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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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王の帰還2

 酒宴は深夜まで続き、杯が交錯するたびに笑い声が石壁にこだまする。夜風が窓から流れ込み、松明の炎を揺らす中、戦の傷を酒で洗い流そうとする彼らの顔には、勝利の歓喜と、失った仲間への静かな哀しみが交錯していた。



 翌日の昼過ぎ、ようやく目を覚ました彼らは、ゴットハルトの主導で会議室に集まった。酒の席では話せない、戦の裏に潜む存在について語るためだ。参加したのは、アルス、アンリ、ミラ。陽光が窓から差し込み、木漏れ日が揺れる会議室は、静かな緊張に包まれていた。


 ゴットハルトが、戦直前に起きた不可解な出来事を彼らに語った。ゴットハルトが語り終わると、ミラが、低く唸る。


「突然の火災に、伯爵の死。やはりの・・・・・・何かしらの裏があると思ってはおったんじゃが、やはり、この戦は仕組まれたものとしか思えんの」


 アンリが、言葉の端に怒りを込めて続ける。


「すべて我が国がやったことになってるんです。陛下がこの国を建て直してる状況で、隣国に喧嘩を売るような余裕なんてあるわけないんですよ」


 その声には、ルンデルへの忠誠と、濡れ衣への憤りが響いている。アルスは、窓の外に広がる街の喧騒に目をやり、静かに呟いた。


「ヘルセがルンデルを打ち破れば、一番得をするのは・・・・・・三大ギルドだろうね」


 ゴットハルトは、伸び放題の髭を撫でながら、コーヒーを喉に流し込んだ。


「やっぱり、そういう結論になるか・・・・・・」


 彼の声には、疲れと諦念が混じる。アルスはさらに持論を展開した。


「ヘルセは、雨続きで糧食不足。いくら敵対しているとはいえ、こんな状況で隣国に攻め入るメリットが何も無いんだ。一方、ヘルセが勝てば、三大ギルドは再びルンデルに進出できる」


 ミラがアルスの言葉に頷き、言葉を継ぐ。


「それもそうじゃが。見せしめという効果もあるのかもしれんの。三大ギルドを追い出した国がどうなるのか?」


 アルスが、ふと戦場を思い出し、口を開いた。


「それと、今回戦った相手も気になる。僕が戦ったローグという相手は、邪眼一族だと言っていた。あれは、ヘルセとは軍の命令系統が別々だと思う。それに、将個人の武も軍略にも恐ろしく長けていたよ」


「邪眼族じゃと?」


「ミラは何か知ってるの?」


 アルスが穏やかに尋ねると、ミラは曖昧に頷いた。


「知っておるというか・・・・・・シャルから少し聞いたぐらいじゃがな。まさか、ここでその名前を聞くことになるとは思わなんだが・・・・・・」


「じゃあ、シャルは・・・・・・?」


 アルスが尋ねると、ミラは声を潜めた。


「いや、詳しいことは本人を交えて後で話すとしよう」


 アルスは黙って頷き、会議は戦後処理の話題に移った。ゴットハルトが、気になっていたことを口にする。


「そりゃそうと、戦後処理についてだが。俺らはヘルセに対して賠償請求をするつもりだが、大丈夫か?」


「ヘルセの状況を考えると、僕らまで賠償を求めても支払う能力を超える可能性がありそうだね」


「ああ、代わりと言っちゃあなんだが、捕虜の扱いはそちらに任せるってことでどうだ?」


 ゴットハルトの声には、ルンデルの復興への焦りが滲む。


「うん、それでいいよ。一番被害を被ったのはルンデルだし、当然の権利だと思う」


 アルスの落ち着いた答えに、ゴットハルトは小さく頷いた。


「すまんな。今後の復興のことを考えると、頭が痛くなりそうでな」



 アルスは、ゴットハルトたちとの会談を終え、ルンデルの王都レムシャイトを後にした。エミールは当面動けないため、ゴットハルトに託されている。帰り道、アルスは馬上でケルクの方角を眺めた。風が、森の木々を優しく揺らし、馬の蹄が土を踏む音が響く。


「アルスさま、あちらの方向に何かあるんですか?」


 ヴェルナーが、アルスの視線を追って尋ねた。アルスは、穏やかに笑って答える。


「今回の戦いで、助けてもらったカタリーナっていう女の子がいたんだ。お姉さんを探すって言ってたけど、無事に見つかったかなと思って・・・・・・」


「なるほど・・・・・・無事に見つかってるといいですね」


 ヴェルナーの声には、優しさが滲む。いつの間にか、アイネとフランツがヴェルナーの隣に馬を並べていた。


「そりゃそうと……あたしとヴェルナーって、今回ほとんどなんにもしてないよね?」


 アイネが、軽く拗ねたように言う。それを聞いてフランツが、苦虫を嚙み潰したような顔で舌打ちした。


 「おまえらは、それぐらいでいいんだよ。そんなに毎回活躍されたら、俺の立場がねぇわ」


「あはは!フランツは前回お休みだったもんね。」


 アイネの明るい笑い声が、森の小道に響く。


「フランツ、話は聞いたぞ。おまえ、むやみに突っ込まなかったらしいじゃないか?」


 ヴェルナーが、からかうように言う。


「ケッ、どっかの誰かに嫌味を散々言われたせいかもな・・・・・・」


 フランツがヴェルナーを睨み返しながら答えると、アルスとアイネが笑った。


「士官学校でもそうだったけど、フランツは用兵能力が元々高いんだ。だから、後は戦術眼さえ養えばもっともっと成長できるよ。」


「くそっ。おまえにゃ、集団戦闘で一度も勝てなかった理由が今はよくわかるな。マーセラスって奴は本当にやりにくい相手だったしな。」


「そういう意味では、今回の戦いはフランツにとって勉強になったんじゃない?」


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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