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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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逆撃!

 すぐ傍にいる兵士にアルスは命令する。


「1000騎引き連れて、僕は一旦後方に退くよ」


「え!?あ、はい!」


 兵士は混乱したような顔でアルスを見上げた。一度決断したアルスの行動は早かった。アルスは兵を引き連れ、既に後方へと馬を全速力で飛ばしていた。


「エミール!」


 森のなかに入って、異常事態にすぐに気付く。森の奥で剣戟を交わす音や叫び声が響いている。


「アルスさま!」


 アルスが叫んでいると、エミールが気付いて、走って来る。アルスはエミールの表情を見た瞬間に、核心を突いた問いを発する。


「背後から奇襲されたんだね?」


 エミールは驚いた表情を一瞬見せたが、「はい」と言って頷く。


「ガルダがなんとか食い止めてますが、不意を突かれた分苦戦しています」


「すまない、敵の方が上手だった」


「どうしたらいいでしょうか?」


 アルスは手短にエミールにこれから起こす行動を説明した。


「エミール、モード・アングレの布陣は覚えてるね?」


「はい。でも、ここは森のなか——」


「森林地帯でもエミールの弓隊なら、それが立体的に構築出来るはずだ」


 エミールはハッとして頷いた。エミールはアルスの発想の柔軟さに改めて驚かされた。窮地に遭っても、この方は盤面をひっくり返すようなことを思いつく。


「エミール、この1000騎を連れて戻ってくれ。前線はガルダに支えてもらって、その間に陣を敷いて欲しい。出来るだけ短時間で」


「やってみます!」



 エミールはアルスから託された1000騎を率いてガルダが戦ってる前線へと急ぐ。


 一方、ガルダの部隊はバラバラに戦っていたところを、ガルダの必死の呼びかけでまとまりつつあった。だが、それでも最初の一撃で8000いたガルダ、エミール部隊の半数近くの数が減らされてしまっている。弓隊も応戦しているが、指揮官不在のままでは効果的な反撃も出来ないままだった。そこに、エミールが1000騎を引き連れて突っ込んで行く。


「ガルダ!」


「エミール殿!その兵は!?」


「アルスさまからお借りしたんだよ」


「アルスさま直属の兵!?それは心強いですな!」


「ガルダ、僕は今から弓部隊を連れてモード・アングレを敷くよ。出来たら合図するから、それまでなんとか耐えて!」


「わかりましたぞ!」


 ガルダはアルス直属兵を加えて、ローグの精鋭兵に抵抗する。一方的だった流れが、魔素水によって強化された兵が投入されたことで瓦解しかかっていた部隊を支え始めた。


 その間に、エミールは急いで弓隊を連れて森の入り口付近まで戻り陣を敷く。弓隊をいくつもの部隊に分け、凸型に配置。その前に剣や矛や枝を地面に突きたてバリケードとした。


 さらに少数の歩兵部隊を弓部隊と交互に配置する。そして、エミール直属の精鋭弓隊は樹上で待機した。エミールは準備が出来ると、鏑矢を上げる。ピ――――っという鋭い音が森中に響き渡った。ガルダは鏑矢の音を聞くと、号令を出す。


「よしっ、撤退しますぞ!」


 ガルダの号令によって、一斉に兵は森の入り口——平野との境界線に向かって走って行く。敵に背を向けている状態のため、この撤退でも大きな犠牲が出た。それを承知でガルダはかがり火が煌々と焚かれてる場所へ走って行く。


 イルマ率いるローグの精鋭兵たちは、逃げて行くガルダの歩兵部隊を追撃することで、多大な損害を与えることに成功した。遂に、部隊が崩壊して蜘蛛の子を散らすように逃げて行くと勝利の確信をしていた。ガルダ隊は、エミールが弓隊を配置してある隣の、空いている空間に次々と収まっていく。歩兵部隊がエミールが敷いた陣へ合流するや否やエミールの号令が響いた。


「撃て!」


 追撃を仕掛けるローグ精鋭兵たちに、至近距離から大量の矢があらゆる方向から飛んで来る。凸型に配置された弓部隊の理由はここにあった。弓部隊が三角形の形に配置されているため、正面からだけでなく斜め方向にも狙いをつけることが出来るのである。つまり、敵側からすれば、立体的に矢がクロスしながら飛んで来ることになるのだ。単純に盾を構えて突進すれば、突破出来るというものではない。


 イルマは思わず舌打ちした。


 (あと、一歩というところで!・・・だが、こんなところでローグさまからお預かりした兵をここで失うわけにはいかない)


 沸騰しそうになる頭を振って、なんとか冷静さを取り戻したイルマは周囲の状況を観察する。正面にはいつの間にか築かれた奇妙な弓主体の陣。無理矢理突っ込めば、全滅する可能性がある。だが、それは平野や遮蔽物がない丘での戦いの場合だ。ここは森のなか。無数に立っている木々のおかげで、矢の射線を潰してくれる。冷静になれば、簡単なことだった。イルマはニヤッと笑うと、号令を出す。


「慌てるな、木の陰に隠れて距離を詰めろ!」


 イルマの指示でローグの精鋭兵たちは、無茶な突撃をせず木に身を隠しながらジリジリと進み始めた。木から木へ、少しずつ距離を詰めていく。やがて、ローグ精鋭兵たちは弓部隊の顔が見えるほどの距離に近づく。


(勝った!)


 イルマがそう思った瞬間、エミールの号令が響いた。


「総攻撃開始!」


 直後、ローグ精鋭兵たちの頭上や背後から矢の雨が降り注がれた。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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