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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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決死隊2

 陣は拍子抜けするほどにガラガラで、繋がれている馬を拝借すると一気に陣の外へ脱出する。ちょっとさすがに疑われたかもしれないと様子を窺ったが、捕虜の連中は先程の拷問の脅しと、その恐怖から逃げられた興奮で頭が一杯のようだった。


 少しホッとしながら、捕虜たちの案内を頼りに馬を飛ばす。林のなかを霧が漂ってるなか、勘を頼りに馬を走らせていくと急にルキウス軍の部隊が霧のなかから現れた。


「止まれっ!」


 部隊の外側で警戒している兵士たちに矛を突き出され、慌ててリッカールトたちは馬を止める。


「ま、待ってくれ!敵から逃げて来たんだ」


 矛を突き出してるヘルセ兵は訝しんで、リッカールトたちに問い質した。


「どういう意味だ?説明しろ」


「俺たちは敵軍に捕らえられて、命からがら敵陣から脱出して来たんだ!」


「こいつの言ってることは本当だ。俺は本隊の第二陣所属でゲールってんだが、俺もさっき捕虜にされてよ。拷問を受ける寸前で助けてもらったんだ」


 疑っていた兵士であったが、ゲールの話とリッカールトたちの痛々しい姿を見て信用したようだった。向けていた矛を戻すと謝罪した。


「そうだったのか、悪かったな。これも役目だ。なかへ入って休んでてくれ」


「なあ、ここって本隊じゃないよな?俺たち本隊へ戻りたいんだが——」


「悪いが、奇襲攻撃が続いててな。部隊間の移動は上層部以外は禁じられてるんだ。それに俺も部隊長におまえたちのことを報告しなきゃならん」


「なぁ、そこを頼むよ。こいつの弟が本隊にいるってんで、無事を報告したいんだよ」


「そりゃ無理ってもんだ。特に今はな」


 尚も食い下がろうとするゲールを、リッカールトは首を振って止めた。兵士の言葉に引っかかるものを感じたからだ。


「上層部以外は禁じられてるって、ひょっとして今ここに誰か来てるのか?」


 兵士はリッカールトをチラッと見ると、頷いて答えた。


「よくは知らんが、なんでもルキウス将軍がここに来てるって話だ」


 その兵士の話を聞いた瞬間、リッカールトたちの目が光った。無理かと思ったが、イケる、これならイケるぞ。俺たちでこの戦をひっくり返せる可能性が出て来た。リッカールトたちは逸る気持ちを抑えて、大人しく兵士の後をついて行く。兵士に案内され、焚火の近くで来るとそこで座って休んでいるように言われた。


「こいつら、その怪我どうしたんだ?」


「ああ、俺も今聞いたばっかりだが、捕虜として捕らえられたところを自力で脱出して来たらしい」


「ほんとかよっ!?そりゃあ、すげぇな!おい、おまえら、敵陣から脱出して来た奴が帰って来たぞ!」


 案内した兵士は、報告に行くと言ってその場を離れたが、代わりに、その兵の呼びかけで周りにいた連中がどっと集まって来た。敵地に入ってピリピリとしていたヘルセ軍の空気が、一気に和らぐ。周囲の兵士たちからは、敵陣から脱出したことで英雄扱いされ、ゲールたちは気分を良くしていた。ゲールは饒舌になり、終いには敵を何人も斬り倒して逃げて来たなどと吹聴している。リッカールトたちにはただただ居心地の悪さしか感じなかった。


 その頃、案内をした兵士は、天幕のなかで部隊長に事の顛末を報告していた。「報告ご苦労」と言って話を切り上げようとする部隊長を、横で聞いていた男が止める。


「ちょっと待て、その者たちは敵陣から脱出して来たと言ったな?」


「所属と名前は聞いたのか?」


「え?ええ、彼らの代表は本隊の第二陣所属だと——」


「どうやって脱出した?詳細は詰めたか?身体検査はしたのか?」


「え?いえ、すみません、そこまでは・・・・・・拷問にあったとかで、すごい怪我でしたし」


「では、そんな怪我で、どうやって敵陣を突破して脱出できるんだ?」


「ええと、そう、ですね・・・・・・」


 その場にいた男の指摘で、部隊長と兵士の顔色がみるみる変わっていく。


「私が将軍に代わって各部隊を回っているのも敵の狙いを探るためだ。今までの奇襲の仕方をみれば私にはわかる。各所から仕掛けて失敗してるが、敵は抜け目なく我が軍の情報を収集しているように思える。先ほどの大規模な奇襲は、偶然か意図的かわからないが我が軍の本隊に向けてだった。その直後に捕虜が脱走して戻って来た?タイミングが良すぎだと思わんのか?」


 そこまで聞いた部隊長は、明らかに狼狽しながら立ち上がる。指示を出そうとするのを遮り軍師アーベルクが直接指示を出した。


「その者たちを捕らえよ。私も行って直接話を聞くとしよう」


 彼らが天幕を出て、リッカールトたちがいる場所まで戻って来ると大勢の兵士が集まっていた。ゲールの吹聴した話に尾ひれが付いて、ちょっとしたお祭り騒ぎになっている。焚火の周りでバカ騒ぎをしている兵士たちを見て、部隊長が怒気を込めて叫んだ。


「そいつらを捕らえろ!」


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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