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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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絶望のルンデル防衛戦

 5月3日の朝、ローレンツから戻って来た部下の報告をゴットハルトは受ける。フリードリヒの返答は、糧食は送るが援軍の派遣については、ハッキリとした返事は無いというものだった。予想はしていたが、淡い期待は裏切られる。ゴットハルトの胸に不安の雲が広がろうとしていたが、すぐに頭を切り替えて次の情報を待った。


 昼過ぎになって断片的ではあるが、追加の情報がいくつか入ってくる。それを繋ぎ合わせると、ヘルセ軍は少なくとも10万以上をレ・チェーゼ城に集結させたのちにこちらに向かって来ているとのことだった。ゴットハルトはヘルムート将軍にモンシャウの守りを命じた。ヘルムートは一時期、ローレンツの捕虜になっていたが、停戦後は保釈金を払ったうえで解放されている。


「エヴァールト、ジャック、アンリ。出るぞ!いっちょ、敵さんを歓迎してやるとしよう」


「「「はっ!」」」


 その光景を見てヘルムートはこう思わずにいられなかった。防衛において無敗を誇ったコーネリアス大将軍が生きていてくれたら・・・・・・。ヘルムートは、ゴットハルトの背中に、防衛の名将コーネリアス大将軍の影を重ねた。


 その視線に気付いたのか、ゴットハルトはヘルムートに笑って語り掛けた。


「コーネリアスの爺さんも空から見ている。俺らが恥ずかしい戦いは出来ねぇな」


 ヘルムートは、見透かされたようで思わず気恥ずかしさを覚えたが、これもゴットハルト流の気の遣い方なのだろうと思った。


「はい、そうですね。ご武運を」


「互いにな」




 一方、レ・チェーゼ城に集結したヘルセ軍は続々と西に向かいつつあった。ヘルセには王直属の三つの軍団が存在する。すなわちティターノ、グリフォーネ、レヴィアターノである。


 それぞれの軍団長には三傑と呼ばれる将軍が率いる。ゴットハルト陣営の偵察がなんとか掴めたのは、ネール攻略にティターノ軍団が動いていることだった。ティターノ軍団には三人の将がいる。ピエトロ・サンタローザ、カロ・デ・リス、そして三傑のひとりであるマーセラス・バドリオだ。


 出発前、マーセラスは長年の戦友であり、友であるカロを幕屋に呼び寄せて話をした。粗末な幕屋は風に軋み、遠くで馬が嘶く。兵士のざわめきが響く中、マーセラスは普段通りの声で話す。


「カロ、ピエトロを頼んだぞ」


「はは、おまえは相変わらずだな。奴もいっぱしの将だ、おまえが気に掛けなくとも生き残る術は心得てるさ。それに、そもそも奴は俺より強い」


 カロにそう言われてバツが悪そうな表情をみせたマーセラスだったが、苦笑して続けた。


「わかっちゃいるが、サヴィーナを早々に未亡人にしたくはないからな」


「おまえんとこの娘だって覚悟はしてるだろ。俺んとこなんか、戦場で名誉ある死を望まれてんじゃないかって最近思うようになってきたぜ」


「おまえの奥方に対する扱いがぞんざいなんだよ。俺が奥方の立場なら、毎晩おまえの栄誉ある死を祈ってるはずだ」


 マーセラスが祈る真似をしたので、カロは噴き出した。それを見てしばらくふたりで笑っていたが、マーセラスは、ふと真面目な表情で話し始めた。


「冗談はさておき、ネール攻略に当たって俺とおまえたちは別々のルートになる。厄介だったコーネリアスが既にいないとはいえ、ゴットハルトは元三大将軍の筆頭だ。油断はするなよ」


 カロは頷き、娘婿のピエトロを思い浮かべる。


「心配すんな、おまえの娘婿のためにもせいぜい警戒しておくさ」


「頼んだ」



 ヘルセから山間を抜けて、城塞都市ネールへ至る道はふたつある。ティターノ軍団を率いるのはマーセラスだが、今回はレオが大将軍として直接指揮を取っている。そのため、レオの指示でカロとピエトロは北の道を。マーセラスは南の道からネールに向けて進むことになった。


 偵察部隊はこの動きを掴んでいた。偵察の妨害が激しく、正確な数まではわからなかったが、北の方が南よりも遥かに数が多いということをゴットハルトは承知している。


 そこでまず、ゴットハルトはネールの北側を中心に兵を展開した。エヴァールト1万5000、テオドール3000に加え、ゴットハルトはアンリと共に2万の兵でネールの北側で迎え撃つ。南側はジャックが1万の兵を展開した。


 5月4日、両軍は城塞都市ネールの北側で遂に相まみえる。軍容を見た途端、ゴットハルトは舌打ちをした。その姿を見てアンリが傍に寄って来る。


「北が主力ってのは合ってたが、こっちより数が多いか?各個撃破するつもりでいたが、下手すりゃこっちが討たれてもおかしかない」


「元々戦略的には圧倒的に不利ですからね。なんとか戦術で撥ね退けるしかないですね」


「腐った材料で絶品料理作れって言われてる気分だが・・・・・・やるしかねぇか」


「まずは当たって敵の動きを見てみましょう」


 ゴットハルトは、軍を配置するに当たって、ネールの西にかつてあった二カ所の廃村を利用する。防衛拠点として右翼側にひとつ、さらに右翼と左翼の中央に位置する陣の連接点にも築いた。右翼の村ではアンリが指揮を取り、中央の村は古参の将であるテオドールが指揮を取る。そして右翼側にゴットハルト、左翼側はエヴァールトが軍を率いて敵を迎え討つ。



※コーネリアス大将軍:ルンデル最高の智将であり、防衛戦に於いて不敗の将だった。65話~参照。


挿絵(By みてみん)

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