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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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暗躍する者たち3

「国王陛下に謁見するとしましょう。ビルギッタさん、貴女もですよ」


「は!?」


 ビルギッタの声には、驚きと不信が混じる。


 ヒースルールは手短に経緯を説明する。ロムルス伯爵殺害は、ガイウス国王の動きを封じるための彼の「一手」だった。新聞に掲載された少女の記事だけでは、国王は動かなかった。それどころか、記事を揉み消そうとする動きすら見せていた。だが、伯爵の殺害により、世論は完全に開戦へと傾き、国王はもはや後戻りできない状況に追い込まれる。


 さらに、ヒースルールはジザ辺境伯を完全に手駒にし、三大ギルドの糧食調達力を国王に吹き込んだ。その結果、国王からの謁見の要請が間近に迫っているというのだ。


 ビルギッタは唇を噛む。ヒースルールの策謀は、彼女の計画を完全に上書きしていたのだ。だが、同時に、彼の能力を認めざるを得ないとも思った。



 王宮の大広間は、荘厳な柱と絢爛な金の燭台に彩られている。ガイウス国王は玉座に座し、その眼光は疲弊と苛立ちを隠せない。三大ギルドの代表——ユーベルタール北方商会のヒースルール、グランバッハ商業協会のレグルス、そしてレオノール大商会のビルギッタ——が玉座の前に進み出る。彼女はこの計画の立案者として、ヘルセの支部長フローセルを押し退け彼女自らが国王に謁見に臨むことになった。





 三人が謁見の間に進み出ると、一通りの美辞麗句と挨拶をする。王は挨拶も程々に早速本題へと入った。


「其方らのことだ、話は聞いてるだろうが、この国は間もなく戦に入る」


 この王の発言に真っ先に反応したのはヒースルールである。


「陛下、我々は三大ギルドなどと呼ばれておりますが、先代の父君、そして陛下の御代の下で幸運にも商いをさせて頂くことができて感謝しております。我々もこの国の人々と共に成長させていただきました。戦というのは非常に辛いご決断かと思われますが、微力ながら我々に出来ることなら是非喜んでご協力させて頂きたいというのが我々の真摯な気持ちでございます」


 つらつらとよく心にも無いことを言えたものだと、ビルギッタは心のなかで舌打ちした。だが彼女の苛立ちは、単純に彼女の計画外の行動をヒースルールにされたことにある。ガイウス王は、この男の言葉に頷き話を続けた。


「余としては本意ではないが、事がここまで大きくなってしまっては、もはや世論が許さぬだろう」


「心中お察しいたします」


「だが、昨年の長雨のせいで食糧不足だ。備蓄を含めても戦となれば正直心許ない。其方たちならば、なんとかなると推挙もあってな」


「ご安心を。糧食の件ならお任せください」


 そのやり取りを聞いていてビルギッタは吹き出しそうになる。この愚鈍な王は、私たちが罠に嵌めた張本人たちとも知らずに、こうして王宮に迎え入れあまつさえ頼み込んでいるのだ。


 ヒースルールやフローセルに余計なことをされたのは腹立たしいけど、この三流演技を横から観るのも悪くないわ。王だ貴族だと言うけれど、結局コイツらも金に支配されてるだけの俗物。私の計画で国が思うままに動く。経済が全てを支配するのよ、最高に気分がいいわね。


 三大ギルドは、ガイウス王の協力を得て、ヘルセの中枢にさらに深く触手を伸ばしていく。ヒースルールの策謀とビルギッタの計画が交錯し、ついにヘルセはルンデルへの宣戦布告へと突き進む。


 ビルギッタは会場の片隅に立ち、冷ややかな笑みを浮かべる。全ては私の掌の上よ。ヒースルールがどんな策を弄しようと、結局は私の計画が歴史を動かしたのよ。



 エルム歴738年5月2日、ガイウス王は王宮の大広間に貴族と将軍たちを集め、ルンデルに対する宣戦布告を宣言する。広間は重苦しい静寂に包まれ、宣言の言葉が石壁に反響した。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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