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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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裏のさらに裏……

 その様子を見ていたローグは、驚愕した。


「まさか、ヴォルグを止められる者がいるとはな・・・・・・。向こうには思ったより相当な武人が揃っているということか」


 ローグはしばらく様子を見て、口を開いた。


「ゼルマ、右翼に突っ込んでくる武将が邪魔だ。排除して来い」


「はっ」


 ローグの隣には、今まで虚空だった空間に、より影の濃い人影が現れていた。


 直後、右翼でもオーラとオーラによる衝突が始まり、爆発音に続いて、凄まじい剣戟の音と火花が散り始める。ゼルマが相対したのはエルンストであり、アルス軍きっての至高の槍使いだった。


 ゼルマもまた、ヴォルグと同じように相手の力量に驚嘆することになる。だが結果的には、ヴォルグと同じように、アルス軍はエルンストによる個の突破力をゼルマによって抑え込まれた。


 その様子をじっとローグは見ていた。


(いったい、どうなってる・・・?新王国が、どうやってこれほどの武人を揃えたというのだ・・・?)


 呆気に取られながらも、ローグは独り言ちた。


「だが、そろそろ二本目の槍が届く頃か・・・・・・」





 ジザは手足を後ろ手に縛られたまま、アルス軍の後方の木に括り付けられていた。今までの自分の人生を振り返ってみれば、常に3大ギルドに振り回されているような気がしていた。


 もちろん、それは彼の禁忌に触れる欲望を再現した結果に過ぎない。兄の殺害をギルドに提案されたとき、彼は抗えない欲望を抱いた。その決断は彼の人生を縛り、親友を殺し、罪のない民衆を殺したのだ。


「フッ。これだけ殺しておいて、俺は、この戦いに勝った後を想像していた・・・・・・」


 ローグの作戦は、ジザの想像を遥かに上回るほどに洗練されていた。ラウナ・シュッツを落とした手際は、芸術のように彼には思えたのだ。


「その芸術を壊してしまった・・・・・・。私、自らの手で・・・・・・。今となってはどうでもいい。3大ギルドも、ローグも、貴様らに地獄の業火が降り注がんことを・・・!」


「ジザ・シルバティ」


 ジザは自分の名前を呼ばれて、不思議な気持ちで見上げた。自分の名前は言ってないはずだった。見上げると、そこには黒衣の騎士が立っている。ジザは、その騎士を見て悟った。


「私を殺しに来たのか?」


「3大ギルドにとって——いえ、ローグさまにとって、おまえは邪魔な存在となった」


「なぜだ?私がローグ殿の軍略を台無しにしたからか?」


 ジザの質問に黒衣の騎士は冷笑する。女性・・・なのか?それが、ジザがこの世で最期に思考したことだった。イルマの剣が一閃し、ジザの首が地面に転がった。彼女は血に濡れた剣を振るい、冷たく呟いた。


「愚かな男・・・。ローグさまの計画を台無しにした罪は重い」


 イルマは、前方にいるはずのアルス軍を睨んだ。


「さあ、本当の奇襲を始めるぞ!」


 黒衣の騎士——イルマが号令を掛けると、続々とローグ直下の精鋭5000がイルマに続く。ローグは奇襲作戦を実行する上で二段構えの戦術を取った。すなわち、アルス軍の近くの川を渡り横から奇襲する部隊。そして、その奇襲部隊すら囮にして、さらに西側の奥から渡河してアルス軍の背後から奇襲したのである。


 ローグは、アルスの偽装輸送隊が大量の煙を出した作戦を見て、南側の森に潜伏していることを見抜かれているかもしれないと考えた。実際、アルスはそれを狙って川を増水させ、最初の奇襲部隊を全滅させている。


 しかし、ローグはさらに後方から渡河させる部隊を、急遽、別に作ったのだ。それがイルマの部隊である。イルマ率いる奇襲部隊が最初に遭遇したのは、ガルダの歩兵隊だった。


 彼らは、川の奇襲部隊を殲滅させてアルス軍の本体に合流しようとしていた。殲滅したはずの敵が、まさか同じ森のなかから現れるなど予想出来るはずもない。気が緩んでいた彼らは、次々とイルマの部隊によって倒されていく。それに気付いたガルダが駆けつけ、勢いは多少落ちたが、戦う態勢が整ってない部隊は脆い。奇襲部隊に反撃の態勢が整わない内に数を減らしていった。


「ガルダ!」


「まずい、まずいですぞ!ここは、私がなんとか食い止めるので、エミール殿はアルスさまに報せてください!」


「わかった!無理はしないで!」


 エミールはそう言うと、全速力でアルスの下へと駆けて行く。伝令兵に任せることも考えたが、こんな状況なら身体強化をフルに使える人間のほうが遥かに速い。エミールは走る途中で、矢に魔素を込めて空に向かって撃ち込んだ。矢じりに取り付けられた結晶石が青白く輝くと、空中で派手に爆発四散する。


「アルスさま、気付いて!」




 エミールが打ち上げた矢の3度目の爆発音で、アルスは後方で何か異常事態が起こった事に直感で悟った。


(今のはエミールの矢——後方で何か起こってる!?敵の奇襲は撃退したと報告は来ていた・・・・・・。討ち漏らした?いや、それならエミールがわざわざ矢を打ち上げるのはおかしい。ひょっとして、別の敵・・・?いや、別の部隊か!敵は、僕が奇襲を阻止するのを見越して助攻と主攻を最初から分けていたなら・・・・・・!?)


 アルスは西の森を振り返り、レムルス川を見た。


「やられた!僕が想定していた渡河ポイントより、さらに西から渡河していたのか!」


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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