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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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決死隊1

「すまない、みんな・・・・・・」


 リッカールトは、なんとか歩ける者だけを10人連れてヘルセ軍の装備を身に付けさせた。そして、リッカールトは、アンリが戻ってくる前に自身を棒で滅多打ちにさせる。身体中全身が痣だらけになり、額からも血が滲むほどだった。


 その状態で、リッカールトを含む決死隊は簡易的な捕虜用の牢に入ってアンリの帰りを待つ。しばらくすると、複数の馬の足音が近づいて来たのを感じた。リッカールトは痛む身体を、他の傷病兵同様に横たえていたが起き上がって近くの兵に尋ねる。尋ねられた兵は、確認のために出て行くと、少し間を於いてアンリと共に戻って来た。


「アンリ将軍」


 アンリは膝を地面に突いて、神妙な面持ちで応えた。


「リッカールト大隊長、それに皆さん。我が国のために立ち上がってくれて、本当にありがとうございます」


 アンリを見て、起き上がろうとする傷病兵を彼女は止めたが、彼らは構わず起き上がった。


「将軍、俺の、俺たちの家族をお願いします」


「お願いします」


 口々に言って、頭を下げる彼らを見てアンリは微笑んだ。


「あなたがたの家族の生活の保障は、私が命を懸けて守ることを約束します」


「アンリ将軍、ありがとうございます」


「これで、心置きなく戦えます」


「良かった・・・・・・ありがとうございます」


「そんな・・・・・・お礼を言わなければならないのはこちらのほうです。ルンデルのために、ありがとうございます」


 アンリは傷病兵たちに向かって頭を下げた。


「アンリ将軍、首尾のほうは?」


「犠牲は出ましたが、奇襲した際にヘルセ兵を数人捕虜として連れ帰りました。あとはこれを・・・・・・」


 アンリは、牢のカギをリッカールトに渡す際、リッカールトの手を両手で握った。


「リッカールト大隊長、私の不甲斐なさを許してください」


「よしてください。あなたは俺なんかよりずっと立派だ。俺はただ、コーネリアス将軍の遺志に従ってるだけです」


 (神よ、彼らの成さんとすることが成就されますよう。どうか、彼らの道を照らしてください)


 アンリは彼らのために心で祈った。


 彼女の傍にいた兵士からリッカールトたちは支給品を受け取る。彼らが受け取ったのは、火薬玉であった。それを服の下に忍ばせる。しばらくすると、アンリたちと入れ替わるようにして、先程のルンデルの奇襲で捕らえられたヘルセ兵たちが同じ牢に入って来た。


 彼らは口々に何か不満をぼやいているようだったが、リッカールトたちにはわからない。ヘルセの言葉なのだろう。



 ヘルセという国は、先々代の王が近隣諸国を吞み込んで急速に拡大させた国だ。ヘルセ語が話せないことで怪しまれることもない。リッカールトは構わず、入って来た兵士たちに公用語で話しかけた。


「おまえらも奇襲で捕まったのか?」


 捕虜となったヘルセ兵士たちは、話を止めて声を掛けてきたリッカールトに視線を移すと、公用語でリッカールトに答えた。


「ああ。ルンデルの奴ら、俺たちを拷問してこちらの作戦でも聞き出そうって腹積もりかもしれねぇが、俺たちみたいな下っ端がそんなもん知ってる訳がない」


「そうか・・・・・・災難だったな。ところで、おまえらは軍のどの辺りから来たんだ?」


「俺たちはルキウスさま本隊の二陣の部隊だ」


 リッカールトは思わず唾をごくりと飲み込んだ。ルキウスを討てば、グリフォーネ軍団を潰せる好機だ。偶然か?いや、アンリ将軍が敵本隊のおおよその位置を掴んでいたに違いない。いずれにしてもこの好機を逃すわけにはいかない。


「おまえたちは?」


「あ、ああ。俺たちは先陣部隊から来たんだ」


「ところで、おまえら全員酷いケガだな。拷問で受けた傷か?大丈夫なのか?」


 別の兵士がリッカールトたちをまじまじと見て反応する。彼らはの怪我の度合いは外から見てもわかるほどであった。恐らくその兵士の心配は、これから待ち受けているであろう拷問の内容なのかもしれない。リッカールトは、その恐怖を最大限利用するような反応をした。


「酷い拷問でな。俺も作戦なんか知らないと言ったんだが、信じてもらえなかった」


 リッカールトのその一言で、捕虜になった兵士たちは驚いたように互いの顔を見合った。その様子を見ながらリッカールトは畳みかける。


「実はな、さっき拷問に連れてかれたときに牢番からコイツをくすねてきたんだ」


 そう言って、リッカールトはアンリから貰った牢のカギを懐から見せる。彼は、捕虜たちの目の色が変わるのを見逃さなかった。


「おまえ、そいつをどうやって?」


「ガキの頃は手癖が悪くてな。昔取った杵柄ってやつだ」


 リッカールトがニヤッと笑うと、捕虜の兵たちは色めきだった。


「なぁ、俺たちも一緒に連れてってくれ!頼む。こんなとこにいたら拷問で殺されちまう」


「お、俺も頼む。なんでもするから」


「わかった。なら、俺の後ろにいる奴らに手を貸してやってくれないか?コイツらも拷問されて歩くのもやっとなんだ」


「もちろんだ」「任せとけ」


「あと、俺を本陣に連れてってくれ。本陣に弟がいて、無事を伝えたいんだ」


「なるほど、そういうことなら任せておけ」


 リッカールトは、その後適当に話を合わせながら時間を潰す。そして、見張りが何かの理由でいなくなった(アンリの手引きだろう)のをきっかけに牢のカギを開けて、外へ飛び出た。


※リッカールト・マイヤー:元コーネリアス大将軍の護衛。

いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


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今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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