらも、言葉を続けた。「先ほど、ナディムさんが『軍は海賊船を誘い込む』計画だったと言いました。でも、海賊船は『岩礁の影から飛び出した』と。なんだか、その部分が引っかかるんですが・・・・・・」


 ナディムの目が一瞬鋭くなり、手のひらで顎を撫でながら床を見つめた。


「おまえさんの言う通りだ。昨日も話したが、海賊船を指揮してるラフマトは、元はウチの商会の船長だった男だ。こんなことは言いたくないし、考えたくもないんだが・・・・・・ラフマトに情報を売り渡してる奴がいるかもしれん」


「それって、商人たちのなかに裏切者がいるってこと!?」


 サシャが目を丸くする。 ナディムは目線を下に落としたまま、拳をぎゅっと握りしめた。だが、すぐに打ち消すように笑い、声を明るくした。


「いや、さっきの話は忘れてくれ。どうにも悪い方向に考えがちになってしまっていかんな。老人の戯言だ、気にせんで欲しい」


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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