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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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衝撃のエミール

「なんだ!?」


 イルマが思わず呟くと同時に、兵士たちの悲鳴が周囲から上がる。木に隠れて正面を窺っていたら、頭上や背後から矢が突き刺さる。堪らず、飛び出して逃げようとすれば、今度は正面から矢が飛んで来る。


 ローグ精鋭兵たちは阿鼻叫喚の地獄に落とされるが如く、悲鳴を上げながら何も出来ずにバタバタと倒れていくのだった。アルスが言っていた、エミール精鋭の弓隊だから出来る陣形。敢えて不利な地形である森林地帯を縦の空間をも利用することで、立体的な防衛陣を築いたのだ。


 もちろん、兵を率いるイルマにも例外なく頭上から矢が降り注ぐ。黒衣の騎士であるイルマは、その超身体能力で避け続けた。だが、無数に降って来る矢の雨のなかに、一本だけ異質な矢が混じっていることにイルマは気付く。


 青い光を放つ矢じりは美しい輝きを放ちながら、イルマに迫った。それを弾き飛ばそうとして、剣を振るったイルマだったが、なんとなく嫌な予感がして途中で止める。身体を捻って避けた瞬間、青い矢じりが爆発した。反射的にオーラでガードして防ぐものの、次から次へと青い光となってイルマに襲い掛かる。それを、避けるたびに爆発が起きる。


「どうなってる!?」


 矢を避けつつ、周囲を見渡しながら、光る矢の出どころを探る。イルマの目は闇のなかで青く光る一瞬を見逃さなかった。


「そこっ!」


 瞬時に込めたオーラを刃先から弾き飛ばす。斬撃波はエミールの矢を斬り飛ばし、木々を切断した。次の瞬間、今度は別の方角から青い矢が飛ぶ。それを衝撃波で破壊すると、さらに別の方角から飛んで来る。


「ちょこまかとっ、バカのひとつ覚えみたいに!」


 イルマは四方八方から飛んで来る矢を避けつつ、青い矢じりだけを狙ってオーラを弾き飛ばす。だんだんと身体が慣れてきたころ、青い矢じりを衝撃波で相殺して避けた刹那、残り同時に5本の青い矢がイルマに迫っていた。


 咄嗟に衝撃波を放って3本を相殺するも、残り2本の矢じりが爆発する。爆風で吹き飛んだところに、さらに左肩を射抜かれた。今度は爆発ではなく、矢は木に刺さり肩ごと凍りつく。イルマは朦朧とする意識のなかで、ひとりの少年が弓を構えて降りて来るのを見た。


 (こんなガキに、私がやられたというのか・・・)


「勝負はつきました。降伏してください」


「・・・・・・わ、わかった。降伏する。許してくれ、君のお陰でようやく洗脳が解けた。私はローグという悪魔に洗脳されてたんだ」


「ローグ・・・?」


「邪眼族を知ってるか?奴らの血を飲むと洗脳されてしまう」


「どういうことですか?」


「私の目を見てくれ。目をみてくれればわかる」


 イルマは俯き加減にしていた顔を少し上げた。エミールが覗き込もうと近づいた瞬間、イルマの口角が僅かに上がった。


「騙されてはいけませんぞ!エミール殿!」


 ガルダの叫びが響く。刹那、イルマは、木に縫い付けられ氷漬けになった左腕を引きちぎり、右腕で剣を掴み取ると同時に衝撃波を放った。オーラと衝撃波による轟音が森林を揺るがす。イルマの放った衝撃波により、前方の木々は吹き飛び、エミールの姿も消えていた。


「おおおおおおおおおおおおっ!!!」


 ガルダは雄叫びと同時にありったけのオーラを戦斧に込め、イルマに叩き込んだ。暴風のような衝撃波がイルマを包み込む。黒衣に覆われた顔は、冷たく笑ったままガルダの放った衝撃波で消し飛んだ。ガルダは黒衣の騎士を倒して、すぐに衝撃波が飛んだ方に視線を送る。


「エミール殿!」


 ガルダの声は、まるで虚空の闇に消えるように、イルマの放った衝撃波の跡で地面と木がえぐり取られていた。鼓動が速まる。あの瞬間、声を掛けたとき、エミールは一瞬視線を外したように見えた。


 (もし、自分が声を掛けなかったら——余計なことをしてしまったのか・・・・・・?)


 ガルダの胸中を様々な想いがよぎる。感じるのは、エミールのオーラの残滓だけ・・・。


「・・・・・・残滓!?」


 ガルダは思わず呟く。ガルダは周囲を見渡し、エミールの微かな残滓を辿った。十数歩、足を進める。ガルダの足元には血だらけになったエミールの姿があった。


「エミール殿!?」


 駆け寄ってエミールに近づく。意識は無かったが、エミールは微かに呼吸をしていた。咄嗟にオーラを展開したに違いない。それでもエミールは、全身に深い傷を負っている重体だった。


「衛生兵! 早くエリクサーを!」


 ガルダは近くにいる衛生兵を呼び、エミールにエリクサーを飲ませるよう指示した。自分にできることは全てやった。彼が生き延びるかどうかは、エリクサーの効果と彼自身の生命力にかかっている。


「エミール殿・・・、すまなかった。私のせいで・・・」


 アルスに状況を報せ、中央の戦いに参戦するよう兵を動かすと、ガルダはそのままエミールの傍にへたり込む。既にローグの精鋭兵たちは敗走、ほとんどが討ち取られていた。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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