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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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分進合撃

「ヴォルグ、いるか?」


 ローグが名前を呼んだ瞬間、天幕の隅に黒い影が現れ濃くなり始める。見たこともない光景に思わずジザは後ずさりする。やがて、その影は人の姿を形どり黒衣の人間が現れた。


「はっ、ここに」


「おまえにやってもらいたいのは、5000の騎馬兵を率いて北に向かってもらいたい。騎馬の後ろには柴を括り付けろ」


「柴を馬の後ろに、ですか?」


「そうだ。土煙を立てることで、なるべく大軍が北の王都レムシャイトに向かってると思わせたい。ある程度行ったら、東に迂回しつつ森林地帯に入って再び戻って合流しろ」


「残りの兵と、ローグさまはどうされるのですか?」


「『分進合撃』を行う。俺は自軍の兵を率い、先に回り込む。シュトライトの南にも森林地帯がある。幸い、この森を抜けた先に渡河出来る場所があるらしい。夜間に侵入して1万の兵を伏せる。そのためにも5000の兵でなるべく敵の目を引き付けておけ。それと、ジザ」


 ローグはジザに明確に指示を出していく。


「おまえは残りの3万5000の兵を率いて、このまま森林地帯を抜けて横陣を敷け。ただし、5000のみだ。それ以外は、森で待機。ヴォルグはジザと合流したら、兵をジザに預けて俺と合流せよ」


「はっ」


 ヴォルグと呼ばれた黒騎士は、礼をして天幕を出る。それを見送るとローグは再びジザに向き直って説明を続けた。


「ジザ、俺は南の森に布陣する。ファニキア軍が北に向かう5000の囮に釣られて平原に出るようなら成功だ。ただし、旗の数は出来るだけ少なくして兵を少数に見せよ。あくまで本隊は、北のレムシャイトに向かったと思わせるんだ。それでも恐らく全軍では行かないはず、後軍を森のなかに潜ませてるはずだ。それを先に個別撃破する、何か動きがあったら俺に逐一報告しろ」


「わかりました」


「それともうひとつ。念のために、攻撃するときも1万の兵は森で待機させておけ」


 ローグはそう言い残すと、ローグ麾下の精兵1万を引き連れて先に移動をした。ヴォルグは騎馬兵5000を引き連れ、森を出る前にローグに言われた通り柴を馬の後ろに括り付けて、見せつけるようにして西を迂回しながら北へと向かう。柴による土煙が濛々と立ち昇り、遠目には数万の軍勢が北へと向かっているように見えた。




 アルス陣営は、アルスがシュトライトを訪れた当日を含め二日間、暇な時間を過ごした。三日目になって、ようやく斥候の報告から敵に動きが出たことがわかる。


「アルスさま、どうやら敵軍は北に向かってるようです」


「北へ・・・・・・!?数はどのくらい?」


「土煙が酷くはっきりしないようですが、遠目では数万に見えるとのことでした」


「どうやら、敵はここには向かってないみたいですね」


 エミールが感想を漏らす横で、アルスは地図に目を落とした。簡易的に作った机の上に戦略図がある。戦略図といっても、カタリーナが描いたような詳細な地図ではない。王都周辺のおおまかな位置が描かれたものだ。アルスは少し考えて口を開いた。


「やっぱり、どう考えてもおかしい。というか、敵が全軍で向かったのならよっぽど自殺願望が強いってことになる」


「どうしてですか?」エミールは地図を見て首を捻る。


「王都の周辺に、このシュトライトを含めて4つの城塞都市がある。ひとつやふたつ落としたところで、城塞都市と連携されたら王都を攻略してる敵軍は挟み撃ちに遭う可能性を常に考えなくちゃならない。そんな心配をしながら、敵が王都を真っすぐ狙うとは思えないんだよ」


「あ、なるほどですね」


 エミールは感心したように頷き、ガルダも「確かに…」と呟いた。その様子を見ていたジュリが横から口を挟む。


「私もアルスさまの考えに賛同だ。恐らくこれは偽装だ、たぶん本隊は——」


 ジュリは東の森林地帯を睨む。それを見てアルスも頷きながら続けた。


「ジュリの言う通り、本隊は東の森林地帯に来ているはずだ」


 エルンスト、エミール、ガルダは黙ったままアルスとジュリの会話を聞いていた。軍略に明るいのはヴェルナーとギュンターだが、今回はふたりともいない。ジュリが再び口を開く。


「アルスさま、敵の手にわざわざ乗る必要はありません。このまま森に向かって急襲しましょう」


 アルスは、そのジュリの提案に首を振った。


「それは危険だよ、ジュリ。東の森林地帯に急襲をかければ、確かに本隊を叩けるかもしれない。だが、敵が南の森や川沿いに伏兵を潜ませていた場合、逆に我々が挟撃されるリスクがある。カタリーナの地図を見ると、川の浅瀬はいくつかあるから、敵がそこを使う可能性は高い」


「確かに・・・。では、どうしますか?」


「ここは敢えて敵の手に乗ろう」


「しかし、追えば追撃されませんか?下手をすれば、我々が今度は挟撃される番ですよ?」


 それまで黙って聞いていたエルンストが、思わずアルスに疑問をぶつけた。さすがに「敵の手に乗る」という提案には抵抗を感じたようだ。エミールも心配そうにアルスを見る。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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