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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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ルンデル最強の勇将

 そんな両軍の兵士たちの戦いのなかで、ひと際異様な雰囲気とオーラを纏う者がいる。ゴットハルトだ。ルンデル最強の勇将は健在で、彼がひとたび巨大な矛を振れば数人の兵士が真っ二つに裂かれる。ゴットハルトの通った後には敵の死体が累々と重なっていく。


「どけぇぇぇぇぇい、木っ端ども!」


 ゴットハルトはカロが率いる部隊の陣形を切り裂くように、血の雨を降らした。


「ば、化け物だぁ!」


「に、逃げるな!戦え!」


「戦えって、どうやって戦うんだよ、あんなのと!?」


 カロ麾下の部隊に一気に動揺が広がっていく。それほどの破壊力、衝撃をたったひとりの人間が戦場に及ぼしていた。


 しかし、それを黙って見ているカロではなかった。彼もまた王家直属であるティターノ軍団の将である。マーセラスの右腕として、長年ヘルセ王家を支えてきた自負があった。面白い。ルンデル最強の称号、確かめてやる。


 カロは矛を右手に握りしめると、一気にゴットハルトの前に躍り出た。ゴットハルトは構わずそのままカロに巨大な矛を打ち下ろす。カロはその矛を軸をずらして受け流した。ゴットハルトはそこで初めて相手の顔を見る。


「なるほど、おまえさんがこの軍の大将ってわけか。俺の前に出て来たってことは覚悟は出来てんだろうな?」


「そりゃ、こっちのセリフだ。のこのこ戦場のど真ん中に王自ら出てくるとは酔狂な人間だ」


「あいにく、俺は自分の戦は自分で決着をつけたいタイプでな。王には向いてないかもな」


「なら、とっととガイウスさまに譲れ」


「はっはっは!そりゃあ出来ねぇ相談だな」


「では潔くここで散れ。墓ぐらいは用意してやる」


 そう言ったカロの身体からはオーラが立ち昇った。刹那、カロの右手から繰り出される矛がゴットハルトの右頬をかすめる。ゴットハルトは巨大な矛で弾きつつも、その速さに驚いた。構わずカロはオーラを乗せた連突きを次々と放つ。


 速いが一撃一撃にオーラが込められている重い衝撃が、ゴットハルトの矛を通して伝わって来た。カロの身体から立ち上るオーラがさらに濃くなると、突きの速度はさらに速く重くなる。凄まじい速さの突きをゴットハルトは顔に似合わぬ精密な動きで捌いていく。その衝突音は小さな爆発となり大気を揺らし続けた。


「ちっ」


 カロは小さく舌打ちをする。


「おまえ、俺が力に任せて矛を振ってるだけのバカだと思ってるのか?そんな雑魚どもと一緒にされちゃ困る」


 ゴットハルトから圧倒的なオーラがほとばしると、矛先が揺らめく。空気が揺らめいてる?なんだコイツのオーラは・・・・・・。カロがゴットハルトを注視すると、矛に込められたオーラそのものが熱を発していた。これはゴットハルト自身がかつて貴族の反乱を治めたときに発現した力だ。


 彼自身は気が付いていないが、無意識にオーラの持つ性質を体得していた。そこにゴットハルトの天性の武力が加わる。振り上げた巨大な矛は、ゴットハルトの振り下ろす速度で唸りを上げながらアダマンティウム製の柄がしなる。先端の矛は、オーラの熱で刃が赤く染め上げられ、大気を両断しながらカロの頭上に降り注いだ。


 なん、だ!?この圧?さっきの比じゃない、受け止めたらダメだ!カロは瞬時に判断すると、刃先をゴットハルトの矛先に合わせる。



 ギィィィィィィィィィィン!!!



 金属と金属が凄まじい速度で衝突する音と同時に、大量の火花が散った。ミシミシと武器を支えるカロの腕や肩の血管が浮き出て、筋肉が悲鳴を上げる。身体強化を最大まで上げながら、カロはゴットハルトの一撃を辛うじて受け流した。


 その直後、カロの全身から一気に汗が噴き出して体温が急上昇する。こりゃマズい。今の一撃でよくわかった。こいつ・・・三傑並みの武だ。俺じゃ勝てない!


 落ち着け・・・・・・。奴に勝つ必要はないんだ。守りに徹すればいい、そうすりゃ時間が解決するはず。カロは決断するとオーラを限界まで高めて身体強化に全て注ぎ込み攻撃を捨てる。


 少しでも隙を見せれば首と胴体が離れることになる。ゴットハルトは二撃目を横に振った。轟音で切り裂かれる空気の音を聞きながら、カロは矛を上へと滑らせる。またもや火花が散り、衝撃音が周囲に響き渡った。こうして三合、四合と矛を交わし合う。


 ゴットハルトの一撃はカロの神経を擦り減らしていったが、ちょうど十合目を数えたときに一騎打ちをしてるカロの後方から伝令兵の報告が飛んだ。


「カロ将軍!伝令より報告です」


 カロは内心で勝利を確信する。


(来た!これで俺の勝ちだ、ゴットハルト!)


 ゴットハルトを睨みながら、声を上げる。


「なんだ?」


「南側面を攻めているクラウディオ隊が挟撃に遭い敗走とのことです」


 その報告を聞いた途端、ゴットハルトはニヤリと口角を上げる。カロの顔が歪んだ。


「くっ、東はどうなった?」


「ダメです、南との挟撃体制が崩れたことで立て直された模様です」


 カロは歯ぎしりする。アンリの機転が、拠点を守り抜いたのだ。ゴットハルトが豪快に笑う。


「はっはっは!どうやら当てが外れたようだな?」


「ちっ、このまま勝てると思うなよ。退けっ!」


「あのまま逃がしてしまって良いのですか?」


 走り去るカロ部隊を見ながら何やら思案しているゴットハルトに、隣の兵が尋ねた。


「あいつを仕留めるには時間が掛かり過ぎる。見ろ、中央の拠点に敵の別部隊が群がってる」


 ゴットハルトが指差した方向には、既に中央の拠点を巡って敵が動き出していた。


「抜け目がねぇ奴だ。俺らは今から中央の拠点の防衛に回る。それと、アンリのとこの状況も知りたい。被害が出てるに違いないからな」


 ゴットハルトは、手短にいくつか指示を出すと次の動きに向けて備えた。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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