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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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軍師アーベルクの策略2

「いつもながら、見事な手際だ。今回はどんな手を使ったのだ?」


「話すほどのことでもありませんが・・・・・・」


 アーベルクは謙遜しつつ、策を明かした。ヘルセとルンデルの戦いを予見し、彼はベルクに腕利きの兵士100人を商人として潜入させていた。ベルクの西門は拡張工事の遅れで守備が手薄、制御塔は旧式の鎖機構で占拠しやすかった。


 アーベルクはこの弱点を突き、潜入兵に西門を優先させた。都市の中心部は木造家屋が密集しており、放火が一気に混乱を広げることも計算済みだった。さらに、ルンデル軍がネールに主力3万を集中させ、ベルクの守備兵を5000に削り、指揮官も夜襲への備えが甘い若造だったことを掴んでいた。


 鏑矢を合図に潜入兵が放火、東への攻撃で守備の目を引きつけ、西門の制御塔を占拠する計画だ。


 だが、この策はヘルセ軍がベルクを包囲できなければ成り立たない。そのため、アーベルクはもう一つの策を仕掛けた——ルンデル軍を北のネールに誘導すること。ティターノとグリフォーネの軍団をネール東に集め、ルンデルの目を北に釘付けにした。これにより、ベルクを起点に南の連絡線と補給路を断つことが容易になった。囮役を担ったのは、ティターノ軍団のマーセラスだった。



 雪崩れ込んだ兵たちは瞬く間にベルクの守備兵を倒していく。突然の放火による火事騒ぎと内部からの攻撃によって混乱しているところに、ヘルセ軍が攻めて来たのだ。


 混乱の極みにあったルンデル兵は、ほとんど抵抗すら出来ずに大半が討ち取られた。その後はヘルセ兵による略奪が始まった。糧食や金品が民家から次々と持ち出される。


 ただし、ルキウスは住民を傷つけることだけは許さなかった。厳命であったが、羽目を外してこれを破った兵士もなかには出てくる。そうした兵士たちは、見せしめとして全員公開処刑された。そのことによって、追随する者は現れなかった。


「生かさず殺さず、です」


 アーベルクはかつてルキウスにこう説いた。


「住民を殺すのは簡単です。しかし、殺してしまえばその後は使えなくなります。それよりも最低限の生活の維持を許し、時間を掛けて少しずつ飴を与えていくのです。不思議なもので、人間最初は恨みますが、一旦絶望を味わってしまえば、徐々に与えられる飴をもっと欲しがるようになります。そうなれば、少ない飴をより多く手に入れるために同胞を裏切る者が出ます。そうした者を優遇し、仲介役として立場を与える。後は容易に支配できるというものです」


 ルキウスは彼の助言を忠実に実行したのだ。ただし、抵抗する住民に対しては容赦がなかった。その者だけでなく、その者の家族、親戚は子供であろうが赤子であろうが、同罪として全員公開の場で処刑して街中で晒し首にする。その光景を見た住民は吐き気を催す者が後を絶たなかった。


「こんな幼い女の子まで・・・・・・」


「ヘルセ軍は生まれたばかりの赤子まで殺すのか・・・・・・」


「シッ、聞こえたら私たちまで殺されるって」


 こうして、ベルクの住民には徹底的な恐怖と絶望が刻み込まれていった。




 ルンデル軍はベルクへの対応に追われ、瞬く間に城塞都市は陥落した。ルキウスはベルクを後方拠点とし、南の連絡路を封鎖。さらに西のケルク——アンリが守る街へと軍を進めた。



 一方、ルキウスの指示を受けたウバルト・サトゥルニヌス将軍は、北の城塞都市ロイツェンを攻略。しかし、アンリの焦土作戦により、ヘルセ軍が得られる物資は皆無だった。


 アンリは事前に動ける住民と物資を移動させ、病人や老人だけを残していた。食料はほぼ尽き、ヘルセ軍は強奪どころか、飢えた住民に食料を与える羽目になってしまう。


 ルキウスの厳命で住民への危害は禁じられており、抵抗する者などいないロイツェンでは、この命令が裏目に出た。これは、アンリの冷徹な計算——ヘルセの統治方針を逆手に取った策だった。だが、ヘルセ軍の進軍を止めるには、ささやかな反撃に過ぎなかった。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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