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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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ペシミール商人 ディディ・ハディ

「ここは、さまざまな商会が運営する商会館で、宿泊施設として使われてるみたいですわ」


「うーん・・・・・・」


「フランツさま、どうしましたか?」


 ソフィアは、商館を見て首を捻るフランツを見て尋ねる。


「いや、なんかさ。建物は立派だし、ケチをつける気も無いけど・・・・・・。今回の対応って、ゴドアの時より酷くないか?」


 ソフィアはフランツの反応を見てクスっと笑った。


「フランツさまの仰る通りですわ。本来、使節を迎えるなら、公爵のゲストハウスなどで迎えるのが通例です。もちろん例外もありますが・・・・・・。今回は、ちょっと厳しいかもしれません」


 フランツは複雑な表情でソフィアを見ていると、コレットが感嘆の声を上げる。


「すごーい、これ蜂蜜酒だ!あ、お部屋にお菓子がある」


 いつの間にかコレットが部屋に先に入っていた。


 ソフィアは最上階の豪華な個室に案内された。絹の寝具、香木の机、窓辺にはロアールの蜂蜜酒と帝国製の茶菓子が並ぶ。商会館の横には運河が流れており、川のきらめきと商品を運ぶ船の往来が目を引いた。


 フランツ、コレット、ジュリ、ガルダ、パトスは共用スペースに宿泊し、帝国やゴドア、ハイデの商人たちの情報交換の場に身を置く。共用スペースは、交易の中心地らしく喧騒に満ち、ギルドの影響力が漂っている。


「パトスさんは、良い豆が見つかりましたか?」


 コレットが尋ねると、パトスはにっこりしながら頷いた。


「おかげさまで、帝国産の良いコーヒー豆が手に入りました。これだけでも良いのですが、ゴドア産のものとブレンドしてみようかと思ってます。エミール殿が戻って来たら、ぜひ飲んで頂こうと思ってます」


 パトスの言葉にガルダの表情が一瞬曇り、コレットは微笑んだ。


「うん!それなら、お兄ちゃんが帰って来た時に、パトスさんのコーヒーに合うお菓子でも作ろうかな」


「それは楽しみですね」


「コレット殿・・・・・・」


 ガルダが呟くと、コレットは明るく返した。


「ガルダさん、気にしないでいいよ。お兄ちゃんは無事だったんだし、みんな一生懸命やってるんだから」


 その一言で、ガルダは思わず頭を下げた。コレットはガルダから事情を聞いた時も、ガルダを責めることはしなかった。ガルダが責任を感じる必要はないと言って、逆に励まされたのだ。


「ところで、ソフィア殿のほうはどうでしたか?上手くいきましたか?」


 パトスに尋ねられると、ソフィアは苦笑いで首を振った。


「あまり上手くはいかないみたいです。恐らく先方は、交渉のテーブルに着くつもりはないかと思いますわ」


「こっちは公爵と直接対話出来るかと思ってたら、執事が出て来やがった。バカにしてるぜ」


 ソフィアに次いで、フランツが不満をぶちまける。


「失礼ですが、あなた方はファニキアの方々ですか?」


 フランツの後ろに座っていた男が、振り返って唐突に話しかけた。色黒で焼けた肌はゴドア人を思わせるが、ゴドアとは衣装が異なっている。


「誰だ、おまえ?」


 フランツが男の挙動に注意しながら尋ねる。その視線に気付いた男は笑顔を振りまきながら、言葉を繕った。


「いきなり不躾でしたね。申し訳ございません。私は商人のディディ・ハディと申します。ついお話が耳に入ったものですから、気になりまして。ついでに自分の商売の足しになれば、と」


 ディディの本音丸出しの語り口に、毒気を抜かれたフランツは、思わず吹き出した。それを見てソフィアが彼の最初の質問に答える。


「仰る通り、私はファニキア王国のソフィア・フォン・バウアと申しますわ」


「おお、やはり!」


「どうして、我々がファニキア王国の者だと、わかったんですかな?」


 ガルダの質問にディディは少し笑いながら答えた。


「それは、先ほどのやり取りからです。まずひとつは、公爵さまと会える人間は限られます。そうなれば、耳ざとい商人の間に、噂のひとつやふたつ流れるというものです。それと、先ほどそちらのお嬢さま——ソフィアさまが、会談について明快に答えておられました。それが、ふたつ目です」


「ひとつ目はなんとなくわかるが、ふたつ目がなんでファニキアと繋がるんだ?」


「もちろん、繋がります。国を代表する使者でこんなに若くて可愛らしい方は、ファニキア以外いませんからね」


 フランツの質問に答えながら、ディディはソフィアにウインクする。キザな野郎だと思いながら、フランツはさらに質問を続けた。


「なるほど。それで、おまえと会話することでこっちには何か利益があるのか?」


「それは、まだわかりませんが・・・・・・。ちなみに、どんなものをファニキアは取り扱うのですか?」


「ガラスですわ」


 ソフィアの答えに、ディディは驚いた反応を見せた。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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