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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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アンリの奇襲

ジャックの8000の軍は、ネール南の戦場でマーセラスの2万に釘付けにされていた。ゴットハルトの撤退命令から丸一日、隙は生まれない。少しでも動けば、総攻撃が来る気配だ。マーセラスはジャックの陣形の節目を突く、隙のない戦術を展開。


 半数の兵力で包囲を防ぎ、崩れないのは、ジャックの卓越した戦術眼の賜物だ。ゴットハルトが彼を非凡と認める理由——それは、戦場を俯瞰する鋭い洞察力だった。

だが、時間が刻一刻と過ぎ、ジャックの焦りは募る。


「ジャック将軍、ヘルセの攻撃がようやく収まりましたね」


 部下のパウル・テクマイヤー少将の言葉に、ジャックは吐き捨てる。


「だから、どうだってんだ?誘われてんだよ」


「どうして誘われてるってわかるんですか?」


 ジャックは敵陣を指差す。


「あそこ、見えるか?」


 ジャックの視線の先には騎馬隊の一団がいる。


「はい、騎馬隊ですね」


「あいつらはさっきの攻撃に参加してない。それに何よりも、馬を降りてる連中がひとりもいない」


 ジャックが指摘した騎馬隊は、確かに先ほどまで戦いには参戦していない。その割に、いつでも参戦できるような態勢なのである。


「そういえば、確かに・・・・・・」


「つまり、元気一杯のお馬ちゃんと兵士がいつでも出撃出来るってわけだ。それとな、この際ハッキリ言っておくが、恐らくマーセラスは俺らが撤退したがってるのを見抜いてる」


「ということは、敵は最初から我々をここに釘付けにするつもりだということですか?」


「それだけで、勝利条件が満たせると踏んでるんだろ」


「将軍には、相手の意図がわかるのですか?」


「相手の戦い方を見てれば、本気で潰しに来てるかどうかぐらいわかる。今のところ、奴は本気で攻撃してきてない。つまり、戦略的に見てネールを取りに来ること自体が囮であって、本命はベルクってことだ。だからこそ、やりにくい。何かきっかけがありゃいいんだが・・・・・・」


 最初にマーセラス軍と相対したときに感じたジャックの違和感は、ゴットハルトからの情報によって確信に変わった。そうとなれば急いでゴットハルトと合流すべきであったが、ジリジリと時間だけが過ぎていく。何度かの衝突を繰り返した後、伝令兵がジャックの元に訪れた。


「ジャックさま、アンリさまより伝令文です!」


「アンリだと!?」


 ジャックは、伝令兵から文を受け取ると急いで中身に目を通す。文には救援に向かうこと、合図は三回ということ。そして、今のうちにいつでも撤退が出来るようにしておくようにとだけ書かれていた。


「これだけか?他にアンリは何か言ってなかったか?」


 ジャックの問いに伝令兵は首を振るだけだった。


「救援というと、ネールより北から来るのか。ありがたいが、北側は見通しが良い。敵の監視網に引っかかる恐れが高いな・・・・・・。アンリにそのことを伝えてくれないか?」


「すみません、出来ません。アンリさまは移動してまして、私も今アンリさまがどこにいらっしゃるのかがわからないのです」


「なら、戻ることも出来ないということか。それなら仕方ないな・・・・・・」


 ジャックは小さく息を吐く。しばらく考えていたが、やがて思い直したようにパウル少将を呼んで、アンリからの情報を共有することにした。





 異変はその日の夜に起こった。鏑矢が三回、ピーーーーーーーーッと鳴り響く。直後にマーセラス軍の右翼陣営が騒がしくなったのだ。重なり合う馬の蹄の音、激しい剣戟を交わす音に混じって叫び声が遠くから聞こえてくる。


 アンリだ!ジャックは鏑矢が三回鳴った時に何が起こってるのかを直感で理解した。アンリの奴、北じゃなく南側から奇襲攻撃を仕掛けたのか!


 ジャックはアンリの読みの深さに感嘆しながらも、次の瞬間には自軍に向けて号令を出していた。


「敵が混乱してる今が好機だ、騎兵は俺について来いっ!残りの歩兵部隊はパウルについて今のうちに撤退しろ」


「ジャック将軍!」


「パウル、歩兵部隊は頼んだ!」


「お任せをっ!」


 ジャック率いるルンデル軍騎馬兵3000は、奇襲を受けて混乱しているマーセラス軍に向かって突撃した。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 ジャックが騎馬隊の先頭に立ち混乱してるマーセラス軍に突っ込む。魔素を体内で練り込むとオーラが身体から溢れ出した。それを矛に乗せて衝撃波を弾き飛ばす。



 ドォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!



 土煙と轟音が響き渡った。ヘルセ兵たちがいた辺りは血の匂いが漂い、一瞬にして雲散霧消する。


「ジャック将軍に続けぇぇぇ!!!」


「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」


 ジャックの一振りでぽっかりと空いた穴に、ジャック率いる騎馬隊が次々と飛び込んで行った。たちまち激しい剣戟を交わす音と金属音がぶつかり合って飛び散る火花が辺りを彩る。


 ジャックは急襲された右翼部隊の救援に向かおうとしていた中央部隊の前列に攻撃を仕掛けた。そうすることで、アンリの奇襲を助け、混乱をさらに大きくすることが出来る。ジャック騎馬隊は、混乱している敵の中央部隊の前列を食い破り、そのまま敵陣の第二列も抉った。


「ジャック将軍!!」


 ジャックの傍にいた兵のひとりが叫ぶと同時に、オーラの塊が衝撃波となってジャックに迫って来ていた。


「おおおおおおおおおおおおおっらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 反射的に魔素を練り込み、矛に流し込みつつ衝撃波を受ける。



 ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!



 衝撃波とジャックの流し込んだオーラが弾き合って、つんざくような音が周囲の兵の鼓膜を襲う。やがて、パァァァァァァンという弾ける音と共に衝撃波が霧散した。ジャックは衝撃波の飛んで来た方向を睨む。そこには、ヘルセ軍ティターノ軍団長マーセラスの姿があった。


「ジャック将軍、あれは敵将では!?」


 ジャックを舌打ちをしつつも、前を向いて号令した。


「今は無視だ、やるべきことをやるのみ。全軍、再度敵前列に突っ込んで破壊する!」


 ジャックの号令とともに、騎馬隊は転進しつつ今度はヘルセ軍前衛、第二列の後ろから斜め角度で突っ込んで行く。次々と前衛部隊を蹴散らしていると、鏑矢の音が三回、ジャックの背後から聞こえて来た。


「全軍、突破して撤退!今だ!」


 アンリ部隊も南へ退き、ルンデル軍は夜の闇に消える。マーセラスの角笛が響くが、追撃は僅かに遅れる。ジャックとアンリの連携が、撤退を成功させたのだ。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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