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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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絶望・・・

 ゴットハルトが反撃に転じる。矛を両手で握り、低く突き出す。ゾッソは咄嗟に身を捻り、矛で払うが、衝撃で身体ごと弾かれる。ゴットハルトの攻撃は地味に見えて、当たる瞬間だけ爆発的に魔素を込めていた。ゾッソは矛で弾いたはずだったが、ビリビリとした衝撃が矛を握り締める両手の感覚を奪っていく。


 ゴットハルトは追撃し、矛を振り上げてゾッソの肩を狙う。ゾッソは矛を回転させ、防御しながら距離を詰める。ふたりの動きは目まぐるしく、突きと薙ぎが嵐のように交錯する。


 戦いが百合を超えた頃、両者の息が荒くなる。ゾッソの方に浅い傷が刻まれ、揺れるオーラの光が血を照らしている。ゴットハルトの腕からも血が滴る。だが、どちらも引かない。


 ゾッソが矛を振り回し、弧を描く連撃を放つ。矛に集束されたオーラが衝撃波となって弾き出され、ゴットハルトを襲った。ゴットハルトは矛を斜めに構え、身体を軸に回転させる。


 オーラを纏わせた矛で衝撃波を弾き返した。弾かれた衝撃波は、周囲の木を根こそぎ吹き飛ばし、土煙を上げ視界を遮る。ゾッソが土煙のなかから突進し、矛を突き出す。ゴットハルトは音を頼りに矛を振り下ろし、寸前で弾く。


 またもや、衝撃波がぶつかり合い、爆風でふたりの眼光が交錯した。ゴットハルトは反撃に転じ、矛を振り上げてゾッソの胸を狙う。ゾッソは身を捻り、矛で払う。両者のオーラが弾け合い、火花が雷のように散る。血と汗が地面に降り注ぎ、戦場の土は赤黒く濡れた。




 戦いが頂点に達した瞬間、ゴットハルトとゾッソの矛が同時に突き出される。両者のオーラが激突し、衝撃波が戦場を切り裂く。 爆風が森を揺らし、ふたりの武人は一瞬の均衡の上に立つ。


 だが、その刹那、ゴットハルトの背筋に冷たい殺気が走った。何か来る!


 木々の上、シダの影に潜んでいたアビウスが、弓を引き絞っていた。毒を塗った矢が、ゴットハルトの背中を正確に狙う。矢が放たれる瞬間、ヘルムートがそれに気付いて飛び込んだ。矢はヘルムートの胸を貫き、彼は馬から転げ落ちた。


「ヘルムート!?」


 ゴットハルトが叫ぶ。ヘルムートは血を吐きながら、弱々しく笑った。


「陛下・・・・・・ご無事で・・・何より・・・・・・」


 ヘルムートの身体が地面に沈む。ゴットハルトの目が怒りに燃える。だが、ゾッソの反応は予想外だった。赤黒いオーラが爆発的に膨れ上がり、矛を地面に突き立てる。衝撃波が木々を震わせ、アビウスの潜む木が揺れる。


「誰だ、てめえぇぇ!? 俺とゴットハルトの勝負を邪魔しやがったのはよぉぉぉ!?」


 ゾッソの咆哮が戦場を震わせる。彼はアビウスの暗殺など知らず、純粋な武人としての勝負を汚されたことに激怒していた。ゴットハルトもまた、矛を握り直し、樹上の暗殺者を睨む。


「ゴットハルトよぉぉ、てめぇとの勝負はお預けだ」


 ゴットハルトはゾッソをチラッと見て、視線を戻すと一言「わかった」と呟いた。


「ま、待ってくれ。ゾッソ将軍」


 アビウスは、ユーチェス将軍に頼まれて来ただけだと説明をするために、木の陰から姿を見せる。アビウスが姿を見せたのは、ほんの一瞬に過ぎなかったが、ゾッソにとっては十分であった。


 ゾッソは問答無用とばかりに、矛をアビウスに向かって投げた。アビウスもユーチェスの副官であり、武の技量にも覚えがある。だが、アビウスは、まさか味方であるゾッソから攻撃されると思ってなかった。


 それが、ほんの僅かの時間、彼の思考を鈍らせ、行動を遅らせる。結果から言えば、アビウスにとってゾッソの矛を避けることは出来た。だがそれは、ゴットハルトの前で姿を晒すことになり、同時に致命的な隙を作ってしまった。


 刹那、ゴットハルトは膨大なオーラを瞬間的に爆発させる。矛を斜めに振り抜くと同時に、矛に集束されたオーラが斬撃波となり、彼の身体を支える大木ごと切断した。ゴットハルトは無言のままヘルムートを抱きかかえて馬に乗ると、巨大な矛を肩に乗せた。


「礼は言わねぇぞ」


「俺がやりてぇようにやっただけだ。てめぇに礼なんか言われる筋合いはねぇぇ」


 その後、ゴットハルトは、自陣に戻るとヘルムートを葬って天を仰いだ。アンリが掴んだ情報——ラウナ・シュッツに別の大軍が迫っていることを、伝令兵がゴットハルトに伝えたのは、その時である。


「アンリのほうは、どうなってる?」


「アンリさまは、ルキウス軍を相手に地形を活かした奇襲で足止めしてましたが、それも限界でして。現在は、ケルクの城塞都市で決戦を挑むとのことです」


 ゴットハルトは心のなかで大きなため息をついた。北部ではマーセラス率いるティターノ軍団4万、アンリはルキウス軍2万を相手に追い込まれてる。そして、ここにはもうすぐユーチェス、エツィオがゾッソに合流する。


 合流すればその数は4万を超えるだろう。ゾッソ単独なら奇襲も通じたが、ユーチェスが来れば今まで通りにはいかない。


 (全ての戦域で2倍から3倍の兵数を相手に戦っている状況で、南のラウナ・シュッツに4~5万の新手だと!?どう対処しろってんだ!いっそ、退く・・・か?王都レムシャイトまで退いて——いや、ダメだ。退いてどうする?俺やアンリはともかく、北にいるジャックやエヴァールトは間違いなく死ぬ。援軍として来てくれたフランツもだ)


 ゴットハルトの脳裏に「降伏」の二文字が浮かぶ。俺の首を差し出せば、あいつらだけは助かるだろうか・・・・・・。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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