表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

242/348

軍師アーベルクの策略

 それを聞いてゴットハルトはまたも豪快に笑った。アンリは少し変わったところがあるが、ゴットハルトの期待以上の働きをしてくれたことが嬉しかったのである。ひとしきり笑いが収まると、アンリは声のトーンを落として、ゴットハルトにこちらに来るまでに耳にした情報を共有した。


 それを聞いた瞬間、ゴットハルトの顔色が変わる。それほどまでに衝撃的な情報であった。


「その情報、確かか!?」


 ゴットハルトは思わず耳を疑った。アンリが持ってきた情報というのは、ゴットハルトの計算を根底から覆すものだったからだ。


「住民から聞いた話だったので、南進する敵の規模感がよくわからないと思ったのがきっかけでした。それで、私がジャックを逃がすためにロイツェンの守備兵を全員麾下に加える際に、偵察部隊を東に放ったんです。その後、ジャックを逃がした後にロイツェンを経由することで、偵察部隊から直接報告を聞いたので間違いありません」


「ベルクに向かってるのは3万じゃなく、8万だというのか・・・・・・」


「それだけじゃありません。その8万の軍勢のなかにグリフォーネの旗があったそうです」


 ゴットハルトは天を仰いで、大きく息を吐いた。グリフォーネ軍団——ヘルセ最強の三軍団のひとつだ。そいつを率いるのはヘルセ三傑のひとり、ルキウス・ヴァレリオ。


 かつてバートラムが一度も勝てなかった男だ。コーネリアスの爺さんがいたからこそ凌げたが、今は違う・・・・・・。ゴットハルトは頭のなかで計算する。援軍含めルンデル側の兵数はフランツ、エヴァールト、ジャックを合わせて約3万。自身とヘルムート、アンリを加えても2万5000。対して敵はティターノが3万、それにグリフォーネと恐らく合流した軍が8万。合わせて11万。


 ルキウスが率いるなら、ベルクの防衛など非現実的だ。運が悪ければ、到着前にベルクは陥落しているかもしれない。


「くそっ!参ったな、ここまで勝ち筋の見えない戦になるとは・・・・・・」


 ゴットハルトは決断を下す。


「アンリ、俺はヘルムートと共にモンシャウから東に布陣する。おまえは兵8000を率いて、ここから南にあるケルクの街を守れ。北東のティターノ軍団は、エヴァールト、ジャック、フランツに任せる」


「ベルクはどうするんですか?」


「無理だ。ベルクで迎え撃つ余裕はもうない。あの平原は大軍に有利だが、俺たちには不利でしかない」


「確かにそうですね。こちらにある森や丘まで引きずり込んだほうが、僅かでも勝機がありそうですね」


「おまえは、すぐケルクに向かってくれ。戦略的にはモンシャウよりベルクの方が今は重要になった。南への連絡線はふたつしかない。ベルクが塞がれたら、ケルクから王都レムシャイトに伸びる道が最後だ」


 アンリは、ゴットハルトの言葉に頷きながら、ケルクにおける防衛戦術を頭に描き始めていた。




 ゴットハルトとアンリが戦略を練って数時間後、ルキウス率いるグリフォーネ軍団がベルクの城塞都市を包囲した。何重ものヘルセ軍の陣の中に、ルキウスはいた。かがり火に照らされたベルクの西城壁をじっと見つめながら、彼は隣の老人に声をかけた。


「アーベルク、おまえの言う通りここまでは完璧に進んだな」


 アーベルクと呼ばれた老人は、恭しくルキウスにお辞儀をした。


「敵の斥候を徹底的に潰して情報の漏洩を防いでくれたお陰です。狙いがベルクとバレれば、こうも容易に包囲できなかったでしょう」


「苦労した甲斐があった。その分の成果を見せてもらおうか」


「なに、ここまでやって頂ければもう落としたも同然です」


 それを聞いてルキウスはニヤリと笑う。


「なら、お手並み拝見といこう」


 アーベルクは、兵を呼んで何かを指示した。すると、鏑矢が甲高い音を立てながら城塞都市の周りから何本も打ち上げられる。しばらくすると、都市内のあちこちで火の手が上がった。城壁の外からでも混乱と慌てふためく住民の声が響いてくる。アーベルクは冷徹な目でそれを見据え、ルキウスに告げた。


「ルキウス将軍、それでは手筈通り東の城壁のみ攻めるよう指示を出してください」


「わかった」


 ルキウスは東を担当している将軍、ユーチェス・グラツィアーノに攻撃命令を出す。ユーチェスはルキウスの命令通り、破城槌と投石器を用いて波状攻撃をかけ始めた。


 ただでさえ各所から上がった火の手に加えて、敵の攻撃が始まり、城壁内は混乱の極みに陥ることになる。一時間ほど攻撃を継続すると、城壁は崩れ始め、都市の目は完全に東を向いていた。


「将軍、そろそろです」


 アーベルクはルキウスにそう伝えると、ルキウスは無言で頷いた。十分ほどが経過したころだろうか、西城門内部で叫ぶ声と剣戟の音がしたかと思うと、城門がガラガラと開き始める。それを見たアーベルクは小さく息を吐き、ルキウスに一礼した。


「お待たせいたしました」


 ルキウスはその言葉を聞いて、前衛部隊を即座に城壁内に突入させる。雪崩れ込んでいく自軍の様子を見ながらルキウスは老軍師に尋ねた。


挿絵(By みてみん)

いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ