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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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ローレンツ援軍

「でも、霧を活かせば一発くらいは・・・って、待て。なんだあの土煙?」


 ジャックが北の丘を指す。兵士たちが身構える中、太陽の光が無数の鎧に反射し、盾に剣の紋章が描かれた旗が翻った。


「ローレンツの援軍だ!」


「ローレンツ軍が来てくれたぞ!」


「うおおおおっ! これで逆転だぁぁ!」


 ジャック麾下の兵士たちが叫び、戦場に響き渡る。ルンデル兵の士気が一気に高まり、疲弊した顔に光が戻った。ジャックはニヤリと笑い、エヴァールトに目配せした。


「こりゃ、マーセラスも焦るんじゃないか?」


「いや、あの男はまだ動かん」


 エヴァールトが冷静に返す。


「だが、援軍が来れば打てる手は増える」


 ローレンツ軍1万を率いるフリッツ将軍が馬を進め、ルンデル軍の陣に到着。フランツ、エヴァールト、ジャックと笑顔で握手を交わす。フリッツの堂々とした姿に、兵士たちの歓声がさらに上がった。


「遅れてすまない。本当はもっと早く来れれば良かったんだが、陛下を説得するのに時間が掛かってな」


 フリッツが肩をすくめる。


「やっぱり、ケチだよな」


 フランツがすかさず突っ込み、兵士たちが笑う。フリッツは苦笑し、応じた。


「ローレンツも財政難でな。3大ギルドとの対立が国内で目立ち始めてるんだ。そうすると、色々な嫌がらせに遭ってな。」


「まぁ、どこも多かれ少なかれ妨害は受けてるってことか」


 フランツが頷く。


「それにしても、そっちは3大ギルド追い出すのに結構時間かかってんだな?」


「生憎、ファニキアのようにはいかなくてな」


 フリッツが頭をかく。


「こっちは1年かからずに完全に追い出したってのによ。フリードリヒ国王は何やってんだ?」


 フランツが皮肉を飛ばす。


「そう言ってくれるな。ローレンツは小さい国だから、経済システムの中枢にまで3大ギルドが浸透してるんだ。それで、陛下も苦心してるところだ」


 エヴァールトが静かに口を開く。


「3大ギルドか・・・金で動く連中は、どこの戦場にも湧いてくる。この国も奴らのせいで酷い目にあった。今回の戦の裏にも、ギルドの影があったって何ら不思議じゃない」


「初めまして、エヴァールト殿。噂はかねがね聞いている」


 フリッツが手を差し出す。


「援軍、感謝する。ちなみにどんな噂なんだ?」


「ゴットハルト陛下の新三大将軍だという話だ」


 エヴァールトとジャックはそれを聞いて同時に笑った。


「初対面だが、俺もフリッツ殿の評判は聞いてる。是非手を貸して欲しい」


「そのつもりだ。早速本題だが、まずは状況を把握したい」


 エヴァールトとジャックはフリッツに促され、地図を広げて現在の状況を話して聞かせた。聞きながらフリッツは厳しい表情を終始浮かべる。


「ヘルセ三傑のひとりマーセラス——私も直接対峙したことはなかったが、噂以上に厄介な相手だな」


「厄介なんてもんじゃねぇよ。で、どうやってマーセラスをぶち破る気だ?あの布陣、ただじゃ崩れねぇぞ」


「フランツの言う通りだ」


 エヴァールトが地図に視線を落とす。


「マーセラスの陣は川を背に、丘陵を盾にしてる。カロの盾兵は正面を塞ぎ、ピエトロの騎兵が両翼をカバー。俺たちの奇襲も読まれてる節がある」


 ジャックが地図を覗き込み、目を細める。


「確かに堅い。だが、マーセラスは動かねえつもりでも、俺たちが動けば隙はできる。俺の部隊は霧ん中でも敵の鼻息を聞き分ける。補給庫の位置は掴んでる。ただ、ピエトロの騎兵がウロウロしてて近づけない」


「なら、こうしよう」


 フリッツが地図に指を置く。


「エヴァールト殿、フランツ殿、私の1万で正面を押す。わざと陣形を乱して、カロを誘う。ジャック殿は霧に乗じて補給庫を叩く。ピエトロが動けば、エヴァールト殿の騎兵で迎え撃つ」


「大胆だな」


 エヴァールトが微笑む。


「マーセラスが誘いに乗らなくても、補給庫を失えば陣を維持できん。悪くない作戦だ」


「問題は時間だ」フランツが腕を組む。


「ゴットハルトのおっさんはモンシャウの東の森で奇襲戦に徹してるっていう話だろ。俺たちがここで足止め食らってると、それだっていつまでもつか・・・・・・」


「その通りだ」


 フリッツが頷く


「だから、一気に仕掛ける」


「へっ、ならさっさとやろうぜ!」


 ジャックが拳を握る。


「マーセラスの鉄壁、俺の部隊でブチ抜いてやる!」


 ルンデル軍の士気が沸き立つ。フリッツの到着で2万7000から3万7000に増えた戦力は、ヘルセに対しまだ劣勢だが、希望の光が差していた。だが、マーセラスは丘陵の陣で静かに動向を見守る。彼の目は、ルンデルの動きを冷徹に分析していた。


「なあ、俺たちは何のためにここで戦うんだ?」


 ローレンツ兵のなかのひとりが呟いた。それを聞いた隣の兵が呟き返す。


「ああ、俺の兄貴はルンデル兵に殺されたんだぜ・・・・・・」


「俺の弟だってそうだ」


「この前まで戦っておいて、今度は同盟か。勝手なもんだな・・・・・・」


※フリッツ将軍:ローレンツの平民出身で叩き上げから、戦場で功を挙げて将軍になった人物。ルンデルとの戦の途中から参戦し、ゴットハルトとも刃を交えた。

いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


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