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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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ヒースルールの策謀

 ザルツ帝国の帝都ヴェズドグラード——大陸最大の都市には、大陸中から人が集まって来る。情報、知識、技術、カネ、これら全てがそこに集まる人々の欲望を刺激し、渦を巻き起こす糧となる。その一画——商業エリアにユーベルタール北方商会ギルドの本部があった。


 そして、そこから少し離れたところに貴族と思われる邸宅が佇んでいる。その一室に黒衣を纏った男が椅子に座っている。部屋のなかにいるにも関わらず、フードを目深に被り、顔は包帯でグルグル巻きになってる。異様な出で立ちであり、一見すれば盲目の人物と思えるが、その動作は目が見えている者と全く遜色がない。それどころか、彼の一連の動きには、一分のムダすらなかった。その部屋で彼と対面している男が、黒衣の男を問い詰める。


「オレーグ、ヘルセの件、貴様の仕業か?」


「何のことだ?」


 オレーグは目の前に置かれたコーヒーカップを啜ると、音も無く受け皿に戻しながら聞き返した。


「とぼけるな。ジザ伯爵と共にいる男は黒衣の男だとユーベルタールの連中から聞いている。そんな恰好を好き好んでしてる奴なんぞおまえの同胞くらいだろう」


「酔狂な人間がいたもんだが、俺は知らん」


「ふんっ、どうだかな?商会の子飼いだからと言って、余り調子に乗ってると——」


 男はそこまで言って言葉を続けることが出来なくなった。オレーグの目は包帯でグルグル巻きになっており、見ることは出来ない。だが、オレーグから静かに漏れ出る何かの圧が急激に強くなったように感じたのだ。


「俺は知らんと言った。二度も言わせるなよ?」


「くそがっ・・・・・・」


 男は吐き捨てるように言うと、その部屋を逃げるようにして出て行った。男が慌てて出て行く様を眺めながら、オレーグは思案する。商会同士の争いなんぞ知ったこっちゃないが、俺と同じ黒衣の人間・・・・・・。


 オレーグの頭に浮かぶのは同じ邪眼族出身の異端児しかいない。あいつは、いったい何をしてるんだ?オレーグは天井を見上げて呟いた。


「何を考えてる・・・・・・?」




 時は少し遡り、ルキウス将軍が城塞都市ベルクを落とした報を受けて真っ先に動いた男がいる。ユーベルタール北方商会のヒースルールだ。すぐにヘルセの王ガイウスに面会を申し込んだ。


 ヘルセ国の王都、フォーリアの王宮。薄暗い謁見の間には、豪奢な装飾が施された玉座にヘルセ王ガイウスが座している。40代半ばの王は、鋭い目つきと疲れの滲む表情を浮かべ、ルンデル国との戦争による重圧を感じさせていた。玉座の前には、ユーベルタール北方商会の幹部、ヒースルールが立っている。


 痩身の男は眼鏡の奥で冷ややかな光を宿し、丁寧ながらもどこか挑戦的な笑みを浮かべていた。


「陛下、ユーベルタール北方商会を代表し、ご挨拶申し上げます。本日は、戦況をさらに有利に進めるための提案を携えて参りました」


 ヒースルールは深々と頭を下げ、言葉を紡ぎ始める。王は無言で手を軽く上げ、話を促した。


「ご存じの通り、ルンデル国との戦いは我がヘルセの優勢に進んでおります。陛下直属のふたつの軍団は、敵の防衛線を着実に圧迫しておりますが、戦線維持には膨大な糧食と物資が必要不可欠。商会はこれまで通り、いや、それ以上の支援を約束いたします」


 王の眉がわずかに動く。糧食不足は、ヘルセ軍の最大の弱点であり、三大ギルドの支援なしには戦を継続できない現実を、王は痛いほど理解していた。     


「その言葉、信頼して良いのだな? 商会は常に利益を求める。今回の『支援』には、どのような代償が伴う?」


 王の声は低く、疑念を隠さない。ヒースルールは眼鏡を軽く押し上げ、口元に微笑を湛えたまま答えた。


「代償などと仰らず、陛下。これは互いに利益を得る取引でございます。実は、ソリーニ州の辺境伯、ジザ・シルバティ卿が、ルンデル国へのさらなる圧力を加えるべく、独自に動き始めております。彼は4万の兵を率い、ルンデルの城塞都市、ラウナ・シュッツを目指すつもりです」


「ジザだと?」


 王の声に驚きが混じる。


「辺境伯が、余の勅令もなしに勝手に兵を動かすだと? 何を企んでいる?」


 ヒースルールは落ち着いた口調で、まるで用意していた台詞のように言葉を続けた。


「ご懸念はもっともです、陛下。ですが、ジザ卿の行動は、あくまでソリーニ州で、辺境伯として国境州の防衛を担う彼の自発的な決断でございます。ラウナ・シュッツを攻めることで、ルンデルの防衛線をさらに分散させ、陛下の軍団の負担を軽減する——これが彼の狙いであります。商会としては、この動きを、陛下の軍事戦略を補完する非公式な支援と捉えております」


 王は眉をひそめ、玉座の肘掛けを叩く。


「非公式だと? 都合の良い言葉だな。もしジザが失敗すれば、ルンデルに隙を与える。商会は責任を取れるのか?」


 ヒースルールは一瞬、目を細め、静かに答えた。


※オレーグ:邪眼の持主。血を分け与えることで力を与えることが出来る。アルスの兄、ベルンハルトに蛇血漿を与えた人物でもある。飲んだ者は、耐えられれば、絶大な力を手に入れるが、失敗すれば理性の無い化け物と化した。謎の人物。


挿絵(By みてみん)


ラウナ・シュッツは王都レムシャイトの東

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