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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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グリフォーネ軍団最強の将 ゾッソ

「て、敵襲だ!」


「敵が来たぞっ!武器を取って戦え!」


「どこだ!?雨で視界が悪くて・・・・・・」


 ゾッソ軍は中央から後方をゴットハルトに分断され統制も取れぬまま、奇襲攻撃の餌食となる。さらにゾッソ軍の中央から先頭の間をテオドール将軍が奇襲攻撃をかけ、細長く伸びたゾッソ軍の戦列をズタズタに引き裂いていった。だが、猛将で知られるゾッソはそこで怯むことはなかった。すぐに近くにいる部隊長たちに命じる。


「なぁにグズグズしてんだよぉぉ?てめぇらぁぁ!盾兵を左右に向けて並べろぉ!奇襲してくる奴らをひとり残らず叩き潰すんだよぉぉ!」


「くそっ、この雨音で敵の位置も掴みづらい」


「どっから敵が来るんだ・・・・・・」


 ゾッソは不安がってキョロキョロしている兵士たちを見た途端、弱音を吐いている兵士の兜を拳で殴っていく。


「バッカヤロウがぁぁ!敵がどっから来ようと、斬って斬って斬りまくりゃいいんだろうがぁぁ!!」


 ゾッソにとっては軽く小突いた程度だったが、その衝撃で本人たちにとっては、火花が出るかと思う程だった。兵士たちの士気の低下はゾッソに対する恐怖で相殺される。敵前逃亡でも図ろうものなら、ゾッソは躊躇なく味方を殺してきた。そうした意味で、兵士たちの恐怖の対象は敵より常に自分たちの将であり続ける。



 ゾッソが兵士たちを小突いて回っていると、突然茂みの向こうから複数の矢が飛んで来た。兵士たちはゾッソや部隊長たちの指示通り外側に盾を向けて矢を弾いて身構える。ゾッソはそれとは対照的に単身で飛び出した。


「士気を上げるにゃ、ちょうどいいなぁぁ」


 ゾッソはニヤッと笑うと、アダマンティウム製のハルバートを横に構える。それを見て味方であるはずのゾッソ兵に、ぶるっと背筋が冷える感覚が走る。決まって彼がそのセリフを言うときは、敵に臆した味方の兵士を殺すか、敵の兵士を殺すかのどちらかである。


 ゾッソの身体のなかで練り込まれた膨大なオーラが、身体中から湯気のように立ち昇った。茂みが一瞬揺れた瞬間、ゾッソの身体は動いていた。ハルバートを振り抜いた刹那、ゾッソの身体から凝縮された魔素が爆発的なエネルギーで弾き出される。


 そのエネルギーは飛ぶ斬撃となって、数本の木々を巻き込みながら、飛び出した瞬間のルンデル兵たちを真っ二つにした。彼らは叫ぶ暇さえ与えられずに、絶命していく。その様子を見て、最初は混乱していたゾッソ周辺の兵たちの士気も否が応でも上がる。


 その後も二度ほどの襲撃があったが、ゾッソを中心に撃退。そして、三度目となる襲撃でルンデル軍を不幸が襲った。ゾッソの目の前に現れたのは、ルンデル軍古参の将軍であるテオドールである。歴戦の勇士であるテオドールは、ゾッソのハルバートにいち早く対応した。


 剣にオーラを集中させ、ゾッソのハルバートから弾き出される斬撃波を相殺しようとした。結果は無惨である。振りぬかれたハルバートによって加速された斬撃波は、テオドールの一連の動きを威力、速度、魔素量、全ての点で上回る。テオドールが剣を振り上げている最中に、テオドールの視界は空を向き、横に揺れ、何度か回転すると地面をゴロゴロと転がっていった。ゾッソは、自身が斬ったのがルンデルの将軍であるという認識すらしていない。


 ゾッソ軍はルンデルの奇襲で手痛い損害を出したが、ルンデル軍側もテオドールという古参の将を失った。結果としてみれば、ルンデル軍による森のなかの奇襲攻撃は、両軍にとって痛み分けのような形となる。ゴットハルトは、部下からの報告でテオドールが討たれたことを知ると「そうか」とだけ言って、小さく息を吐いた。




 一方、ケルクの防衛を任されたアンリは、ベルクから向かって来ているルキウス軍相手に罠を張り巡らせていた。ゴットハルトがゾッソを奇襲攻撃した少し後、アンリはルキウス軍を奇襲攻撃する。


 条件は似たようなものだったが、アンリが待っていたのはケルクの東に広がる山と林の地形を利用することだった。雨が降った後は、霧が出る。この霧に紛れてアンリは少数の兵で各所から奇襲を仕掛けた。だが、ルキウス将軍も慣れない地形と霧という悪条件下での強行軍はせずに、各所で陣を敷き警戒を指示している。そのためか、思ったほどの効果が上がらなかった。


「困りましたね・・・・・・。ここまでほぼ完ぺきに防がれてしまってます。さすが、ルキウス将軍というべきか、それとも軍師アーベルクの入れ知恵でしょうか。このままだとせっかくの霧も晴れてしまいます・・・・・・」


 アンリが思案に暮れていると、ひとりの部隊長がアンリの元へ訪れた。元コーネリアス大将軍の部下だったリッカールト・マイヤー大隊長である。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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