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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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再会・・・

 こうして、北部戦域は魔女の騎士軍団ソルシエール・シュヴァリエの介入により劇的な戦況の変化が生まれ、マーセラスとピエトロが捕らえられたことで、ティターノ軍団は壊滅した。


 軍をまとめて急いで南下したミラが、ゴットハルトと合流したのは、次の日の夕方であった。ゴットハルトは、エヴァールトやジャックの顔を見ると抱き合って再会を喜んだ。ミラやフランツたちが微笑ましくその光景を見つめる。


 やがて、喜びの再会を果たしたゴットハルトは、ミラやフリッツ将軍のところに来て深くお辞儀をした。


「援軍、感謝してもしきれない。正直、俺たちだけでは、とっくに国が滅んでいたと思う」


「ゴットハルト陛下、恐れながら。それは私よりこの兵たちに言ってやってください」


 フリッツが示したのは、士気の上がらぬままのローレンツ兵であった。ゴットハルトは兵の様子とフリッツの言わんとする意図をすぐに理解した。


「ローレンツの兵たちよ!我が国ルンデルとローレンツは、長い間矛を交えた。この国も間違った方向に随分行っちまってた。俺はそれを知りながら止めることが出来なかった。それによって、犠牲が広がってしまってことは俺の責任だと思ってる。すまなかった。そして、そのうえで救援に来てくれたこと、その恩を俺は絶対に忘れない。感謝する」


 およそ一国の王らしからぬゴットハルトの真っ直ぐな言葉は、その場に居るローレンツ兵たちのわだかまりを溶かすのに十分であった。ローレンツ兵たちの間から、どよめきが起こり、やがて、それは兵士たちのすすり泣きに変わっていく。彼ら自身も、彼らの行動が何を招いたのかを十分承知していた。それでも尚、謝罪と感謝を示す王の姿勢は、彼らの心を動かした。


 本来なら、フリッツの言は許されることではない。だが、フリッツはローレンツとルンデルの今後のために敢えて汚れ役を選んだ。ゴットハルトの言葉は、ローレンツ国内で兵士たちの口伝えで広がっていくだろう。


「ゴットハルト王よ」


 ミラがゴットハルトの傍に寄って来る。ミラは東に陣取るグリフォーネの軍をチラリと横目で見ながら話を続けた。


「こちらにも伝わっておる情報じゃが、どうやら敵軍は4万以上ということじゃな」


「ああ。だが、問題はここじゃない」


「というと?」


「先ほど、伝令兵から受け取った情報によれば、ラウナ・シュッツが落ちたそうだ」


「ラウナ・シュッツ・・・・・・」


 ミラの怪訝な表情にゴットハルトは、説明を付け加える。


「こっから南にある王都レムシャイトがある。その東にある城塞都市がラウナ・シュッツだ。そこが落ちれば王都は目と鼻の先だ。すぐにでも南へ向かいたいが、南にはルキウスの野郎がケルクを包囲してる。まず間違いなく奴とぶつかるだろう。うまく突破出来たとしても、時間が掛かっちまう・・・・・・」


「ミラさま」


 ゴットハルトの話をミラの隣で聞いていたシャルがミラに声を掛けると、ミラは黙って頷く。その様子を見ていたゴットハルトは、彼らの態度に何かを感じ取り尋ねた。


「なんだ、何か知ってるのか?」


「いや、儂らが知ってるというより、アルスが指摘しておったんじゃ」


「何をだ?」


「アルスはこう言ってたんじゃ。自分が攻めるなら、敵の目を欺くために、ルンデル軍を北か南に集結させると」


 ゴットハルトの脳裏に最北端の城塞都市ネールのことが浮かんだ。ヘルセは北に軍を集結させ、そこに対応するためにゴットハルトも軍を派遣した。だが、実際はヘルセは北に軍を集結させること自体を囮にして、南のベルクを攻め落としたのだ。


 彼らの狙いは最初からルンデル軍を北に集結させ、南北の連絡線を断ち切ることにあった。現に今もルキウスはアンリの守るケルクを包囲している。ケルクは南北の唯一残された連絡線であり、補給線だ。


 すでに東のベルクを経由する連絡線は潰されてしまっている。ゴットハルトは、彼らの狙いを南からの兵の移動を阻むために行ったものと考えていた。だが、実際には彼らの想定していなかった事態が起こる。それが、ラウナ・シュッツに向けられた5万の大軍だった。


 ヘルセの今までの戦いから、貴族が直接軍を指揮することはない。ヘルセは急速に拡大した国であり、王は貴族を信用していない。貴族に対して軍務を課さない代わりに、出兵の義務を課してる。


 軍事的な経験や知識、権力を王家に集中させることで、貴族の力を削いできたのだ。そのため、ゴットハルトやアンリでさえ、ティターノやグリフォーネのふたつの軍団がルンデルを攻めることは想定していても、貴族が直接動くことは想定出来なかった。


 通常、王都レムシャイトの守りは非常に硬い。周囲を4つの城塞都市が囲み、連携を図りながら守る構成になっているのだが、そのうちのひとつ、ラウナ・シュッツが陥落している。


「確かに。認めたくないが、俺たちは完全に敵の描いた罠に嵌まってしまった。だが、わかっていたとしても、どこまで出来たか・・・・・・」


 ゴットハルトが髭をさすりながら、思案するさまを見て、ミラは続ける。


挿絵(By みてみん)


地図、ラウナ・シュッツはルンデル中部。王都レムシャイトの東に位置する。連絡線は、アンリが守っているケルクと東のベルク。ベルクは既にルキウスの手で陥落している。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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