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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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衝突

 この布陣を見たカロはピエトロと連携する形で横陣を同じように敷く。右翼側にピエトロ将軍、左翼側はカロ将軍という布陣であった。


「ピエトロ、作戦を伝える。まず敵左翼の拠点を俺が獲る、おまえは敵右翼に突っ込んで抑え込め。抑え込みつつ、余力で中央の拠点を獲って敵の連携を崩すんだ。なに、数ではこちらが勝ってる。油断さえしなきゃいけるはずだ」


「なるほど、敵左翼の拠点を獲ってしまえば、敵陣の裏から侵入できますね」


「ふふふ、さすが若くしてティターノ軍の将になっただけはあるな。話が早くて助かる」


 カロにそう言われたピエトロは、頭を搔きながら笑って返した。


「いえ、カロ将軍には敵いませんよ」


「ははは!謙遜するな。それと、死ぬなよ。マーセラスから頼まれてるんでな」


「義父——いえ、マーセラス将軍が・・・・・・」


「おまえが死んだら俺の寝覚めが悪い、そういうことだ」


「肝に銘じておきます」


 ピエトロは持ち場に戻ると、左翼のカロと連携を図りながらエヴァールトが指揮する右翼を抑えにかかりつつ、テオドールの守る廃村を攻め立てる。カロは敵右翼内のアンリが守る村を集中的に攻めつつ、カロの部隊からもテオドールが守る中央の村を攻める。カロは中央の軍は全く動かさずにひたすら二カ所の廃村だけを攻め続けた。




「傷ついた兵は村の内側に引き入れて!出来るだけ正面から戦うのは避けるように全部隊に伝えて」


「はっ!」


 アンリは、村の前方にバリケードを作り弓隊を配置。そこから矢を射る一方で両側から侵入してきた敵兵に対しては、障害物を置いて隘路を作り出してから一斉に叩く戦い方に徹した。こうすることで、出来るだけ自軍の損害を抑えつつ、敵兵にダメージを与えていく。


 カロはその様子を見て唸った。


(さすがはゴットハルトの部下、対応が巧みだ)


 しばらく思案してからふたりの若い部隊長シセロとクラウディオを呼び寄せた。


「カロ将軍、お呼びですか」


「シセロ、おまえは廃村の正面から盾兵を率いて攻めるんだ。クラウディオ、おまえはシセロが正面から攻めてる間に身体のデカい奴を集めて最南端の入り口から攻め寄せるんだ」


「「わかりました」」


「ああ、それとな。シセロ、おまえは無理に攻めなくていいからな」


 シセロは意味がわからないという顔でカロを見返した。正面から攻めろと言っておきながら、無理はしない。敵の注意は正面に集まるのが普通である。カロはシセロの表情を見て少し笑って説明を付け加えた。


「すまん、俺の説明が足りなかったな。おまえの役割は相手に出来るだけ矢を射たせて消耗させることだ」


「それだけでいいのですか?」


「それだけで構わん。ただし、相手も手練れだ。あからさまなことはするなよ?」


 シセロとクラウディオは勇ましく返答をすると、それぞれ1000を引き連れてアンリが守る村を攻め立てる。シセロが廃村の正面まで近寄ってみると、村の正面は柵で囲ってあり内側に急ごしらえの土嚢を積んであった。


「よし、出来るだけ敵の注意を引くために大声を出しながら突撃するぞ!」


 シセロに率いられた1000の部隊は鬨の声を上げながら一斉に突撃する。当然、それに対して村の内側からは矢の雨が飛んだ。


「シセロ、うまくやれよ」


 その様子を横目に、クラウディオは村の南側から同時に突入する。村の入り口を固める兵を身体のデカい兵士たちを前面に出して蹴散らす。村のなかへと侵入していくと、土嚢が両側に積んであり兵士の侵入を拒んでいた。



 アンリが傷病兵を運ぶ位置を指示していると、飛んで来た兵士が大声で叫ぶと同時に角笛が鳴った。


「アンリさま!敵が東正面から攻めて来ます!」


「しつこいですね。今日はこれで三度目なのに」


 アンリが村の正面に張り巡らした柵の隙間から覗くと盾兵が、咆哮を上げながら迫って来ていた。


「正面、弓兵、構え!」


 アンリの号令で弓兵が構える。敵軍は2000ほどで、濛々と土煙を上げながら突進してくる。アンリが矢を射る号令を出す直前、敵兵が二手に分かれた。一方はそのままこちらに突っ込んでくるが、半数は南側へ逸れていく。


「撃てっ!」


 矢が一斉に放たれ、正面から迫る敵軍の頭上に降りかかる。敵軍はそれを大きな盾を掲げて立ち止まり、一斉に防御した。カンカンと矢が盾に弾かれる音がする。しばらくすると、敵兵は盾を下ろしてまた前進する。アンリは南側に回った敵兵に気を取られつつも、素早く防衛の指示を出して正面の敵に専念した。


 二度目の斉射でアンリは違和感を感じる。そして、三度目の斉射でその違和感は確信に変わった。敵の前進速度は明らかに鈍っており、襲って来る気がまるでなかったのだ。本命は南側!?やられたっ!


「構え止めっ!この場は任せます。もし敵が襲ってくるようなら斉射で対応してください」


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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