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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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フランツ・クレマン・リンベルト

 その光景を不安そうに眺めているルンデル軍のなかで、ゴットハルトは小さく舌打ちした。彼はこの時、ヘルセのカロ将軍の言ってる意味がようやくわかったのである。奴は拠点の攻略に失敗した後「このまま勝てると思うなよ」と言った。奴の言ってたのは、このことだったんだろう。


 そうだとすれば、俺たちはまんまとここまでおびき出されたことになる。本命は最初からベルクだったということか。こんなデカい絵を描ける人間はヘルセ広しといえど、軍師アーベルクしかいないだろう。ゴドアに対する警戒を緩めてまで、こっちに執着する理由でもあんのか・・・・・・?


「厄介だな・・・・・・」


 ゴットハルトは思わず呟いて、髭をさする。仮にこのまま撤退出来たとして、こいつらを相手しながら南に3万の敵軍を同時に相手するのは至難の業だ。モンシャウにいるヘルムートに動いてもらうのはもちろん、ベルクが落ちる前になんとしても辿り着かなきゃならねぇ。


 くそっ、国を統一してすぐに滅んでたら良い笑いものだな・・・・・・。ゴットハルトは思わず矛の柄を握りしめたが、すぐに切り替えて指示を出した。


「撤退する進路は森のなかだ。森に入っちまえば、地の利はこっちにある。いいかおまえら、それまでは何としても耐えろ!」



 テオドール将軍が森へ軍を導くが、入り口までは距離がある。カロやピエトロが黙って見過ごすはずもない。特にピエトロの騎馬隊は猛烈な速度で先行し、エヴァールトの殿しんがり部隊に襲いかかる。ピエトロは馬上で矛を振り回し、ルンデル兵を薙ぎ倒す。血と泥が飛び散り、彼の周りに空いた空間が広がる。エヴァールトの兵士がバタバタと倒れ、緒戦の優勢は完全に逆転していた。






 エヴァールト自身も逆襲するが、撤退の不利と騎馬の勢いに阻まれ、深く斬りこむことも出来ずダメージは限定的だ。ゴットハルトもエヴァールトに損害が集中し過ぎないように、左右から勢いを殺すよう仕掛けていたが、そのたびにカロ将軍の妨害に遭いうまく機能しない。そして丸一日に半日を加えた時間が経過した。


 ようやくルンデル軍が森のなかに入る頃には、エヴァールト軍は3000以上の損害を出してしまったのだった。ルンデル軍は、ほうほうの体で森のなかに入るがヘルセ軍の猛追は続く。被害を出しながらも、奥へ奥へと逃げて行った。


 その間にゴットハルトは地形の高低差や死角になっている場所に兵を伏せる。奇襲を繰り返すも、ヘルセ軍の勢いを殺すことは出来なかった。ヘルセの追撃は夕刻まで続き、ようやく止まるが、ルンデル軍の被害は大きくなり2000以上の追加の損害を出す。森の暗闇に陣を築くが、兵士の消耗は明らかだった。


「まずいな、このままだと逃亡兵が出始めるかもしれん」


 ゴットハルトが焚火の前で独り言ちたとき、エヴァールトが兵を率いてやって来た。エヴァールトも激戦を潜ったようで、返り血で真っ赤になっている鎧が殿の過酷さを物語っている。


「エヴァールト、おまえもかなりやられたな」


「申し訳ありません。兵をお預かりしておきながら、このざまです」


「いや、この場合、敵を褒めるべきだろうな。撤退戦とはいえ、ここまで猛追を食らうのは俺の予想を超えてる」


「敵は夜襲も仕掛けて来るでしょうか?」


 エヴァールトの質問にゴットハルトは溜め息をついた。


「恐らくない、と言いたいところだが。ここまで執拗に追われると、あると思ったほうが良い」


「ヘルムート将軍には?」


「連絡はしてる。だが、あいつが兵を率いて合流出来るのは明日の話だ。それまで保つかどうかだ」


「相当厳しいですね。ジャックの奴もうまく撤退出来るかどうか・・・・・・」


 エヴァールトの言葉に苦々しい表情を見せるゴットハルトだったが、返す言葉も無かった。下手をすれば、ベルクに辿り着く前に追って来た虎に食い殺される可能性すらある。ふたりが押し黙った瞬間、森の遥か前方から剣戟の響きと叫び声が響く。暗闇を切り裂く金属の衝突音が、ルンデル軍の陣に不気味にこだました。ゴットハルトとエヴァールトは顔を見合わせ、矛を握り直す。




「やるな、アンリ。想定した敵の位置がドンピシャじゃねぇか!」


 フランツの剣先から放たれたオーラが爆発し、ヘルセ兵を吹き飛ばす。木々が倒れ、土と血が飛び散る。隣を駆けるドルフが、片腕で剣を振り上げた。


「フランツの兄貴、ガンガンやっちゃいますよ!」


「おうよっ、てかおまえまで来るって話は聞いてなかったぞ、ドルフ?」


「戦いたかったんすよ!」


「意味わかんねぇが、気持ちはわかる!ついて来いっ、こいつらぶっ潰して髭もじゃのおっさんを助けるぞ!」


「了解っす!」


 アルス麾下の将はどれも規格外の強さを持っている。その彼らのなかで、さらに抜きんでた武力を持つ者のひとりがフランツ・クレマン・リンベルトだ。カロもピエトロも後方から攻められることは全く想定出来てなかった。


 そこにアルス隊最強のひとりに率いられた1万の部隊が、無警戒な状態の敵を後背から襲ったのだ。その破壊力たるや想像を絶するものとなるのは、想像に難くない。フランツはドルフと並んで、木々の間を上手くかわしながら、衝撃波や斬撃をオーラに乗せて弾き飛ばした。そのふたりに続く騎馬隊がヘルセ軍を蹴散らしていく。



※ドルフ:本名ドルフ・レフェルト。元ルンデル3大将軍バートラムの部下で悪鬼隊のレフェルト兄弟の兄。弟のアジルはアルスの兄ベルンハルトに殺され、ドルフ自身も左腕を失った。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


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